15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第2章 恋に落ちるのは、ほんの数日だった

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まるで夢見がちなヒロインみたいに、

“あの人と恋に落ちるかも”なんて、都合のいい妄想をしていた自分が滑稽で仕方なかった。

「……私って、ほんとバカ。」

ただの女子大生。

アルバイトと勉強で精一杯の、何の取り柄もない女の子。

そんな私が、御曹司に恋してた。

毎日花を持ってきてくれて、優しく微笑んでくれて、手を握ってくれて。

それを全部、特別な感情だと信じ込んでいた。

「違うのに。」

あの人は、私を“助けてくれた女の子”として大切にしてくれているだけ。

それだけなのに――。

目頭が熱くなった。

涙は、もうこぼれないと思っていたのに。

心の中で、そっと思った。

(これ以上、好きになっちゃいけない)

(ちゃんと、現実を見なくちゃ――)

でも、どうしてだろう。

明日また、病室のドアが開いて「ひよりさん」と呼ばれたら。

私は、どんな顔をすればいいの?

その答えが見つからないまま、私は朝まで、ただ布団の中で目を閉じていた。

翌日。昼下がりの病室に、いつもと少し違う空気が流れ込んできた。

「こんにちは。」

ドアの向こうから現れたのは、玲央さん――だけではなかった。

その隣には、スーツ姿の男性がいる。

玲央さんより少し若く、どこか飄々とした雰囲気だ。

「弁護士。一ノ瀬 海です。兄の付き添いで伺いました。」

「……弁護士? 付き添い?」

私はきょとんとしたまま立ち上がろうとして、慌てて玲央さんが止めた。

「無理しないで。彼は俺の弟なんだ。」

「弟さん……?」

驚いていると、海さんが手を差し出してきた。

「どうぞ、握手でも。」

「……あ、はい。」

その手を戸惑いながら握ると、彼はにっこりと笑った。

「さて、急な話で申し訳ないんですが――入院費はこちらで持たせてもらいます。兄がお世話になってますので。」

「え? でも……」

私は思わず、玲央さんを見た。

「玲央さん、そんな……私は保険で払いますから。」

「まあまあ、お嬢さん。」

海さんが軽く手を上げて、ウィンクをひとつ。

「貰えるものは貰っておく。これはね、世の中を渡る処世術ですよ。」

茶化すようなその笑顔に、思わずくすりと笑ってしまった。

「でも、それじゃ私が……」

「玲央がどうしてもって言うからさ。兄貴ってば、妙に律儀でね。」

「……海、余計なことは言うな。」

玲央さんは小さくため息をついて、弟を一瞥した。

「ま、あとはご本人同士で。俺はここで失礼しますね。」

そう言って海さんは軽く頭を下げ、スタスタと病室を後にした。

残された私と玲央さんの間に、少しだけ静けさが落ちる。

「……ごめん。勝手に連れてきて。」

「いえ。なんだか楽しい人ですね、弟さん。」

「うん、まあ。……でも俺とは全然違うだろ?」
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