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第2章 恋に落ちるのは、ほんの数日だった
⑧
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「えっと……工藤坂の方です。」
「OK。工藤坂ね。」
それだけのやり取りなのに、
玲央さんが“私の家”を知ろうとしてくれていることが、嬉しかった。
静かな車内。
隣にいる彼の気配を感じながら、私は窓の外に目を向ける。
帰り道なのに、
もうすでに、彼の温もりが恋しい気がしていた。
「工藤坂って、いいところに住んでるね。」
玲央さんが、ちらりと私に視線を送る。
私はフッと笑った。
「表は高級住宅街ですけど、裏に入るとそうでもないんですよ。」
「そうなんだ。」
玲央さんは意外そうな顔をしながら、窓の外に目を向けた。
そう。
表通りには高級マンションがずらりと並び、緑の整備もされていてとても綺麗。
けれど、私の住んでいる“裏側”は、昔ながらの木造アパートが立ち並ぶ、どこか懐かしい景色の残る通りだった。
「でも、そういうところが、私……けっこう好きなんです。」
「へぇ。」
玲央さんは興味深そうに私を見た。
「静かで、猫もたくさんいるし。風通しもいいし、あとは……」
ふと、口をつぐんでしまう。
言おうとしていた「ひとりになれる場所だから」という言葉を、飲み込んだ。
「落ち着くんだね。」
「はい。」
玲央さんは、何か言いかけたように唇を動かしたけれど、すぐに閉じた。
そして、しばらく沈黙が流れた後──
「ひよりさんのこと、もっと知りたいな。」
静かな車内で、その言葉は驚くほど大きく響いた。
ドキンと心臓が跳ねる。
「……急に、どうしたんですか?」
「いや、なんか……君の言葉には、ちゃんと理由がある気がして。」
「理由?」
「そう。さっき、裏の町が好きって言ったとき、すごく優しい顔してたから。」
言葉に詰まる。
そんな風に自分の表情を見ていてくれたことが、なんだか恥ずかしくて。
「俺、まだ全然知らないんだなって思ったんだ。」
玲央さんは、まっすぐな目で私を見つめていた。
私はその視線から逃げるように、窓の外を見た。
でも、頬が少し熱い。
──もっと知ってほしい。
そんな気持ちを、言葉にはできずにいた。
「あ、あの……」
勇気を振り絞って、私は声を出した。
「ん?」
玲央さんが、やさしい目でこちらを向く。
「……彼女さんは、今後作る予定はあるんですか?」
一瞬の沈黙。
玲央さんはきょとんとした顔になった。
「まあ、そういう人がいたら、かな。」
「では、あまり前向きではないという事でしょうか?」
自分でも、尋問みたいな言い方だなと気づく。
でも、止められなかった。
「前向き……うーん。出会いって、簡単に転がっていないからね。」
玲央さんはそう言って、フロントガラスの向こうに視線を向けた。
「OK。工藤坂ね。」
それだけのやり取りなのに、
玲央さんが“私の家”を知ろうとしてくれていることが、嬉しかった。
静かな車内。
隣にいる彼の気配を感じながら、私は窓の外に目を向ける。
帰り道なのに、
もうすでに、彼の温もりが恋しい気がしていた。
「工藤坂って、いいところに住んでるね。」
玲央さんが、ちらりと私に視線を送る。
私はフッと笑った。
「表は高級住宅街ですけど、裏に入るとそうでもないんですよ。」
「そうなんだ。」
玲央さんは意外そうな顔をしながら、窓の外に目を向けた。
そう。
表通りには高級マンションがずらりと並び、緑の整備もされていてとても綺麗。
けれど、私の住んでいる“裏側”は、昔ながらの木造アパートが立ち並ぶ、どこか懐かしい景色の残る通りだった。
「でも、そういうところが、私……けっこう好きなんです。」
「へぇ。」
玲央さんは興味深そうに私を見た。
「静かで、猫もたくさんいるし。風通しもいいし、あとは……」
ふと、口をつぐんでしまう。
言おうとしていた「ひとりになれる場所だから」という言葉を、飲み込んだ。
「落ち着くんだね。」
「はい。」
玲央さんは、何か言いかけたように唇を動かしたけれど、すぐに閉じた。
そして、しばらく沈黙が流れた後──
「ひよりさんのこと、もっと知りたいな。」
静かな車内で、その言葉は驚くほど大きく響いた。
ドキンと心臓が跳ねる。
「……急に、どうしたんですか?」
「いや、なんか……君の言葉には、ちゃんと理由がある気がして。」
「理由?」
「そう。さっき、裏の町が好きって言ったとき、すごく優しい顔してたから。」
言葉に詰まる。
そんな風に自分の表情を見ていてくれたことが、なんだか恥ずかしくて。
「俺、まだ全然知らないんだなって思ったんだ。」
玲央さんは、まっすぐな目で私を見つめていた。
私はその視線から逃げるように、窓の外を見た。
でも、頬が少し熱い。
──もっと知ってほしい。
そんな気持ちを、言葉にはできずにいた。
「あ、あの……」
勇気を振り絞って、私は声を出した。
「ん?」
玲央さんが、やさしい目でこちらを向く。
「……彼女さんは、今後作る予定はあるんですか?」
一瞬の沈黙。
玲央さんはきょとんとした顔になった。
「まあ、そういう人がいたら、かな。」
「では、あまり前向きではないという事でしょうか?」
自分でも、尋問みたいな言い方だなと気づく。
でも、止められなかった。
「前向き……うーん。出会いって、簡単に転がっていないからね。」
玲央さんはそう言って、フロントガラスの向こうに視線を向けた。
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