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第23話 もう嫌いか
③
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「坊ちゃま。お待ちしておりましたぞ。」
「坊ちゃまは、もうよしてくれよ。」
「すみません。なにせ、小さい頃から見ておりましたから。」
執事さんなのかな。とてもお年を召した方。
その人が、玄関まで案内してくれた。
「信一郎様。その方は。」
「ああ……」
信一郎さんは、私を抱き寄せてくれた。
「俺の結婚相手。」
「ほう。」
その執事さんは、私を見るとニコッと笑ってくれた。
私も釣られて、笑顔を見せる。
「森田。今日はお父さんとお母さん、いる?」
「いらっしゃいますよ。お二人共、居間でくつろいでいらっしゃいます。」
「有難う。」
信一郎さんは、玄関で靴を脱ぐと、私を居間に連れて行った。
「おお、信一郎じゃないか。」
「お父さん、久しぶりです。」
信一郎さんは、居間の前の廊下に座った。
「そんなところに座っていないで、こっちに来なさい。」
信一郎さんのお母さんが、手招きをする。
「お父さん、お母さん。今日は、僕の大切な人を連れて来ました。」
「大切な人?」
お父さんとお母さんは、顔を見合わせて、首を傾げた。
「礼奈、入って。」
緊張しながら、私はお父さんとお母さんの前に座った。
「初めまして。森井礼奈と言います。」
辺りがしーんとなる。
何?この凍り付いた雰囲気。
「どういう事?信一郎。」
「礼奈と僕は、結婚を前提にお付き合いしています。」
「結婚前提って、あなたには芹香さんがいるじゃないの。」
お母さんは、確か芹香の事、気に入っていたんだよね。
「お母さん、僕は芹香さんと結婚はしません。」
「何だって⁉」
お父さんも驚いている。
「僕はここにいる礼奈と結婚します。」
信一郎さんが、はっきり言ってくれたお陰で、胸がじーんと熱くなっている。
信一郎さん。ここまでしてくれるなんて。
何で私、もっと信一郎さんの事、信じなかったんだろう。
「だが、沢井家とはもう、金銭のやり取りをしているんだ。」
「申し訳ありません。僕には、どうしても芹香さんと結婚はできません。」
「信一郎!」
お父さんが立ち上がった時だ。
奥から、一人の老人が姿を現した。
「お父さん!」
「おじい様!」
信一郎さんと、お父さんが一斉に頭を下げている。
何?この状況。
「信一郎の思う通りにしてやってくれないか?」
その声は、もう弱弱しく枯れていた。
「俺にも、昔。結婚を約束していた女性がいたんだ。でも、ばあさんと結婚しろと言われて、別れてしまった。」
信一郎さんのおじい様がこちらを向いた。
「その女性と別れた事は、今でも後悔している。信一郎にはそんな思いをさせたくない。」
「おじい様。」
見れば、もう目が白く濁っていて、相当なお年を召しているのだなと分かった。
「礼奈さんだったかな。」
「はい!」
おじい様は、信一郎さんとそっくりな笑顔を見せてくれた。
「信一郎を宜しく。」
「はい……おじい様、有難うございます。」
「坊ちゃまは、もうよしてくれよ。」
「すみません。なにせ、小さい頃から見ておりましたから。」
執事さんなのかな。とてもお年を召した方。
その人が、玄関まで案内してくれた。
「信一郎様。その方は。」
「ああ……」
信一郎さんは、私を抱き寄せてくれた。
「俺の結婚相手。」
「ほう。」
その執事さんは、私を見るとニコッと笑ってくれた。
私も釣られて、笑顔を見せる。
「森田。今日はお父さんとお母さん、いる?」
「いらっしゃいますよ。お二人共、居間でくつろいでいらっしゃいます。」
「有難う。」
信一郎さんは、玄関で靴を脱ぐと、私を居間に連れて行った。
「おお、信一郎じゃないか。」
「お父さん、久しぶりです。」
信一郎さんは、居間の前の廊下に座った。
「そんなところに座っていないで、こっちに来なさい。」
信一郎さんのお母さんが、手招きをする。
「お父さん、お母さん。今日は、僕の大切な人を連れて来ました。」
「大切な人?」
お父さんとお母さんは、顔を見合わせて、首を傾げた。
「礼奈、入って。」
緊張しながら、私はお父さんとお母さんの前に座った。
「初めまして。森井礼奈と言います。」
辺りがしーんとなる。
何?この凍り付いた雰囲気。
「どういう事?信一郎。」
「礼奈と僕は、結婚を前提にお付き合いしています。」
「結婚前提って、あなたには芹香さんがいるじゃないの。」
お母さんは、確か芹香の事、気に入っていたんだよね。
「お母さん、僕は芹香さんと結婚はしません。」
「何だって⁉」
お父さんも驚いている。
「僕はここにいる礼奈と結婚します。」
信一郎さんが、はっきり言ってくれたお陰で、胸がじーんと熱くなっている。
信一郎さん。ここまでしてくれるなんて。
何で私、もっと信一郎さんの事、信じなかったんだろう。
「だが、沢井家とはもう、金銭のやり取りをしているんだ。」
「申し訳ありません。僕には、どうしても芹香さんと結婚はできません。」
「信一郎!」
お父さんが立ち上がった時だ。
奥から、一人の老人が姿を現した。
「お父さん!」
「おじい様!」
信一郎さんと、お父さんが一斉に頭を下げている。
何?この状況。
「信一郎の思う通りにしてやってくれないか?」
その声は、もう弱弱しく枯れていた。
「俺にも、昔。結婚を約束していた女性がいたんだ。でも、ばあさんと結婚しろと言われて、別れてしまった。」
信一郎さんのおじい様がこちらを向いた。
「その女性と別れた事は、今でも後悔している。信一郎にはそんな思いをさせたくない。」
「おじい様。」
見れば、もう目が白く濁っていて、相当なお年を召しているのだなと分かった。
「礼奈さんだったかな。」
「はい!」
おじい様は、信一郎さんとそっくりな笑顔を見せてくれた。
「信一郎を宜しく。」
「はい……おじい様、有難うございます。」
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