29 / 99
第3章 大学生だと知った日、彼は手を離した
⑨
しおりを挟む
「本当にそれでいいの?」
さくらが、真剣な顔で私を見つめた。
「その様子だと、本気じゃん。忘れられるわけないよ。」
私は俯きながら、箸をそっと置いた。
そう。
あの人のこと、本気で好きだった。
――いや、今でも好き。
あのとき、車の中で抱き寄せられた腕さえ、今も覚えてる。
優しくて、でもどこか突き放すような温度もあった。
「……何とか、ならないのかな。」
ぼんやりと呟いた言葉に、隣にいた誠一がポンと手を打った。
「でもさ、会社は知ってるんでしょ?」
「えっ?」
「ブログに副社長って書いてたんでしょ?じゃあその会社に行けばいいじゃん。」
「……え、待って。それってまさか――」
「会社の前で待ち伏せすれば?」
「ええっ、それ完全にストーカーじゃん!」
さくらが箸を落としそうになって引いた。
「いやいや、何も変なことしなきゃいいんだよ。偶然を装えばいいの。ちょっと近くに来たとか、面接とかさ。」
「面接はダメでしょ……」
私は呆れつつも、心のどこかで「それ、ありかも」と思ってしまっていた。
「でも……実際どうするの?玲央さんにバッタリ会って、何て言うつもり?」
さくらが静かに聞いてくる。
私は一瞬、考えた。
「――もう一度だけ、会いたかったって言う。」
「それだけ?」
私は小さく頷いた。
「それだけでいいの。あとは……玲央さんが、私に会いたいって思ってくれるかどうか。」
「……ひよりってさ、そういうとこ、意外とカッコいいよな。」
誠一が笑いながら言う。
私は苦笑して、飲みかけのジュースに目を落とした。
会えるかなんて分からない。
でも、このまま忘れるなんて、できそうにない。
その日の夜。
私はひとり、自室のベッドに腰を下ろしてスマホを開いた。
「玲央さん 会社」――検索バーにそう打ち込むと、すぐにいくつかの情報が出てきた。
「……あった。中央2丁目……」
地図アプリに表示された場所は、都心のど真ん中。
高層ビルが並ぶオフィス街。
そして、その中でもひときわ大きく、立派なビルの名前が、彼の会社だった。
“副社長”――
そうだよね、やっぱり簡単には会える人じゃない。
それでも、もう一度だけでもいい。
「会いたい」そう言いたかった。
そのとき、スマホが震えた。
表示された名前は――さくら。
『探せた?』
「うん。明日、行ってみようと思って。」
電話越しに、さくらはすぐに言った。
『私も付き合うよ。ひより一人じゃ危なっかしいし。』
私は、ふっと小さく笑った。
「ありがとう、さくら。助かる。」
『どうせならオシャレして行こうよ。偶然でも、可愛くしてる方がいいでしょ?』
「うん。じゃあ、明日は10時に駅で待ち合わせね。」
『オッケー。バッチリ準備していく!』
さくらが、真剣な顔で私を見つめた。
「その様子だと、本気じゃん。忘れられるわけないよ。」
私は俯きながら、箸をそっと置いた。
そう。
あの人のこと、本気で好きだった。
――いや、今でも好き。
あのとき、車の中で抱き寄せられた腕さえ、今も覚えてる。
優しくて、でもどこか突き放すような温度もあった。
「……何とか、ならないのかな。」
ぼんやりと呟いた言葉に、隣にいた誠一がポンと手を打った。
「でもさ、会社は知ってるんでしょ?」
「えっ?」
「ブログに副社長って書いてたんでしょ?じゃあその会社に行けばいいじゃん。」
「……え、待って。それってまさか――」
「会社の前で待ち伏せすれば?」
「ええっ、それ完全にストーカーじゃん!」
さくらが箸を落としそうになって引いた。
「いやいや、何も変なことしなきゃいいんだよ。偶然を装えばいいの。ちょっと近くに来たとか、面接とかさ。」
「面接はダメでしょ……」
私は呆れつつも、心のどこかで「それ、ありかも」と思ってしまっていた。
「でも……実際どうするの?玲央さんにバッタリ会って、何て言うつもり?」
さくらが静かに聞いてくる。
私は一瞬、考えた。
「――もう一度だけ、会いたかったって言う。」
「それだけ?」
私は小さく頷いた。
「それだけでいいの。あとは……玲央さんが、私に会いたいって思ってくれるかどうか。」
「……ひよりってさ、そういうとこ、意外とカッコいいよな。」
誠一が笑いながら言う。
私は苦笑して、飲みかけのジュースに目を落とした。
会えるかなんて分からない。
でも、このまま忘れるなんて、できそうにない。
その日の夜。
私はひとり、自室のベッドに腰を下ろしてスマホを開いた。
「玲央さん 会社」――検索バーにそう打ち込むと、すぐにいくつかの情報が出てきた。
「……あった。中央2丁目……」
地図アプリに表示された場所は、都心のど真ん中。
高層ビルが並ぶオフィス街。
そして、その中でもひときわ大きく、立派なビルの名前が、彼の会社だった。
“副社長”――
そうだよね、やっぱり簡単には会える人じゃない。
それでも、もう一度だけでもいい。
「会いたい」そう言いたかった。
そのとき、スマホが震えた。
表示された名前は――さくら。
『探せた?』
「うん。明日、行ってみようと思って。」
電話越しに、さくらはすぐに言った。
『私も付き合うよ。ひより一人じゃ危なっかしいし。』
私は、ふっと小さく笑った。
「ありがとう、さくら。助かる。」
『どうせならオシャレして行こうよ。偶然でも、可愛くしてる方がいいでしょ?』
「うん。じゃあ、明日は10時に駅で待ち合わせね。」
『オッケー。バッチリ準備していく!』
11
あなたにおすすめの小説
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~
有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。
ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。
そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。
彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。
「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。
【完結】エリート産業医はウブな彼女を溺愛する。
花澤凛
恋愛
第17回 恋愛小説大賞 奨励賞受賞
皆さまのおかげで賞をいただくことになりました。
ありがとうございます。
今好きな人がいます。
相手は殿上人の千秋柾哉先生。
仕事上の関係で気まずくなるぐらいなら眺めているままでよかった。
それなのに千秋先生からまさかの告白…?!
