社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第23話 もう嫌いか

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信一郎さんに別れを言ってから、毎日のように電話が架かってくるようになった。

【俺は別れたくない。信じてくれ、礼奈。】

そんなメールもきた。

私だって、別れたくなかった。

信一郎さんは、運命の人だって思っていたから。

でも、私達の知らないところで、大きな渦が邪魔しているのが見える。

それに抗える力がないのだ。


「信一郎さん……」

悔しくて泣いた。

私にもっと力があったら。

芹香と同等の力があったら、信一郎さんとの事は絶対に負けないのに。


「喧嘩でもしたの?」

いつの間にか、お母さんが側に寄ってきていた。

「ううん。」

「でも、最近信一郎さんの話、しないわよね。」

お母さんは、ちゃんと私を見ている。

「別れたの。」

「あら、どうして?」

「この前の芹香のパーティー、信一郎さんと芹香の婚約パーティーだったの。」

「えっ⁉」

お母さんも驚いていた。

「じゃあ、正式に二人は婚約したって事?」

「そうみたい。」

足をぎゅっと組んで、作り笑いをした。

お母さんには、心配かけたくない。


その時、芹香の気持ちが、少しだけ分かった気がした。

芹香だって、お母さんを想って、信一郎さんとの結婚を受け入れた。

芹香。私、芹香には幸せになって欲しいよ。

信一郎さんとの結婚で、芹香は幸せになるの?


「何だか、信一郎さんには、がっかりだわ。」

お母さんは、ため息をついた。

「礼奈と結婚するって言っておいて、結局芹香ちゃんと二股かけていたのね。」

「そうじゃない。芹香が強引に、結婚を進めたのよ。」

「でも、信一郎さんには断れたじゃない。」

「断っても、芹香が分からないのよ。」

「ええっ⁉」

芹香、どうしてしまったの?

どうすれば、分かってくれるの?


その時、お父さんが家に戻って来た。

「おい、信一郎君が来たぞ。」

私はガバッと顔を上げると、慌てて奥の部屋に避難した。

「私はいないって言って。」

「いや、いるって言ったし。」

「追い返して!」

「いや、もうここにいるし。」

振り返ると、お父さんの後ろに、信一郎さんがいた。


「礼奈。そんなに俺の事、嫌いなのか。」

ショックを受けてる信一郎さんに、お母さんがお茶を出した。

「礼奈は、もう別れたって言ってますよ。」

「いえ。俺はそんな事言っていません。」

「でも、芹香ちゃんと婚約したんでしょ。」

「あれは先方が勝手に言っているだけです。」


信一郎さんが、奥の部屋までやってくる。

「礼奈。」

「来ないで!」

「俺の事、嫌いになったのか?」

その言葉に、胸が痛む。

そんな訳ないじゃない。

今でも、信一郎さんの事が好きだよ。

そう思うと、涙が出てくる。
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