15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第7章 不安の夜と、確かな腕の中で

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「え? 何か言いました?」

わざとらしく聞き返すと、玲央さんは頬をかすかに赤くしながら片手で私の頭をぽん、と撫でた。

「いや、可愛いなって思っただけ。」

「……それ、ずるいですよ。」

助手席の私は、思わず胸の奥がぽっと熱くなるのを感じた。

黒猫のマグカップ――明日の朝は、二人で使おう。

なんでもない今日の記念みたいに、ちょっと特別な朝にするために。

そして久しぶりにさくらと誠一と、ランチを食べた。

「そう言えばひより、この前、彼氏の誕生日だったんでしょ?」

さくらが、スプーンを口に運びながら言った。

「うん。彼氏の家に泊まっちゃった。」

私がさらりと答えると、誠一の手がピクリと止まった。カレーのルーが今にも皿の外にこぼれそうになる。

「……いいなぁ。」

ぼそっと呟く誠一の声は、カレーの湯気にかき消されそうなくらいかすれていた。

「……もしかして、“初めて”あげちゃった?」

さくらが、声のトーンを落として、私の耳元でそっと囁く。

私はちょっと恥ずかしくて俯きながらも、こくんと頷いた。

すると――

「はぁ……」

目の前で誠一が、スプーンを落としそうになりながら魂が抜けたみたいな顔をした。

「ひより……初体験か……」

まるで親戚のおじさんみたいなテンションで、肩を落とす誠一。

「ちょっと、なにその反応?」

「だって、お前……。ああ、そうか。そうなるよな、そりゃ……」

カレーのにんじんを崩しながら、何かを悟ったような顔でつぶやく。

「ねえねえ、ひより。そうなると、初めての人と結婚したくない?」

さくらの問いかけに、私はスプーンをくるくる回しながら、あっさりと答えた。

「うん、したいかも。……ああ、もしかして卒業と同時に結婚するかも。」

「はあ⁉」

さくらと誠一は、そろって口を開けたまま、数秒間時が止まった。

「何その、いきなりの爆弾発言……」

「就活より先に花嫁修業かよ……」

でも、私の気持ちは案外、本気だった。

その夜、玲央さんの部屋でソファにもたれながら、その話をしてみた。

「玲央さん、今日さくら達と話してて思ったんだけど……私、卒業と同時に結婚するかもって言ったの。」

「ん? そうなの?」

玲央さんは、テレビのリモコンをいじりながら、ちょっとだけきょとんとした顔をした。

「うん。ほら、玲央さんって前に、“早く結婚したい”って言ってたじゃない。だから……」

「え?」と彼は、私の言葉を途中で遮ってきた。

「いや、それは……ひよりがまだ学生だったから、早く“俺のもの”にしたいって意味で言っただけで……」

「え?」

「別に、本当に卒業と同時じゃなくてもいいよ。ひよりが仕事に慣れて、自分のリズムが掴めるようになってからで。」
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