「俺と付き合ってくれませんか」
どうしよう。うそ。え?本当に?
「結構はじめから可愛いなあって思ってた」
「なんとか自分のものにできないかなって」
「果穂。名前で呼んで」
「今日から俺のもの、ね?」
福原果穂26歳:OL:人事労務部
×
千秋柾哉33歳:産業医(名門外科医家系御曹司出身)
一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
椿蛍
恋愛
念願のデザイナーとして働き始めた私に、『家のためにお見合いしろ』と言い出した父と継母。
断りたかったけれど、病弱な妹を守るため、好きでもない相手と結婚することになってしまった……。
夢だったデザイナーの仕事を諦められない私――そんな私の前に現れたのは、有名な美女モデル、【リセ】だった。
パリで出会ったその美人モデル。
女性だと思っていたら――まさかの男!?
酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。
けれど、彼の本当の姿はモデルではなく――
(モデル)御曹司×駆け出しデザイナー
【サクセスシンデレラストーリー!】
清中琉永(きよなかるな)新人デザイナー
麻王理世(あさおりせ)麻王グループ御曹司(モデル)
初出2021.11.26
改稿2023.10
推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
寺原しんまる
恋愛
成人してから母親の影響でBLに目覚めた西浦瑠璃子。そんな時、勤務先の東京本社に浮田卓課長が大阪支社から移動してくる。浮田課長は流行のイケオジで、自分のBL推しキャラクター(生もの)にそっくりだった。瑠璃子はBL世界のモブに徹しようと、課長に纏わり付く女子社員を蹴散らしていくのだが、どうやら浮田課長はその男前な性格の瑠璃子にある秘めた感情を寄せていく。
浮田課長はSMのM属性。理想の女王様を探していた。そんな時に部下である瑠璃子の物事をハッキリ言う性格に惹かれ、尚且つヒーロー的に自分を助けてくれる瑠璃子に理想の女王様像を重ねていく。
そんなチグハグな思いを内に秘めた二人が繰り広げる、どこかすれ違っているお話。
この作品はムーンライトノベルズ、魔法のIらんどにも掲載しています。
~ベリーズカフェさんに載せているものを大幅改稿して投稿しています~
下剋上御曹司の純愛~再会した契約妻への積年の愛と執着が重すぎる~
織山ひなた
恋愛
「東京で祖父の仕事を手伝う。はるちゃんにはもう会えない」
――5年前、興津伊吹はそう言い残して、由比榛名の前から姿を消した。
由比榛名(ゆい はるな)は旅行会社に勤める27歳。5年前の大学時代に振られた興津伊吹(おきつ いぶき)のことを今でも引きずっている。
かつて伊吹に振られたクリスマスイブが近づく12月、取引先のホテルロイヤルヴィリジアンへ商談に出向くと、そこには滅多に公に姿を見せない副社長――若宮伊吹(わかみや いぶき)がいた。
――かつては貧乏な苦学生だった伊吹は、御曹司になっていた。
来年度、社長に就任する伊吹は、「色々と試した結果、榛名が1番良かったから」という呆れた理由で契約結婚を申し込んできた。榛名が断れない状況を作った上で。
すっかり擦れてしまった(?)伊吹にショックを受ける榛名。契約婚の新婚生活にも、まったく期待していなかった。
それなのに、ビジネスライクだった伊吹の態度が豹変して――
貧乏から御曹司へ華麗なる変貌を遂げた、不言実行ヒーロー
×
へこたれない天然ヒロイン
2人による、ちょっと切ないラブコメディ
◇本作品の無断使用・無断転載・AI学習を固くお断りします。
◇この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。作中のビジネスも現実とは異なります。
◆Rシーンのあるエピソードには、サブタイトルに★マークを付けます。
◇本作品はエブリスタにも掲載しています。
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる