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第5章 ようやく始まった恋なのに
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「ああ、家にも何枚か飾ってるんだ。絵画。」
「えっ、そうなんですか?誰の絵ですか?」
すると、玲央さんは少し照れくさそうに笑った。
「ヒロ・ヤマガタっていう画家。知ってる?」
「ヒロ・ヤマガタ……」
私は首をかしげた。
「すみません。知識不足で……」
けれど玲央さんは、全く嫌な顔をしなかった。
「いいんだよ。昔、スクリーンプリントで有名になった人。アメリカで活躍してて、最近は油絵も描いててね。色彩がすごくきれいなんだ。」
私はその言葉に素直に感動した。
「玲央さん、詳しいんですね。」
「まぁ、好きなだけだけど。人混みの中で見るより、静かな場所で一枚の絵をゆっくり眺めるのが好きなんだ。」
そんな穏やかな時間を、この人と過ごせている。
私はふと、絵ではなく、玲央さんの横顔を見つめてしまっていた。
展示を見終えた後、玲央さんが「お茶しない?」とカフェを指差す。
私はうんと頷いて、二人掛けの窓際の席に座った。
「アイスコーヒー、二つお願いします。」
注文を済ませると、玲央さんはスマホを取り出し、何かを見せてきた。
そこに映っていたのは、精巧に手入れされた小さな盆栽。
「親父が、これ持って行けってうるさくてさ。」
私は目を丸くした。
「それって……社長のことですか?」
玲央さんはふっと笑って頷いた。
「いや、今は会長。うちの親父、昔は社長やってたけど、弟?叔父さんに譲って、今は後ろで見守ってる感じ。」
「そうだったんですか……。なんだか、すごいご家族なんですね。」
「まぁ、うるさいけどね。でも、こうして一緒にのんびりお茶できる時間が、一番落ち着くよ。」
その言葉に、心がじんわり温かくなった。
大企業の副社長なのに、こうやって私に穏やかな笑顔を向けてくれる。
私はアイスコーヒーを一口飲みながら、彼の横顔をそっと見つめた。
玲央さんを見ていると、不思議な気持ちになる。
スーツが似合って、優しくて、穏やかで。
こんなに素敵な人が、どうして私なんかを彼女にしてくれたのか、時々信じられなくなる。
「玲央さんは、今までどんな方とお付き合いしてきたんですか?」
ふと気になって、カフェの空気に紛れるように聞いてみた。
アイスコーヒーを一口飲んだ玲央さんは、少しだけ顔をしかめた。
「普通だよ。」
「同じ会社の方とかですか?」
「いや……芸能人?モデルの子。」
「……え?」
一瞬、思考が止まる。モデルって、あの……雑誌とかに載ってる、モデル?
私なんかとは、世界が違いすぎる。
途端に、自分の地味な服装や、背筋を伸ばしても届かない存在に思えて、胸がきゅっとなった。
「えっ、そうなんですか?誰の絵ですか?」
すると、玲央さんは少し照れくさそうに笑った。
「ヒロ・ヤマガタっていう画家。知ってる?」
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私は首をかしげた。
「すみません。知識不足で……」
けれど玲央さんは、全く嫌な顔をしなかった。
「いいんだよ。昔、スクリーンプリントで有名になった人。アメリカで活躍してて、最近は油絵も描いててね。色彩がすごくきれいなんだ。」
私はその言葉に素直に感動した。
「玲央さん、詳しいんですね。」
「まぁ、好きなだけだけど。人混みの中で見るより、静かな場所で一枚の絵をゆっくり眺めるのが好きなんだ。」
そんな穏やかな時間を、この人と過ごせている。
私はふと、絵ではなく、玲央さんの横顔を見つめてしまっていた。
展示を見終えた後、玲央さんが「お茶しない?」とカフェを指差す。
私はうんと頷いて、二人掛けの窓際の席に座った。
「アイスコーヒー、二つお願いします。」
注文を済ませると、玲央さんはスマホを取り出し、何かを見せてきた。
そこに映っていたのは、精巧に手入れされた小さな盆栽。
「親父が、これ持って行けってうるさくてさ。」
私は目を丸くした。
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「いや、今は会長。うちの親父、昔は社長やってたけど、弟?叔父さんに譲って、今は後ろで見守ってる感じ。」
「そうだったんですか……。なんだか、すごいご家族なんですね。」
「まぁ、うるさいけどね。でも、こうして一緒にのんびりお茶できる時間が、一番落ち着くよ。」
その言葉に、心がじんわり温かくなった。
大企業の副社長なのに、こうやって私に穏やかな笑顔を向けてくれる。
私はアイスコーヒーを一口飲みながら、彼の横顔をそっと見つめた。
玲央さんを見ていると、不思議な気持ちになる。
スーツが似合って、優しくて、穏やかで。
こんなに素敵な人が、どうして私なんかを彼女にしてくれたのか、時々信じられなくなる。
「玲央さんは、今までどんな方とお付き合いしてきたんですか?」
ふと気になって、カフェの空気に紛れるように聞いてみた。
アイスコーヒーを一口飲んだ玲央さんは、少しだけ顔をしかめた。
「普通だよ。」
「同じ会社の方とかですか?」
「いや……芸能人?モデルの子。」
「……え?」
一瞬、思考が止まる。モデルって、あの……雑誌とかに載ってる、モデル?
私なんかとは、世界が違いすぎる。
途端に、自分の地味な服装や、背筋を伸ばしても届かない存在に思えて、胸がきゅっとなった。
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