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第9章 スタート
①
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私の実家に着いたのは、夜の9時を過ぎていた。
「おじいちゃん!」
玄関を開けて、リビングに行くと、誰もいない。
もしかして、病院に運ばれた?
私は、持って来たスマートフォンで、お母さんの電話番号を探した。
その時だった。
奥の襖が開いて、泣いているお母さんが出て来た。
「お母さん。」
「夏海、ごめんね。おじいちゃん、間に合わなかった。」
私は、床に膝を着いた。
「夏海、おじいちゃんは?」
遅れて家に入って来た雪人に、お母さんは首を横に振った。
「そうでしたか……」
雪人の一言に、床に私の涙が零れる。
「お……じい……ちゃん……」
最後に、おじいちゃんの声、聞きたかった。
結婚して、私今、幸せだよって言ってあげたかった。
「夏海、おじいちゃんの顔、見に行こう。」
雪人に連れられて、奥の部屋に入った。
お医者様も来ていて、私に頭を下げてくれた。
「おじいちゃん、夏海だよ。」
おじいちゃんは、眠っているように綺麗な顔をした。
「夏海、おじいちゃんね。苦しまずに、眠るように逝ったのよ。」
お母さんが、私の背中を摩ってくれた。
「じいさん、この家で最後を迎えたいって言ってたから、これでよかったのかもな。」
お父さんが、しみじみと話した。
「うん……よかったね、おじいちゃん。」
せめて、苦しまずに天国行ってしまったおじいちゃんを、笑顔で送ってあげたかった。
でも、涙が止まらない。
両親とも共働きで、小学校から帰ってくると、私の相手をしてくれたのは、おじいちゃんだった。
テストでいい点を取ると、『夏海は、賢いね。』って、誉めてくれたおじいちゃん。
おっちょこちょいしても、笑って許してくれたおじいちゃん。
雪人との偽装結婚も、おじいちゃんを早く、安心させてあげたからだった。
「うぅ……おじいちゃんっ!」
私は、おじいちゃんの亡骸にしがみついて、大泣きしてしまった。
家族は、そんな私を見て、おじいちゃんと二人きりにしてくれた。
雪人が心配して、側に来てくれた時には、夜中を回っていた。
「夏海。明日、葬式屋さんが来てくれるから、休んだらってお母さんが……」
「うん……」
私は、立ち上がった。
「夏海、雪人さんのお布団、いる?」
「いらない。一緒に寝るから。」
「でも、あなたのベッド、シングルベッドじゃなかった?」
そんなお母さんの肩を叩いたのは、雪人の方だった。
「お母さん、多少狭くても寝れますから。心配しないで下さい。」
「あらあら。新婚さんは、羨ましい事。」
お母さんは、こんな時にニヤニヤしている。
「こんな時になんだけど、夏海と結婚してくれて、雪人さん、ありがとうね。」
私は、階段を昇ろうとして、足を止めた。
「おじいちゃん、夏海の結婚だけは心配していたから。早く、いい人を捕まえて欲しいって。その願いが叶っただけでも、おじいちゃん、幸せだったわね。」
その時、私の胸はズキッと痛んだ。
「行こう、雪人。」
「うん……」
私と雪人は、階段を昇り始めた。
「おやすみなさい。」
お母さんが、そう言って奥へと向かって行った。
私の部屋は、2階の一番奥にあった。
「雪人、来るのは初めてだよね。」
「ああ。」
電気をつけると、私がここに暮らしていた時のままだ。
「なんだか、ごめんね。慌ただしい事になって。」
「そんなの、夏海のせいじゃないって。」
私は、自分の椅子に座った。
「どうしよう。おじいちゃん、私が本当に結婚したと思って、天国に行っちゃった。」
「夏海……」
「最近思うの。本当は、偽装結婚じゃなくて、本当に結婚するまで、待っててもらった方が、よかったんじゃないかって。」
「おじいちゃん!」
玄関を開けて、リビングに行くと、誰もいない。
もしかして、病院に運ばれた?
私は、持って来たスマートフォンで、お母さんの電話番号を探した。
その時だった。
奥の襖が開いて、泣いているお母さんが出て来た。
「お母さん。」
「夏海、ごめんね。おじいちゃん、間に合わなかった。」
私は、床に膝を着いた。
「夏海、おじいちゃんは?」
遅れて家に入って来た雪人に、お母さんは首を横に振った。
「そうでしたか……」
雪人の一言に、床に私の涙が零れる。
「お……じい……ちゃん……」
最後に、おじいちゃんの声、聞きたかった。
結婚して、私今、幸せだよって言ってあげたかった。
「夏海、おじいちゃんの顔、見に行こう。」
雪人に連れられて、奥の部屋に入った。
お医者様も来ていて、私に頭を下げてくれた。
「おじいちゃん、夏海だよ。」
おじいちゃんは、眠っているように綺麗な顔をした。
「夏海、おじいちゃんね。苦しまずに、眠るように逝ったのよ。」
お母さんが、私の背中を摩ってくれた。
「じいさん、この家で最後を迎えたいって言ってたから、これでよかったのかもな。」
お父さんが、しみじみと話した。
「うん……よかったね、おじいちゃん。」
せめて、苦しまずに天国行ってしまったおじいちゃんを、笑顔で送ってあげたかった。
でも、涙が止まらない。
両親とも共働きで、小学校から帰ってくると、私の相手をしてくれたのは、おじいちゃんだった。
テストでいい点を取ると、『夏海は、賢いね。』って、誉めてくれたおじいちゃん。
おっちょこちょいしても、笑って許してくれたおじいちゃん。
雪人との偽装結婚も、おじいちゃんを早く、安心させてあげたからだった。
「うぅ……おじいちゃんっ!」
私は、おじいちゃんの亡骸にしがみついて、大泣きしてしまった。
家族は、そんな私を見て、おじいちゃんと二人きりにしてくれた。
雪人が心配して、側に来てくれた時には、夜中を回っていた。
「夏海。明日、葬式屋さんが来てくれるから、休んだらってお母さんが……」
「うん……」
私は、立ち上がった。
「夏海、雪人さんのお布団、いる?」
「いらない。一緒に寝るから。」
「でも、あなたのベッド、シングルベッドじゃなかった?」
そんなお母さんの肩を叩いたのは、雪人の方だった。
「お母さん、多少狭くても寝れますから。心配しないで下さい。」
「あらあら。新婚さんは、羨ましい事。」
お母さんは、こんな時にニヤニヤしている。
「こんな時になんだけど、夏海と結婚してくれて、雪人さん、ありがとうね。」
私は、階段を昇ろうとして、足を止めた。
「おじいちゃん、夏海の結婚だけは心配していたから。早く、いい人を捕まえて欲しいって。その願いが叶っただけでも、おじいちゃん、幸せだったわね。」
その時、私の胸はズキッと痛んだ。
「行こう、雪人。」
「うん……」
私と雪人は、階段を昇り始めた。
「おやすみなさい。」
お母さんが、そう言って奥へと向かって行った。
私の部屋は、2階の一番奥にあった。
「雪人、来るのは初めてだよね。」
「ああ。」
電気をつけると、私がここに暮らしていた時のままだ。
「なんだか、ごめんね。慌ただしい事になって。」
「そんなの、夏海のせいじゃないって。」
私は、自分の椅子に座った。
「どうしよう。おじいちゃん、私が本当に結婚したと思って、天国に行っちゃった。」
「夏海……」
「最近思うの。本当は、偽装結婚じゃなくて、本当に結婚するまで、待っててもらった方が、よかったんじゃないかって。」
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