15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第5章 ようやく始まった恋なのに

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「ああ、家にも何枚か飾ってるんだ。絵画。」

「えっ、そうなんですか?誰の絵ですか?」

すると、玲央さんは少し照れくさそうに笑った。

「ヒロ・ヤマガタっていう画家。知ってる?」

「ヒロ・ヤマガタ……」

私は首をかしげた。

「すみません。知識不足で……」

けれど玲央さんは、全く嫌な顔をしなかった。

「いいんだよ。昔、スクリーンプリントで有名になった人。アメリカで活躍してて、最近は油絵も描いててね。色彩がすごくきれいなんだ。」

私はその言葉に素直に感動した。

「玲央さん、詳しいんですね。」

「まぁ、好きなだけだけど。人混みの中で見るより、静かな場所で一枚の絵をゆっくり眺めるのが好きなんだ。」

そんな穏やかな時間を、この人と過ごせている。

私はふと、絵ではなく、玲央さんの横顔を見つめてしまっていた。
展示を見終えた後、玲央さんが「お茶しない?」とカフェを指差す。

私はうんと頷いて、二人掛けの窓際の席に座った。

「アイスコーヒー、二つお願いします。」

注文を済ませると、玲央さんはスマホを取り出し、何かを見せてきた。

そこに映っていたのは、精巧に手入れされた小さな盆栽。

「親父が、これ持って行けってうるさくてさ。」

私は目を丸くした。

「それって……社長のことですか?」

玲央さんはふっと笑って頷いた。

「いや、今は会長。うちの親父、昔は社長やってたけど、弟?叔父さんに譲って、今は後ろで見守ってる感じ。」

「そうだったんですか……。なんだか、すごいご家族なんですね。」

「まぁ、うるさいけどね。でも、こうして一緒にのんびりお茶できる時間が、一番落ち着くよ。」

その言葉に、心がじんわり温かくなった。

大企業の副社長なのに、こうやって私に穏やかな笑顔を向けてくれる。

私はアイスコーヒーを一口飲みながら、彼の横顔をそっと見つめた。

玲央さんを見ていると、不思議な気持ちになる。

スーツが似合って、優しくて、穏やかで。

こんなに素敵な人が、どうして私なんかを彼女にしてくれたのか、時々信じられなくなる。

「玲央さんは、今までどんな方とお付き合いしてきたんですか?」

ふと気になって、カフェの空気に紛れるように聞いてみた。

アイスコーヒーを一口飲んだ玲央さんは、少しだけ顔をしかめた。

「普通だよ。」

「同じ会社の方とかですか?」

「いや……芸能人?モデルの子。」

「……え?」

一瞬、思考が止まる。モデルって、あの……雑誌とかに載ってる、モデル?

私なんかとは、世界が違いすぎる。

途端に、自分の地味な服装や、背筋を伸ばしても届かない存在に思えて、胸がきゅっとなった。
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