15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第7章 不安の夜と、確かな腕の中で

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私は目をぱちくりさせた。

「えっ……えっ? 急に冷静じゃん。」

「俺だって、ひよりが大事だもん。焦って結婚して、ひよりに後悔されたら……それこそ悲惨だよ。」

玲央さんは、私の手を取り、そっと指先をなぞるように撫でた。

「本気で一緒になりたいなら、タイミングも大事だろ?」

私は胸がじんわり熱くなった。

(……こういうとこ、ずるいんだよ。大人すぎて。)

それでも私は、小さく微笑んで頷いた。


「もしかして、あの誕生日の夜から、結婚を意識したのは私だけ?」

そう呟いたあと、自分のグラスの中で揺れる氷をぼんやりと見つめた。

玲央さんにとっては、ただの通過点だったのかもしれない。

そんな思いが胸に広がって、なんとなく落ち着かない。

さくらは、そんな私の様子にすぐ気がついた。

「うーん……確かにさ、一回に重きを置くのって、どうかと思うよね。」

珍しく真面目な声。さくらはスプーンをクルクル回しながら、小さく続ける。

「だって、これからずっと彼氏さんと、していくわけでしょう?最初は特別に思ってても、そのうち、なんとなく日常になっていくと思う。」

その瞬間、誠一が手を伸ばして、ぽんとさくらの頭を軽く叩いた。

「痛っ! なにすんのよ!」

「お前、もうちょっと言葉選べよ。」

さくらは唇を尖らせながらも、「だって本当のことでしょ」とぼそっと言い返す。

誠一は、さくらの隣にさりげなく腰を下ろすと、何気ない口調で言った。

「俺は、あの夜を忘れないから。一生。」

その一言に、さくらがピタリと動きを止める。

そして、そっと誠一を横目で睨むように見た。

けれど誠一は、まっすぐ彼女を見つめていた。

「えっ、ちょっと待って……二人、なんかあったの?」

驚いてそう聞いた私に、さくらは目をそらしながら「別に」とだけ言って、立ち上がった。

手にしていたコップを持って、そのまま給水器へ向かって行く。

そして、その背中を見送りながら、誠一がぽつりと呟いた。

「俺、さくらの初めて、貰った。」

私は、思わず両手で口を塞いだ。

「えっ、いつの間に!? え? 二人って付き合ってるの?」

驚きの連続に思考が追いつかない。

すると誠一は、照れくさそうに笑いながらも、どこか真剣な顔で私を見た。

「男はさ、好きな女との夜は……いつだって、特別に想ってるよ。」

その言葉は、玲央さんへの不安で揺れていた私の心に、静かに沁み込んでいった。

(……玲央さんも、あの夜を特別に想ってくれてたのかな。)

さくらが席に戻ってきた頃には、私は少しだけ、穏やかな気持ちを取り戻していた。

でも一つだけ、はっきり言えることがある。

――あの誕生日の夜から、私はこの恋に、浮かれていた。

初めてだったから。大人の愛に触れたから。玲央さんに抱きしめられて、私は“特別”になれた気がしていた。

でも、それって本当に“愛されてる”ってことなんだろうか。
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