15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第4章 追いかけた先に、あなたがいた

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「少し歩くけれど、レストランを予約してるんだ。行こう。」

「はい。」

レストラン……よかった、今日ワンピースで来て。

玲央さんが一歩踏み出すと、私はその後ろを小走りで追いかける。

足元のパンプスがカツンと鳴って、都会の夕暮れに響いた。

歩きながら、周囲の視線に気づいた。

会社帰りらしき女性たちが、こそこそとヒソヒソ話をしている。

「ねえ、あの人見た?超かっこよくない?」

「スーツ似合いすぎ……彼女、羨ましい~」

そんな声が風に乗って聞こえてくる。

「ん?」

玲央さんが振り返って私を見た。

「いえ……玲央さんって、モテるんですね。」

思わず言ってしまった。すると玲央さんは、少しだけ微笑んだ。

「いつものことだよ。」

さらりと、でもどこか照れたように。そう言って、玲央さんはふいに私の手を取った。

「えっ……」

少しひんやりした彼の手が、私の手をしっかりと包む。

繋いだ手の温もりが、胸までじんわりと広がった。

今日のこの時間を、ずっと忘れたくない。そう思った。

レストランに着くと、私たちはすぐに窓際の席へ案内された。

「一ノ瀬様、ご来店ありがとうございます。」

丁寧なお辞儀とともに、黒服のスタッフがメニューを差し出してくれる。

その一言に、私は内心ドキリとした。

――“一ノ瀬様”って……常連?それとも特別なお客様?

目の前に並ぶテーブルセッティングも、どこか上品で、どこか別世界のようだった。

玲央さんは、そんな私の表情に気づいたのか、ふっと耳元に顔を寄せた。

「実は、系列店なんだよ。」

「えっ、系列店?」

「うん。一ノ瀬グループで運営してるレストランのひとつ。」

あっさりと言うけれど、つまりそれって――このレストランも、玲央さんの会社の一部ってこと?

私はぎこちなくメニュー表を開いた。どの料理も、まるで雑誌の中の世界みたいで、桁が違って見える。

「ええっと……値段、桁が違うような……」

メニューに記された数字を見て、私はごくりと唾を飲み込んだ。一人七千円って、ランチ三回分はあるんじゃない?

「大丈夫。社割きくから。」

玲央さんは、あくまで平然とした顔でそう言う。

そうだよね、私に気を遣ってくれてるんだ。

「面倒だから、このコースでいい?」

「ええっと……」

まだ返事もしていないのに、玲央さんは手際よく店員さんを呼んだ。

「すみません。このコースで。飲み物は、カクテル?」

そう言いながら、お酒のメニューをさっと私の前に差し出してくれる。

「じゃあ……カシスオレンジを。」

なるべく控えめなものを選ぶ。すると玲央さんは、くすっと笑った。

「ひよりさんらしいね。」

なんだか恥ずかしくて、私はそっと目を伏せた。

でもその言葉は、不思議と心を温かくしてくれた。
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