15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第3章 大学生だと知った日、彼は手を離した

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「本当にそれでいいの?」

さくらが、真剣な顔で私を見つめた。

「その様子だと、本気じゃん。忘れられるわけないよ。」

私は俯きながら、箸をそっと置いた。

そう。

あの人のこと、本気で好きだった。

――いや、今でも好き。

あのとき、車の中で抱き寄せられた腕さえ、今も覚えてる。

優しくて、でもどこか突き放すような温度もあった。

「……何とか、ならないのかな。」

ぼんやりと呟いた言葉に、隣にいた誠一がポンと手を打った。

「でもさ、会社は知ってるんでしょ?」

「えっ?」

「ブログに副社長って書いてたんでしょ?じゃあその会社に行けばいいじゃん。」

「……え、待って。それってまさか――」

「会社の前で待ち伏せすれば?」

「ええっ、それ完全にストーカーじゃん!」

さくらが箸を落としそうになって引いた。

「いやいや、何も変なことしなきゃいいんだよ。偶然を装えばいいの。ちょっと近くに来たとか、面接とかさ。」

「面接はダメでしょ……」

私は呆れつつも、心のどこかで「それ、ありかも」と思ってしまっていた。

「でも……実際どうするの?玲央さんにバッタリ会って、何て言うつもり?」

さくらが静かに聞いてくる。

私は一瞬、考えた。

「――もう一度だけ、会いたかったって言う。」

「それだけ?」

私は小さく頷いた。

「それだけでいいの。あとは……玲央さんが、私に会いたいって思ってくれるかどうか。」

「……ひよりってさ、そういうとこ、意外とカッコいいよな。」

誠一が笑いながら言う。

私は苦笑して、飲みかけのジュースに目を落とした。

会えるかなんて分からない。

でも、このまま忘れるなんて、できそうにない。

その日の夜。

私はひとり、自室のベッドに腰を下ろしてスマホを開いた。

「玲央さん 会社」――検索バーにそう打ち込むと、すぐにいくつかの情報が出てきた。

「……あった。中央2丁目……」

地図アプリに表示された場所は、都心のど真ん中。

高層ビルが並ぶオフィス街。

そして、その中でもひときわ大きく、立派なビルの名前が、彼の会社だった。

“副社長”――

そうだよね、やっぱり簡単には会える人じゃない。

それでも、もう一度だけでもいい。

「会いたい」そう言いたかった。

そのとき、スマホが震えた。

表示された名前は――さくら。

『探せた?』

「うん。明日、行ってみようと思って。」

電話越しに、さくらはすぐに言った。

『私も付き合うよ。ひより一人じゃ危なっかしいし。』

私は、ふっと小さく笑った。

「ありがとう、さくら。助かる。」

『どうせならオシャレして行こうよ。偶然でも、可愛くしてる方がいいでしょ?』

「うん。じゃあ、明日は10時に駅で待ち合わせね。」

『オッケー。バッチリ準備していく!』
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