15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

文字の大きさ
53 / 99
第6章 あなたが甘くなったのは、私のせい?

しおりを挟む
「じゃあ、罰として……今日は俺にいっぱい甘えて。」

その一言に、心臓が跳ねた。

「だから来ないでって言ったのに……」

私は小さく呟いたが、玲央さんは意に介さず、今日も堂々と高級車でお迎えに来てくれる。

しかもスーツ姿で。それがまた目立つ。

大学前には女の子達が集まり、もはやファンクラブ状態だ。

「きゃああ!彼氏さん!」

「こっち向いてください!」

黄色い声が飛ぶ中、玲央さんはにこやかに手を振った。

「ちょっと!止めてください!」

私が小声で抗議すると、玲央さんは笑いながら言う。

「まあまあ。こうやって注目されるのも悪くないだろ?もしかしたらここから顧客開拓できるかもしれないし。」

「大学で営業活動しないでください!」

「だってほら、あの子とか名刺欲しそうだったよ?」

「ダメです!」

恥ずかしさと嫉妬で顔が熱くなる。

玲央さんは完全に楽しんでる。

私はふくれっ面になりながらも、助手席に乗り込んだ。

ドアが閉まり、車が発進すると、やっと静かな時間が訪れた。

「……ほんと、玲央さんって罪な男。」

「でも、俺の彼女は君だけ。」

ぽつりと言ったその言葉に、不覚にも胸がきゅっと締め付けられた。

そしてその日は、私の好きな雑貨屋さんに連れて来てもらった。

「あっ、いた。この猫さん。」

黒猫シリーズの雑貨。ポーチやボールペン。Tシャツまである。

「本当、ひよりは雑貨好きだな。」

「うん、大好き。」

その時だった。

玲央さんがふいに言った。

「俺と雑貨、どっちが好き?」

「ええっと……」

言葉に詰まる私を見て、玲央さんが口をとがらせた。

「迷うんだ。」

そう言って、くるりと背中を向けてしまう。

「ちょっと待って。だって、雑貨は物だよ?」

そう言って笑いながら返すと、玲央さんは少しだけ眉をひそめた。

「物なのに、俺より好きなんだ。」

その言い方が、妙に拗ねていて――どこか、可愛らしく思えた。

「玲央さんって、意外と子供な時ありますよね。」

そう口にした途端、玲央さんもすぐさま言い返す。

「ひよりは、素直じゃない時ある。」

「……えっ?」

「たとえば今とか。」

お互い、むっとして、目を合わせたままにらみ合う。

でも、照れくさくなって、同時にふいっと顔を背けた。

沈黙のまま店内をひと回りして、私は黒猫シリーズのボールペンを一つ手に取った。

「これ、買おうかな。」

レジに向かう私を、玲央さんは少しむくれた表情で見ていた。

「……それ、俺が買ってあげればよかったのに。」

その声にはまだ、拗ねた余韻が残っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】エリート産業医はウブな彼女を溺愛する。

花澤凛
恋愛
第17回 恋愛小説大賞 奨励賞受賞 皆さまのおかげで賞をいただくことになりました。 ありがとうございます。 今好きな人がいます。 相手は殿上人の千秋柾哉先生。 仕事上の関係で気まずくなるぐらいなら眺めているままでよかった。 それなのに千秋先生からまさかの告白…?! 「俺と付き合ってくれませんか」    どうしよう。うそ。え?本当に? 「結構はじめから可愛いなあって思ってた」 「なんとか自分のものにできないかなって」 「果穂。名前で呼んで」 「今日から俺のもの、ね?」 福原果穂26歳:OL:人事労務部 × 千秋柾哉33歳:産業医(名門外科医家系御曹司出身)

クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~

けいこ
恋愛
マンションの隣の部屋に引越してきたのは、 超絶イケメンのとても優しい男性だった。 誰かを「愛」することを諦めていた詩穂は、 そんな彼に密かに恋心を芽生えさせる。 驚くことに、その彼は大型テーマパークなどを経営する 「桐生グループ」の御曹司で、 なんと詩穂のオフィスに課長として現れた。 でも、隣人としての彼とは全く違って、 会社ではまるで別人のようにクールで近寄り難い。 いったいどっちが本当の彼なの? そして、会社以外で私にとても優しくするのはなぜ? 「桐生グループ」御曹司 桐生 拓弥(きりゅう たくみ) 30歳 × テーマパーク企画部門 姫川 詩穂(ひめかわ しほ) 25歳

胃袋掴んだら御曹司にプロポーズされちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
胃袋掴んだら御曹司にプロポーズされちゃいました

俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る

ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。 義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。 そこではじめてを経験する。 まゆは三十六年間、男性経験がなかった。 実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。 深海まゆ、一夜を共にした女性だった。 それからまゆの身が危険にさらされる。 「まゆ、お前は俺が守る」 偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。 祐志はまゆを守り切れるのか。 そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。 借金の取り立てをする工藤組若頭。 「俺の女になれ」 工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。 そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。 そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。 果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。

地味女だけど次期社長と同棲してます。―昔こっぴどく振った男の子が、実は御曹子でした―

千堂みくま
恋愛
「まりか…さん」なんで初対面から名前呼び? 普通は名字じゃないの?? 北条建設に勤める地味なOL恩田真梨花は、経済的な理由から知り合ったばかりの次期社長・北条綾太と同棲することになってしまう。彼は家事の代償として同棲を持ちかけ、真梨花は戸惑いながらも了承し彼のマンションで家事代行を始める。綾太は初対面から真梨花に対して不思議な言動を繰り返していたが、とうとうある夜にその理由が明かされた。「やっと気が付いたの? まりかちゃん」彼はそう囁いて、真梨花をソファに押し倒し――。○強がりなくせに鈍いところのある真梨花が、御曹子の綾太と結ばれるシンデレラ・ストーリー。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。

エリート御曹司に甘く介抱され、独占欲全開で迫られています

小達出みかん
恋愛
旧題:残業シンデレラに、王子様の溺愛を 「自分は世界一、醜い女なんだーー」過去の辛い失恋から、男性にトラウマがあるさやかは、恋愛を遠ざけ、仕事に精を出して生きていた。一生誰とも付き合わないし、結婚しない。そう決めて、社内でも一番の地味女として「論外」扱いされていたはずなのに、なぜか営業部の王子様•小鳥遊が、やたらとちょっかいをかけてくる。相手にしたくないさやかだったが、ある日エレベーターで過呼吸を起こしてしまったところを助けられてしまいーー。 「お礼に、俺とキスフレンドになってくれない?」 さやかの鉄壁の防御を溶かしていく小鳥遊。けれど彼には、元婚約者がいてーー?

契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない

ラヴ KAZU
恋愛
橘花ミクは誕生日に恋人、海城真人に別れを告げられた。 バーでお酒を飲んでいると、ある男性に声をかけられる。 ミクはその男性と一夜を共にしてしまう。 その男性はミクの働いている辰巳グループ御曹司だった。 なんてことやらかしてしまったのよと落ち込んでしまう。 辰巳省吾はミクに一目惚れをしたのだった。 セキュリティーないアパートに住んでいるミクに省吾は 契約結婚を申し出る。 愛のない結婚と思い込んでいるミク。 しかし、一途な愛を捧げる省吾に翻弄される。 そして、別れを告げられた元彼の出現に戸惑うミク。 省吾とミクはすれ違う気持ちを乗り越えていけるのだろうか。

処理中です...