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第5章 ようやく始まった恋なのに
⑦
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「……けっこん?」
私は、思わず言葉を復唱した。声が上ずるのを、自分でも止められなかった。
萌音さんは、玲音君を膝に抱いたまま、まっすぐ私を見ている。
「玲音のためにも、形だけでも家族になろうって話したの。もちろん、玲央だって迷ってた。でも――」
「やめてくれ、萌音。」
玲央さんが遮るように言った。
「それを、ひよりさんの前で言うのは……違うだろ。」
だが、もう聞いてしまった。
もう、戻れない。
私はただ、小さく笑った。
「……そうですか。ご家族になるんですね。おめでとうございます。」
自分でも、なぜそんな言葉が口から出たのか、わからなかった。
でも、涙が零れそうになる前に、せめて最後のプライドだけは守りたかった。
「本当に玲央さんは、それでいいんですか?」
たまりかねた私は、問いかけていた。言ってはいけないのかもしれない。でも――どうしても黙っていられなかった。
「あなたね。」
萌音さんが低く言って、テーブル越しに身を乗り出す。
「玲央がどんな気持ちで決断したか、分かるの?」
「分かりません。」
私は正直に答えた。嘘なんて言えなかった。
「でも……玲央さん、ずっと苦しそうです。目を逸らしてばかりで、私を見てくれない。笑ってないんです。結婚する人の顔じゃない……」
言葉が詰まった。けれど、それが私の本音だった。
すると、玲央さんがゆっくり顔を上げた。その目は、涙をこらえるように潤んでいて、迷いを滲ませていた。
「ひよりさん……」
その一言に、心臓が大きく跳ねた。
私はまだ――あきらめたくなかった。
玲央さんの、本当の気持ちが知りたかった。
私は、手のひらをぎゅっと握りしめ、思い切って言葉を口にした。
「DNA検査を、要求します。」
その瞬間、テーブルの空気が凍りついた。
萌音さんの瞳が見開かれ、信じられないものを見るように私を睨んだ。
そして、玲央さんも驚いたように私を見た。
「……ひよりさん、それは……」
「申し訳ありません。でも、玲央さんが認知するというのなら、その前に確かな証拠が必要です。子供にとっても、真実が大切ですから。」
冷静を装ったけれど、心臓がうるさいほど脈打っていた。
「私が疑われてるってことね?」
萌音さんの声は低く、怒りを含んでいた。
「違います。ただ、私も玲央さんも……自分の人生を大切にしたいだけです。」
私の言葉に、玲央さんは何も言えず、黙ってうつむいた。
けれど、その沈黙こそが答えだった。
彼もまた、どこかで――確かめたかったのだ。
「必要ないわ。血液型だって同じなのよ?」
萌音さんの声には苛立ちが滲んでいた。
けれど、私は一歩も引かなかった。
「お願いです。本当の子供なら、検査を受けられるはずです。」
私の言葉に、萌音さんのまなざしが一瞬揺らぐ。
私は、思わず言葉を復唱した。声が上ずるのを、自分でも止められなかった。
萌音さんは、玲音君を膝に抱いたまま、まっすぐ私を見ている。
「玲音のためにも、形だけでも家族になろうって話したの。もちろん、玲央だって迷ってた。でも――」
「やめてくれ、萌音。」
玲央さんが遮るように言った。
「それを、ひよりさんの前で言うのは……違うだろ。」
だが、もう聞いてしまった。
もう、戻れない。
私はただ、小さく笑った。
「……そうですか。ご家族になるんですね。おめでとうございます。」
自分でも、なぜそんな言葉が口から出たのか、わからなかった。
でも、涙が零れそうになる前に、せめて最後のプライドだけは守りたかった。
「本当に玲央さんは、それでいいんですか?」
たまりかねた私は、問いかけていた。言ってはいけないのかもしれない。でも――どうしても黙っていられなかった。
「あなたね。」
萌音さんが低く言って、テーブル越しに身を乗り出す。
「玲央がどんな気持ちで決断したか、分かるの?」
「分かりません。」
私は正直に答えた。嘘なんて言えなかった。
「でも……玲央さん、ずっと苦しそうです。目を逸らしてばかりで、私を見てくれない。笑ってないんです。結婚する人の顔じゃない……」
言葉が詰まった。けれど、それが私の本音だった。
すると、玲央さんがゆっくり顔を上げた。その目は、涙をこらえるように潤んでいて、迷いを滲ませていた。
「ひよりさん……」
その一言に、心臓が大きく跳ねた。
私はまだ――あきらめたくなかった。
玲央さんの、本当の気持ちが知りたかった。
私は、手のひらをぎゅっと握りしめ、思い切って言葉を口にした。
「DNA検査を、要求します。」
その瞬間、テーブルの空気が凍りついた。
萌音さんの瞳が見開かれ、信じられないものを見るように私を睨んだ。
そして、玲央さんも驚いたように私を見た。
「……ひよりさん、それは……」
「申し訳ありません。でも、玲央さんが認知するというのなら、その前に確かな証拠が必要です。子供にとっても、真実が大切ですから。」
冷静を装ったけれど、心臓がうるさいほど脈打っていた。
「私が疑われてるってことね?」
萌音さんの声は低く、怒りを含んでいた。
「違います。ただ、私も玲央さんも……自分の人生を大切にしたいだけです。」
私の言葉に、玲央さんは何も言えず、黙ってうつむいた。
けれど、その沈黙こそが答えだった。
彼もまた、どこかで――確かめたかったのだ。
「必要ないわ。血液型だって同じなのよ?」
萌音さんの声には苛立ちが滲んでいた。
けれど、私は一歩も引かなかった。
「お願いです。本当の子供なら、検査を受けられるはずです。」
私の言葉に、萌音さんのまなざしが一瞬揺らぐ。
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