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第1章 出会いは、ほんの一瞬の勇気から
⑧
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「……谷川さんの小説って、ヒロインが平凡なんです」
「平凡?」
玲央さんはベッドの横に置かれた椅子に座り、肘をつきながら私の顔を見た。
「そう。ほんとにどこにでもいるような、目立たない女の子が主人公で」
私はふわっと笑いながら続けた。
「そんな子が、弁護士とか、優秀な外科医とか、社長とか……いわゆる“ハイスぺ男子”に出会って、めちゃくちゃ溺愛されるんです」
「へえ……」
玲央さんは、ふむ、と少しだけ目を細めてこちらを見つめた。
まるでおとぎ話を聞いているみたいに。
でも、からかうような空気は一切なかった。
「なんか……すごく非現実的かもしれないけど。でもね、ヒロインが平凡だからこそ、読んでるこっちも自分に置きかえられるというか」
私は、心の奥をちょっとだけさらけ出すように、そっと言った。
「男性から――『君に溺れている』って、真顔で言われるの、感動ですよね」
言ったあと、自分でもちょっと照れてしまって、目線を逸らす。
だけど、玲央さんの視線は逸れなかった。
むしろ、まっすぐ私を見つめたまま、何かを考えているようだった。
その沈黙に、私は少しだけ鼓動が早くなるのを感じた。
「溺愛か……」
玲央さんがふとつぶやいた。
「俺は女性に、溺れたことないな」
その言葉に、胸が少しだけきゅっとなった。
こんなに素敵な人なのに。
あの優しさや穏やかさは、誰かに向けたものじゃないんだろうか。
「結婚は……されてるんですか?」
迷いながらも、気になって口にしていた。
「してないよ」
あっさりとした答えが返ってくる。
「彼女とか……」
「今はいない」
言葉は少ないのに、なぜかその言い方が、少し寂しそうに聞こえた。
案外――この人、孤独なのかもしれない。
肩書きや外見の華やかさの奥に、静かな空虚さがあるような気がした。
「出会いがないんですか?」
少し踏み込んだ問いに、玲央さんは苦笑した。
「いや、出会いならあるよ。親が勝手に紹介してくるから」
ああ、そうか。
このくらいの年代、それに彼の立場なら、そういうことも自然にあるのかもしれない。
「でも、紹介されるほど冷めてる自分にも、驚くけどね」
そう言って、玲央さんはわずかに視線を落とした。
それが、ほんの少しだけ――寂しげに見えた。
「ひよりさんは?」
不意にそう聞かれて、私は少し戸惑った。
顔を上げると、玲央さんはまっすぐに私を見ていた。
「彼氏、いるの?」
「……ううん」
私は小さく首を横に振った。
「夢とバイトばっかりで。恋愛の方は、おろそかです」
軽く笑ってごまかしたけれど、言ってみて少し寂しくなった。
大学に入っても、誰かに夢中になるような恋なんて、したことがない。
「平凡?」
玲央さんはベッドの横に置かれた椅子に座り、肘をつきながら私の顔を見た。
「そう。ほんとにどこにでもいるような、目立たない女の子が主人公で」
私はふわっと笑いながら続けた。
「そんな子が、弁護士とか、優秀な外科医とか、社長とか……いわゆる“ハイスぺ男子”に出会って、めちゃくちゃ溺愛されるんです」
「へえ……」
玲央さんは、ふむ、と少しだけ目を細めてこちらを見つめた。
まるでおとぎ話を聞いているみたいに。
でも、からかうような空気は一切なかった。
「なんか……すごく非現実的かもしれないけど。でもね、ヒロインが平凡だからこそ、読んでるこっちも自分に置きかえられるというか」
私は、心の奥をちょっとだけさらけ出すように、そっと言った。
「男性から――『君に溺れている』って、真顔で言われるの、感動ですよね」
言ったあと、自分でもちょっと照れてしまって、目線を逸らす。
だけど、玲央さんの視線は逸れなかった。
むしろ、まっすぐ私を見つめたまま、何かを考えているようだった。
その沈黙に、私は少しだけ鼓動が早くなるのを感じた。
「溺愛か……」
玲央さんがふとつぶやいた。
「俺は女性に、溺れたことないな」
その言葉に、胸が少しだけきゅっとなった。
こんなに素敵な人なのに。
あの優しさや穏やかさは、誰かに向けたものじゃないんだろうか。
「結婚は……されてるんですか?」
迷いながらも、気になって口にしていた。
「してないよ」
あっさりとした答えが返ってくる。
「彼女とか……」
「今はいない」
言葉は少ないのに、なぜかその言い方が、少し寂しそうに聞こえた。
案外――この人、孤独なのかもしれない。
肩書きや外見の華やかさの奥に、静かな空虚さがあるような気がした。
「出会いがないんですか?」
少し踏み込んだ問いに、玲央さんは苦笑した。
「いや、出会いならあるよ。親が勝手に紹介してくるから」
ああ、そうか。
このくらいの年代、それに彼の立場なら、そういうことも自然にあるのかもしれない。
「でも、紹介されるほど冷めてる自分にも、驚くけどね」
そう言って、玲央さんはわずかに視線を落とした。
それが、ほんの少しだけ――寂しげに見えた。
「ひよりさんは?」
不意にそう聞かれて、私は少し戸惑った。
顔を上げると、玲央さんはまっすぐに私を見ていた。
「彼氏、いるの?」
「……ううん」
私は小さく首を横に振った。
「夢とバイトばっかりで。恋愛の方は、おろそかです」
軽く笑ってごまかしたけれど、言ってみて少し寂しくなった。
大学に入っても、誰かに夢中になるような恋なんて、したことがない。
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