15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第2章 恋に落ちるのは、ほんの数日だった

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翌日のお昼過ぎ。

退院の支度を終えた頃、玲央さんが迎えに来てくれた。

私服の彼は、昨日と同じように少しラフで、それでいて整った佇まいだった。

「準備、できた?」

「はい……ありがとうございます。」

荷物を持ってくれた彼の背中を見つめていると、看護師さんが声をかけてくる。

「こちら、お会計です。」

手渡された請求書を反射的にのぞこうとした瞬間、玲央さんがひょいとそれを取ってしまった。

「あの……」

「支払うって言ったでしょ?」

そう言ってニコッと笑った彼の横顔。

笑ってはいるけれど、本当はどう思っているのだろう。

“義務感”なんじゃないか――そんな不安が胸に刺さる。

窓口に着くと、彼は何のためらいもなくカードを差し出した。

そしてそのカードを見つめている間に、私はぽつりと口にしてしまった。

「あの……これって、今日じゃないとダメですか?」

彼の手が一瞬、止まった。

彼の手が、一瞬止まった。

「保険の関係ですよね。2週間以内なら大丈夫ですよ。」

事務員さんが穏やかに答える。

「ああ、じゃあ……」

私がそう言いかけた時だった。

玲央さんの手が、私の手首に触れ、そっと押し返される。

「カードで払ってください。」

その声は静かだけれど、有無を言わせない力があった。

「はい、承りました。」

事務員さんが受け取り、カードを端末に通していく。

小さな電子音が、妙に響いた。

私は思わず玲央さんを見上げた。

「玲央さん……」

「心配しないで。俺、お金持ってるし。」

冗談っぽく笑う彼の表情には、軽さと、本気が混ざっていた。

“お金持ってるし”――

その言葉の意味を、私はすぐに理解できなかった。

けれど、その一言に、妙な説得力がある。

それは優しさ?

それとも、もう関係が変わってしまったという暗黙の距離?

笑ってくれたのに、なんだか胸の奥に、ひとしずく、沈殿していくものがあった。

お金を支払い終え、ロビーを出ると、病院の前に見覚えのある車が停まっていた。

あの日──

私が彼を助けた、あの夜。

雨に濡れながら倒れていた彼を見つけた時の、あの高級車。

「今日、仕事だったんですか?」

私が尋ねると、玲央さんは一瞬だけ空を仰いでから、小さく頷いた。

「……ああ。」

そう言って、彼は私のためにドアを開けてくれる。

「乗って。」

その一言に、心がまた少し、温かくなった。

私は頷いて、車内へと足を踏み入れる。

レザーの香りと、静かな空気。緊張で喉が渇く。

運転席には、きちんとスーツを着た運転手さんがいた。

「……運転手さん、いたんですね。」

少し驚いた声を出すと、玲央さんは照れくさそうに笑った。

「うん。今日は一応、会社にも顔出すから。」

玲央さんも、私の隣に座る。

すぐに車が静かに動き出した。

「家、どこ?」
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