社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第26話 正式に婚約

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そして、翌週の週末。

近くの料亭で、黒崎家と森井家の結納が行われた。


お父さんは見慣れないスーツ。

お母さんはどこから引っ張り出してきたのか、着物を着ていた。

私は、シックに黒のワンピースを選んだ。


「料亭だなんて、楽しみね。」

タクシーに乗るお母さんが、ワクワクしている。

「私はもう胃が痛いよ。」

タクシーに乗っている間も、胃が痛いのは治まらない。

料亭に着いた時には、痛さが半端なくなっていた。


「礼奈。もう腹をくくれ。」

「うん。」

もう大蛇が出ようが龍が出ようが、構わない。

信一郎さんとの輝かしい未来の為に、戦おう!


3人で部屋に案内されると、まだ黒崎家は来ていないらしい。

「待ち合わせ時間の10分前か。早く来てよかったな。」

お父さんが、安心したように言う。

「お相手の方を待たせていたら、何を言われるか分からないものね。」

「本当だ。」

お父さんとお母さんは、笑う余裕があるけれど、私は吐き気がしてきた。

後は黒崎家を待つだけ。

だけど、待ち合わせの時間になっても、信一郎さん達は来ない。

「道路混んでいるのかな。」

「準備に戸惑ったとか?」

何か、格式高そうな二人だったから、遅刻するなんて珍しいと思った。

でもさらに驚いたのは、待ち合わせの時間を10分過ぎても、来ない事だ。

「本当に今日の日でいいんだよな。」

お父さんが不安になる事を言いだした。

「ちょっと、信一郎さんに聞いてくる。」

私は立ち上がると、部屋を出て廊下に出た。


その時だ。

「早く、相手の家はもう待ってるんだから。」

信一郎さんの声が聞こえた。

「信一郎さん!」

私の声に振り向いた信一郎さんは、とても申し訳なさそうな顔をしていた。

「ごめん、礼奈。遅くなってしまって。」

「ううん。どうしたの?」

「いや、その何と言うか……」

私達が会話をしている側を、信一郎さんの両親が素通りしていく。

私の事、眼中にないって感じ。

「すまない。両親がこの結納、乗り気じゃないみたいで。」

「えっ……」

乗り気じゃないって、どういう事?

信一郎さんの両親は、私との結婚を反対しているって事?


信一郎さんと一緒に部屋に入ると、それぞれの両親達が挨拶をしていた。

「申し訳ありません、遅れてしまいまして。」

信一郎さんのお父さんの、心のこもっていない謝罪。

「信一郎の母でございます。」

お母さんの笑顔のない表情。


どうして?

受け入れてくれるって、あの時言ったじゃない。


私は、お父さんの隣の席に座ると、こんにちはと挨拶した。

返事はない。

まるでここに私がいないみたい。


「ところで、結婚式はいつにしますか?」

お父さんが、場を盛り上げようと陽気に話しかけた。

「それは、若い二人に任せましょう。」

信一郎さんのお父さん、自分には関係ないっていう感じ。

「それより、結納金はどうしますか?」

「結納金?ああ……」

お父さんとお母さんは、顔を見合わせた。

「結納金はいいですよ。芹香さんとの事も聞いてますし。」

お母さんが言うと、信一郎さんのお父さんが無表情で舌打ちをする。

「黒崎家の嫁になるのに、見すぼらしい恰好でいられたら、困るんですよ。」

「見すぼらしい⁉」
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