15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第9章 誓いの言葉は、静かな夜に

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週末のお泊りの日がやってきた。

カーテン越しの光が淡く部屋を包み込んで、時計の音さえ聞こえないほど静かだった。

「ひより……」

玲央さんの低く甘い声。

触れる指先は優しくて、でもどこかで、私を深く欲している熱が滲んでいた。

今日も、私は玲央さんに抱かれていた。

心も体も、すべてをこの人に許している自分がいた。

「ひより、もう俺……」

その声に、体が一瞬だけ委縮する。

愛情の表現。だけどそれは、快楽にも等しくて、どこかで取り返しのつかない場所へ進んでしまいそうで怖かった。

「玲央さん……」

私は、必死に玲央さんの体を抱きしめた。

言わなきゃ。言わなきゃ、と思っていたことを。

「赤ちゃん……できるかも。」

空気が止まった。

玲央さんの動きがピタリと止まり、私は緊張で指先に力が入った。

しばらくの沈黙のあと、彼は私の顔をそっと覗き込んで、真剣な目で言った。

「俺は、ひよりとの未来が欲しい。」

その言葉が、胸にじんと響いた。

叱るでも、驚くでもなく、受け止めるための言葉だった。

「俺は、君の全部が欲しい。どんな未来だって、ふたりで歩いていけるって思ってる。」

ああ、この人には抗えない。

どこまでも真っ直ぐで、どこまでも私を包み込もうとする。

私はきっともう、逃げられないくらい深く、玲央さんを好きになってしまっている。

「……うん。」

ただ小さく頷いて、彼に体を預ける。

そして結局、今日も私は、玲央さんの熱を──

その愛を、全部、受け取ってしまうんだ。

行為が終わって、私は呆然と天井を見つめていた。

何も考えられなかった。

ただ、じんわりと体の奥に残る熱と、どこかぽっかり空いた心の隙間を感じていた。

もう私は──
玲央さんの愛の証を、拒否することができない。

優しさも、誠実さも、全部本物だって分かっている。

でも、だからこそ怖い。

いつだって、子供ができるかもしれない状況。

セックスが、怖い。

愛されることが、怖い。

未来が変わってしまうのが、怖い。

「ひより? どうしたの?」

玲央さんが心配そうに私の顔を覗き込んできた。

その瞬間、私は彼の目を見つめながら、ぽろりと涙を零した。

「……赤ちゃん、できたかも。」

声が震えていた。

でも、伝えなきゃいけない気がして、なんとか絞り出した言葉だった。

玲央さんは、驚いたように目を見開いたあと、すぐに恥ずかしそうに笑った。

「……本当に?」

まるで自分の分身がこの世に生まれることが、ただ嬉しいとでも言うような、優しくて無邪気な笑顔だった。

「……怖いの。」

私は、かすれる声で呟いた。

言った瞬間、また涙があふれてきた。

心の奥からせり上がってきた不安を、もう隠すことができなかった。
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