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第15話 結婚してくれたら
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「ああ、じゃあこっちに来て貰おうか。」
お父さんは、信一郎さんを奥のテーブルと椅子がある場所に、移動させた。
もちろん、私も付いて行く。
「修正案と言うのは?」
「はい。こちらです。」
信一郎さんは、バインダーに閉じてある書類を、お父さんに渡した。
「随分、厚いんだな。」
「はい。いくつか案を持って来ております。」
お父さんは、全ての書類に目を通した。
そして、最終ページを見終わった後、うんと頷いた。
「どれも、素晴らしい案だった。」
「本当ですか。よかった。」
信一郎さん、ほっとしている。
よかった。お父さんが気に入ってくれて。
「その中でも、日本一の絹糸を使ったタオル。これが、特に素晴らしいと思った。」
「はい。こちらの絹糸は、コンテストでも優勝した程の実力があります。」
「そうか。俺は一度、絹糸を使ってタオルを作ってみたかったんだ。」
「では、こちらの案で行きましょう。融資は任せて下さい。」
そして、お父さんと信一郎さんが、立ち上がって握手をした。
「よかったね、お父さん。」
「ああ。信一郎君のおかげだ。」
お父さんも、信一郎さんの事、気に入ったみたい。
「では、早速先方に話をつけます。」
「お願いするよ、信一郎君。」
信一郎さんは、頭を下げてお父さんの元から離れた。
「もう、行っちゃうの?」
私も信一郎さんに、ついて行った。
「礼奈と少しゆっくりしたいけれど、仕事は、スピードが大切だからね。」
「そっか。」
又会えたと思ったのに、もう帰っちゃうのか。
「礼奈。」
信一郎さんは、工場を出たところで、私を抱き寄せた。
「今度ゆっくり会えるように、時間取るよ。」
「うん。」
この時間が、すごく好き。
信一郎さんに、包まれているような気がして。
「今日は、本当に有難う。」
私からも信一郎さんにお礼を言う。
「お父さんにも、気に入って貰ったし。よかったよ。」
「うん。」
信一郎さんが笑顔になると、何故か切なくなった。
「信一郎さん。本当に、本当に有難う。」
「礼奈……」
「私、私ね……」
急に涙が込み上げてきた。
「信一郎さんと出会って、よかった。」
あの日、芹香のお願いを断って、お見合いの席に行かなければ、信一郎さんと出会う事はなかった。
信一郎さんと出会えたから、今の私がある。
「俺もだよ、礼奈。」
信一郎さんは、私の額にキスしてくれた。
本当に、私は幸せだと思う。
「じゃあ、また今度。」
「うん。」
信一郎さんと離れるのは寂しいけれど、お仕事もして貰わないと、工場も立ち直れない。
「お仕事、頑張って。」
「おう!」
信一郎さんは、私に手を挙げて、車に乗り込んだ。
離れるのは、あっけない。
あっという間に、信一郎さんの車は見えなくなった。
「今度は、いつ会えるんだか。」
今すぐ会いたい気持ちを抑えて、私は家に戻った。
お父さんは、信一郎さんを奥のテーブルと椅子がある場所に、移動させた。
もちろん、私も付いて行く。
「修正案と言うのは?」
「はい。こちらです。」
信一郎さんは、バインダーに閉じてある書類を、お父さんに渡した。
「随分、厚いんだな。」
「はい。いくつか案を持って来ております。」
お父さんは、全ての書類に目を通した。
そして、最終ページを見終わった後、うんと頷いた。
「どれも、素晴らしい案だった。」
「本当ですか。よかった。」
信一郎さん、ほっとしている。
よかった。お父さんが気に入ってくれて。
「その中でも、日本一の絹糸を使ったタオル。これが、特に素晴らしいと思った。」
「はい。こちらの絹糸は、コンテストでも優勝した程の実力があります。」
「そうか。俺は一度、絹糸を使ってタオルを作ってみたかったんだ。」
「では、こちらの案で行きましょう。融資は任せて下さい。」
そして、お父さんと信一郎さんが、立ち上がって握手をした。
「よかったね、お父さん。」
「ああ。信一郎君のおかげだ。」
お父さんも、信一郎さんの事、気に入ったみたい。
「では、早速先方に話をつけます。」
「お願いするよ、信一郎君。」
信一郎さんは、頭を下げてお父さんの元から離れた。
「もう、行っちゃうの?」
私も信一郎さんに、ついて行った。
「礼奈と少しゆっくりしたいけれど、仕事は、スピードが大切だからね。」
「そっか。」
又会えたと思ったのに、もう帰っちゃうのか。
「礼奈。」
信一郎さんは、工場を出たところで、私を抱き寄せた。
「今度ゆっくり会えるように、時間取るよ。」
「うん。」
この時間が、すごく好き。
信一郎さんに、包まれているような気がして。
「今日は、本当に有難う。」
私からも信一郎さんにお礼を言う。
「お父さんにも、気に入って貰ったし。よかったよ。」
「うん。」
信一郎さんが笑顔になると、何故か切なくなった。
「信一郎さん。本当に、本当に有難う。」
「礼奈……」
「私、私ね……」
急に涙が込み上げてきた。
「信一郎さんと出会って、よかった。」
あの日、芹香のお願いを断って、お見合いの席に行かなければ、信一郎さんと出会う事はなかった。
信一郎さんと出会えたから、今の私がある。
「俺もだよ、礼奈。」
信一郎さんは、私の額にキスしてくれた。
本当に、私は幸せだと思う。
「じゃあ、また今度。」
「うん。」
信一郎さんと離れるのは寂しいけれど、お仕事もして貰わないと、工場も立ち直れない。
「お仕事、頑張って。」
「おう!」
信一郎さんは、私に手を挙げて、車に乗り込んだ。
離れるのは、あっけない。
あっという間に、信一郎さんの車は見えなくなった。
「今度は、いつ会えるんだか。」
今すぐ会いたい気持ちを抑えて、私は家に戻った。
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