15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第9章 誓いの言葉は、静かな夜に

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迷いも、不安も、ほんの少しあるのかもしれないけど、それを正面から受け止める強さがあった。

「私、図書館司書でいいかなって思ってる。」

「えっ?」

思いがけない私の言葉に、さくらは足を止めた。
驚いたように、こちらを見つめる。

「いいの? それで。夢だったんじゃないの?」

夢だった。確かに。

でも──。

私は言葉を探しながら、小さく笑った。

「うん……でも、図書館司書でも、本に関われるし。教えるのが向いてるかどうか、ちょっと自信ないんだ。」

さくらは、何か言いたげに唇を噛んだまま黙っている。

「玲央さんにも、どっちでもいいって言われたし。好きなようにしてって。」

「……うーん。なんか、ひよりらしくない。」

「え?」

「いや、ごめん。でもさ、ひよりって昔から、“先生になって本の楽しさを伝えたい”って言ってたじゃん。」


その言葉が、やけに遠くに聞こえた。

それは、きっと昔の私。

今の私は、誰かと一緒に未来を歩く選択を、無意識に優先してしまっていたのかもしれない。

さくらは続けて言う。

「本当にそう思ってるならいいけど……なんか、誰かに合わせてない?」

その「誰か」が誰かなんて、言わなくても分かっていた。

私は曖昧に微笑むことしかできなかった。

そしてその微笑みが、さくらとの距離を少しだけ広げてしまった気がした。

週末になり、玲央さんの家に泊まりに行くと、いつにもなく彼の顔が真剣だった。

「ひより。こっちおいで。」

ソファに座る彼に手を引かれて、私は当然、膝の上にでも抱き寄せられるのかと思った。

けれど、玲央さんは私の手を軽く握っただけで、少し間をとって隣に座らせた。

いつもの余裕ある微笑みはなく、どこか考え込むような表情だった。

「君のお友達、さくらちゃんだっけ?」

「うん……えっ?」

その名前に思わず眉をひそめる。

どうして今、さくらの話?

「この前、俺のところに来たんだ。」

「……えっ⁉」

声が裏返る。

さくらが? 玲央さんに? どうして──?

「ひよりの将来を潰さないでくれって、お願いされた。」

その言葉が、胸に冷たく突き刺さった。

私は一瞬、息ができなくなって、言葉が出なかった。

「……なんで、そんなこと……」

さくらは、私のために?

それとも──私が“夢を諦めようとしていること”が、彼女にはそう見えた?

玲央さんは静かに私を見つめた。

「驚いたよ。いきなり来て、丁寧に頭を下げられてさ。君が、昔からどんな夢を持ってたか、どれだけ本気だったか。いろいろ話してくれた。」

私は、膝の上で手をぎゅっと握りしめた。

さくらは、私よりも、私の夢を覚えていてくれた。
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