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第5章 ようやく始まった恋なのに
⑥
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言いかけたその時だった。
小さな影が玲央さんの足元に駆け寄り、ぎゅっとしがみついた。
「お父さん、抱っこして。」
玲音君――あの、玲央さんにそっくりな男の子だ。
玲央さんは一瞬、私に視線を向けたが、何も言わず、そっと抱き上げた。
その背後から、女性の姿が現れる。
「……ああ、ひよりさんも一緒だったの?」
涼やかな声。萌音さんだった。
その自然な口調と笑みが、私の胸を締めつけた。
――まさか、今日はこの人と会う約束だったの?
三人で並ぶ姿が、まるで「家族」に見えた。玲央さんの腕の中で嬉しそうに笑う玲音君。隣で微笑む萌音さん。
私は、ひとりぼっちだった。
「ひよりさん……話したいことがあるんだ。」
玲央さんが私に向き直る。でも、その腕の中には、確かに「過去の証」がいた。
私は、目をそらさずに言った。
「話してください。全部、聞きます。」
その瞬間、私の決意と、覚悟が玲央さんの目に映った気がした――。
そして私達は、あまり人のいない静かなカフェを選び、話すことにした。
何故か、三人が同じ長椅子に並び、私だけが一人、向かい側に座るという配置になった。
まるで、そこにすでに「家族」がいるかのようで、胸がきゅっと締めつけられる。
「ひよりさん、話っていうのは……玲音のことなんだ。」
玲央さんが静かに切り出す。
「はい。」
私は息を呑んだまま、頷く。
ちょうどその時、頼んでいたアイスティーがテーブルに置かれる。その冷たいグラスの中で、氷が小さく音を立てた。
「萌音とも話し合ったんだけど、玲音を認知することにした。」
予想していた言葉だった。玲央さんは誠実な人だから。
だからこそ、逃げる選択肢は選ばないと思っていた。
「そう、ですか……」
私は微笑もうとしたけれど、うまくいかなかった。
喉の奥がひどく苦しかった。
言葉に詰まり、アイスティーに手を伸ばしても、氷の冷たさは心を癒してはくれなかった。
玲音君が「お父さん」と呼ぶ声が、今も耳に残っている。
私のいる場所は、どこなのだろう。
「それで、その上の話なんだけど――」
そう言ったきり、玲央さんは言葉を失っていた。
私から視線を逸らし、口元を結ぶ。その表情には、戸惑いと痛みが滲んでいる。
どうして。何を言おうとしているの?
私は、テーブルの上にそっと手を伸ばし、玲央さんの指先に触れた。
「玲央さん。私……玲央さんの話なら、どんなことでも聞くから。だから……教えてください。」
自分でも震えているのがわかった。怖かった。けれど、黙っていることはもっと怖かった。
すると玲央さんは、なおさら苦しい顔をして、うつむいた。
……そして代わりに、隣に座っていた萌音さんが、静かに口を開いた。
「――私たちの結婚を、許してほしいの。」
その言葉は、カフェの静寂を破るには充分だった。
耳が、キーンと鳴ったような気がした。
小さな影が玲央さんの足元に駆け寄り、ぎゅっとしがみついた。
「お父さん、抱っこして。」
玲音君――あの、玲央さんにそっくりな男の子だ。
玲央さんは一瞬、私に視線を向けたが、何も言わず、そっと抱き上げた。
その背後から、女性の姿が現れる。
「……ああ、ひよりさんも一緒だったの?」
涼やかな声。萌音さんだった。
その自然な口調と笑みが、私の胸を締めつけた。
――まさか、今日はこの人と会う約束だったの?
三人で並ぶ姿が、まるで「家族」に見えた。玲央さんの腕の中で嬉しそうに笑う玲音君。隣で微笑む萌音さん。
私は、ひとりぼっちだった。
「ひよりさん……話したいことがあるんだ。」
玲央さんが私に向き直る。でも、その腕の中には、確かに「過去の証」がいた。
私は、目をそらさずに言った。
「話してください。全部、聞きます。」
その瞬間、私の決意と、覚悟が玲央さんの目に映った気がした――。
そして私達は、あまり人のいない静かなカフェを選び、話すことにした。
何故か、三人が同じ長椅子に並び、私だけが一人、向かい側に座るという配置になった。
まるで、そこにすでに「家族」がいるかのようで、胸がきゅっと締めつけられる。
「ひよりさん、話っていうのは……玲音のことなんだ。」
玲央さんが静かに切り出す。
「はい。」
私は息を呑んだまま、頷く。
ちょうどその時、頼んでいたアイスティーがテーブルに置かれる。その冷たいグラスの中で、氷が小さく音を立てた。
「萌音とも話し合ったんだけど、玲音を認知することにした。」
予想していた言葉だった。玲央さんは誠実な人だから。
だからこそ、逃げる選択肢は選ばないと思っていた。
「そう、ですか……」
私は微笑もうとしたけれど、うまくいかなかった。
喉の奥がひどく苦しかった。
言葉に詰まり、アイスティーに手を伸ばしても、氷の冷たさは心を癒してはくれなかった。
玲音君が「お父さん」と呼ぶ声が、今も耳に残っている。
私のいる場所は、どこなのだろう。
「それで、その上の話なんだけど――」
そう言ったきり、玲央さんは言葉を失っていた。
私から視線を逸らし、口元を結ぶ。その表情には、戸惑いと痛みが滲んでいる。
どうして。何を言おうとしているの?
私は、テーブルの上にそっと手を伸ばし、玲央さんの指先に触れた。
「玲央さん。私……玲央さんの話なら、どんなことでも聞くから。だから……教えてください。」
自分でも震えているのがわかった。怖かった。けれど、黙っていることはもっと怖かった。
すると玲央さんは、なおさら苦しい顔をして、うつむいた。
……そして代わりに、隣に座っていた萌音さんが、静かに口を開いた。
「――私たちの結婚を、許してほしいの。」
その言葉は、カフェの静寂を破るには充分だった。
耳が、キーンと鳴ったような気がした。
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