15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第3章 大学生だと知った日、彼は手を離した

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「うわ……あれ、広報に言われて書いただけだから。真に受けないでよ?」

「でも、面白かったです。お仕事の合間に紅茶を飲んでたりして、ちょっと可愛いなって。」

「やめてくれ、恥ずかしいから……」

顔を手で覆う仕草が、普段のクールな玲央さんとは違っていて、なんだか可愛く見えてしまう。

まさか、こんなやりとりができる日が来るなんて。

窓の外はゆっくりと晴れてきていて、やさしい陽射しがテーブルの上のサンドイッチを照らしていた。

「ひよりさんは、大学で何を勉強しているの?」

玲央さんが、コーヒーカップを手にしながら問いかけてくる。

「国文学です。将来は、図書館の司書になりたくて。」

「そうか。」

その答えに、玲央さんはゆっくりと頷いた。

目元がやわらかくなって、ほんの少しだけ微笑んでいる。

「ひよりさんらしいね。穏やかで、本が好きそう。」

「……はい。」

私は照れくさくて、少しだけ視線を落とした。でも、嫌じゃなかった。玲央さんのそういう言葉の選び方が、優しくて。

だけどその直後だった。玲央さんの顔に、ふっと翳りが差した。

「ひよりさんにとっては……俺は、おじさんの部類に入るのかな。」

その言葉に、私は驚いて首を横に振った。

「そんなことないです!」

勢い余って、言葉が少し大きくなってしまう。

「玲央さんは、確かに年上ですけど……でも、まだ“お兄さん”です。」

言ってから、ちょっと恥ずかしくなって、頬が熱を帯びた。玲央さんの目が優しく細められて、少し笑う。

「お兄さんか。それ、嬉しいな。」

「本当のことですよ。」

私は言いながら、テーブルの上のカップに目を落とした。

なんだか、心がぽっとあたたかくなっていくのを感じていた。

「……彼氏はいるの?」

突然の問いに、ストローを咥えかけていた私は、ぴくりと肩を揺らした。

「いないです。」

少し間を置いてから、静かにそう答える。

「大学で出会いとかはないの?」

玲央さんは、何気ないようにコーヒーカップを揺らしながら聞いてくるけれど、その視線はまっすぐだった。

「いいえ、全然。」

私は苦笑いを浮かべて、手元のオレンジジュースに口をつけた。

冷たい液体が喉を通る。少しだけ気持ちを落ち着かせてから、ぽつりと呟く。

「でも……好きな人はいます。」

言った瞬間、玲央さんの表情が、ほんの一瞬だけ動いた。眉がわずかに寄って、視線が私を探るように揺れる。

「……どんな人?」

その問いは、どこか慎重で、静かだった。

私は、ストローを指でくるくる回しながら、小さく笑った。

「玲央さんみたいな人。」

そう言って、ゆっくりと顔を上げると、玲央さんの目が、少しだけ揺れていた。

でも――気づいていない。

私の言葉の意味にも、気持ちにも。
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