社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第15話 結婚してくれたら

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信一郎さんに、資料を貰ったお父さんは、夕食後もそれを見つめていた。

「お父さん、そんなに難しい話なの?」

私は、その資料を見せて貰った。


普通に援助するってだけ、書いてあると思うんだけど。

「簡単過ぎて、信頼できねえ。」

「ん?どういう事?」

「金だけ出すって、何か裏があるんじゃねえのか?」

「……見返りを求められた方がいいって事?」

「当たり前よ。仕事はギブアンドテイクだからな。」


そうか。お父さん、信一郎さんの優しさだけじゃ、納得できないんだね。

「私、信一郎さんに話してみるよ。」

「ああ。」

私はスマホを持って、縁側に出た。


『はい、信一郎です。』

「信一郎さん、さっきの業務提携の話なんだけど。」

『ああ。お父さん、納得してくれた?』

柔らかい声。

本当は仕事の話なんて、したくない。

「お父さん、お金だけ出して貰うだけじゃ、信頼できないんだって。」

『えっ?もっと何か欲しいって事?』

「違うよ。」

言葉って、難しいなって思った。

「信一郎さんの方に見返りがないのは、おかしいんじゃないかって。」

『俺達の方に?』

信一郎さんは、困っている感じがした。

『そんなの初めて聞いた。他の人は、融資だけを望んでいたのに。』


その時、自分のお父さんが、誇らしく思えた。

両方得する関係。

お父さんは、それを望んでいるのだ。

『もう一度、考え直すよ。』

「分かった。」

私は電話を切った。


「信一郎さん、考え直すって。」

「おう、よかった。」

居間にデンと構えて座っているお父さん。

何だか、今までと違う見え方をした。

「信一郎さん、驚いてたよ。」

「何をだ?」

「今までの人は、お金さえ出せばそれでよかったのにって。」

「はっ!そう言う奴らは、簡単に人を裏切るさ。」

お父さん、情に厚いんだね。

「いい取引先になるといいね。」

「そうだな。」

私は、お父さんが誇らしく思えた。


しばらくして、信一郎さんがまた工場にやってきた。

「やあ。」

信一郎さんが、家に来るなんて、ちょっと嬉しい。

「お父さん、いる?」

「うん。工場にいるよ。入ってみる?」

「うん。邪魔でなければ。」

信一郎さん、嫌がる気配もない。

やっぱり、この人を選んでよかった。


そして私は、信一郎さんを工場に連れて来た。

「お父さん、信一郎さんが来たよ。」

「おう。」

お父さんは、仕事の手を止めると、信一郎さんと私の元に来てくれた。

「すまんね。こんなむさ苦しいところに。」

「いえ。俺、こういう場所、実は好きなんですよ。」

そう言ってくれる信一郎さんが、たまらなく好きだ。

「今日は、修正案をお持ちしました。」
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