15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第4章 追いかけた先に、あなたがいた

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「え……?」

次の瞬間、さくらは私の返事も待たず、オフィスビルに向かって駆け出していた。

「さくらっ⁉」

驚いてその背中を見送る。

高層ビルの入口に、セキュリティのゲートが見える。

その向こうで、スーツ姿の人々が忙しなく行き交っている。

さくらはその中に混じるように、小柄な体で正面玄関へと走っていく。

「ちょ、待ってよ……!」

私は慌ててスカートの裾を押さえながら、後を追った。

でも胸の奥では、何かが高鳴っていた。

「副社長ですね。アポは取られていますか?」

受付の女性は丁寧な口調ながらも、淡々とした表情だった。

「アポ……」

私は思わず、さくらの方を見た。

彼女も同じように私を見て、苦笑いする。

「失礼ですが、どのようなご用件でしょうか?」

受付の女性の声が、少しだけ柔らかくなる。

けれどその一言で、私は言葉を失ってしまった。

……なんて言えばいいの?

「以前、お世話になったことがあって……」

そう言おうとしたけれど、声にならなかった。

たった一杯のオレンジジュース。

たった一度のプレゼント。

たった一度の抱擁――

それだけで「また会いたい」なんて、我儘すぎる気がして。

言えない。言えないよ……。

沈黙が重くなる。

受付の女性が、申し訳なさそうに言った。

「ご予定が立て込んでおりますので、本日は難しいかと……」

「あのっ!」

さくらが、私の代わりに声を上げた。

「どうか、一言だけでも伝えていただけませんか? “大学生のひよりが来た”って。」

受付の女性は少し驚いた顔をして、それから視線を私に戻す。

私は、思い切って頭を下げた。

「ご迷惑なのは承知しています。でも……」

ほんの少しだけでもいい。

私の気持ちが、玲央さんに届いてほしい――

「……お願いします。」

すると、受付の人が内線に手を伸ばし、静かに話し出した。

「はい、ひより様という方です。……はい、確認いたします。」

沈黙の数十秒。受話器の向こうの声に、受付の人は軽く息を呑み、そして小さくため息をついた。

「……申し訳ありません。秘書の方が言うには、お時間は取れないとのことです。」

その瞬間、胸の奥に冷たいものが落ちた。

でも、ここまで来たのに。何も伝えられないまま帰るなんて。

私は一歩前に出て、食い下がるように言った。

「それは、玲央さん本人に確認したことですか?」

受付の人は少し戸惑いながらも、視線を逸らさず答えた。

「それが……副社長は、先ほど外出されてしまいまして。秘書の方の判断とのことです。」

「外出……」

ああ、もうこのビルの中にはいないんだ。

せっかく目が合った気がしたのに。あれは……幻だったの?
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