社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第25話 生産が追い付かない

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そんな事を考えながら、お父さんの手伝いをしていると、工場の外に車が停まった。

「あっ、信一郎さんの車だ。」

大変だからって、会いに来てくれたんだ。

嬉しくて、工場の外に出ると、数人の人が信一郎さんの周りにいた。


「よう、礼奈。手伝える人、集めてきたぞ。」

「えっ⁉」

よく見ると、若い人達ばかり。

「これは……」

「俺の会社の若い奴ら。こういう仕事もやってみたいって。」

ひええええ!

一気に人が増えた。

「派遣が決まったら、使える人達が来るんだろうけど、それまではこいつらで我慢してよ。」

「ははは……」

私は、若い人達に笑顔を見せた。

「今日は来て頂いて、ありがとうございます。早速だけど、手伝ってくれますか?」

「はいっ!」

どうやら、やる気はあるみたい。

よかった。やる気がなかったら、悲惨だったよ。

「では、こちらに。」

工場の中を案内して、お父さんの元に連れて行った。


「ええ?仕事の手伝いに?」

お父さんも驚いている。

「まあ、基本流れ作業だから、大丈夫か。」

私はお父さんが単純な人で安心した。

「じゃあ、一人ずつラインについてもらえるか。」

「仕事の説明は?」

「ついた時に、一人ずつ教えればいいだろう。」

私はへーいと言いながら、一人ずつラインに立たせて、仕事を教えていった。


最後の一人は、信一郎さんだ。

「わあ。信一郎さんに仕事教えるなんて、緊張する。」

「茶化すなよ、礼奈。」

私は笑いながら、信一郎さんに手取り足取り教えた。

「いいなあ、こういうのも。」

お父さんは、私達をほほえましく見ている。

「もしかしたら、信一郎君にはこれからも手伝ってもらうかもな。」

「ええ?」

「なあ、婿殿。」


その一言に、周りの社員の人が反応する。

「えっ、もしかして社長、結婚するんですか?」

「相手は、社長の娘さん?」

お父さんは、社長って言われて上機嫌だ。

そんな風に言われるの、久しぶりだもんね。


「でも、意外と普通の人なんですね。」

一人が私をジロジロ見ながら言う。

「どういう事ですか。」

「だって、社長の相手は今まで、モデルとか女優さんが多かったから。」

「はあ⁉」

私は信一郎さんを睨んだ。

「何言ってるんだ。あれは嘘だ。なあ、礼奈。」

「知らないです。」

私はクルッと振り返ると、お父さんのところへ行った。


「また喧嘩したのか。早めに仲直りしろよ。」

お父さんは、私の肩を叩いた。

「私じゃなくて、信一郎さんに言って。」

「おいおい、そんなんじゃ嫌われるぞ。」

お父さんが信一郎さんを見ると、信一郎さんはお父さんに何回も頭を下げている。

これからが、思いやられる。


「そう言えばお父さん。」

「何だ。」

「私、信一郎さんにプロポーズされた。」

「プロポーズ⁉」

お父さんは、何回も私と信一郎さんを見ている。

「結婚するのか⁉芹香ちゃんはどうなるんだ⁉」

こういう時、男親って興奮したようにしゃべるよね。


「芹香はもう、結婚しないって断りました。そして、結婚は……」

お父さんはゴクンと息を飲んだ。

「私、する。」
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