15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第9章 誓いの言葉は、静かな夜に

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「私、まだ学生だし……将来のことだってちゃんと考えてたのに、全部急に変わってしまうのが怖くて……」

言いながら、自分のわがままさに泣きたくなった。

でも、これが今の私の本音だった。

玲央さんは黙って、私の頭をそっと引き寄せた。

何も言わず、ただ抱きしめてくれた。

「俺、どんな結果でも受け止める。」

玲央さんの声は、静かで、それでいて揺るぎない強さを持っていた。

彼の目を見れば分かる。ふざけてなんかいない。

言葉の一つ一つに、未来への覚悟が込められていた。

「無責任に、避妊しなかったわけじゃない。」

彼の瞳がまっすぐに私を射抜く。

その奥から、深い愛があふれていた。

「俺の愛情を、ひよりに残したいって思った。……ひよりが受け止めてくれるたびに、俺は男としての自信をもらってたんだ。」

その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられた。

私はただ、彼に甘えていただけじゃなかった。

彼もまた、私の存在で支えられていたんだ。

玲央さんは、そっと私の髪に手を伸ばし、優しく撫でてくれる。

まるで、不安ごと包み込むように。

「絶対に裏切らない。逃げない。」

その言葉の重さに、私は目を閉じた。

心の奥にあった小さな迷いが、少しずつほどけていくのを感じる。

「ひよりの人生を、俺に預けて。」

そう言って微笑んだ彼の顔は、どこまでも優しくて、真剣で。

私は、何かにすがるように彼の胸に顔をうずめた。

「……うん。」

小さく頷いたその声は、震えていたかもしれない。

けれどその瞬間、私ははっきりと分かった。

――この人となら、どんな未来でも、歩いていける。

翌日、玲央さんと一緒にスーパーへ買い出しに出かけた。

穏やかな午後の陽射しの中、カートの中にはいつもと変わらない食材。

パスタのソース、サラダ用の野菜、ミルク。

だけど私の心の中には、昨日からずっと、ざわざわと波が立っていた。

スーパーの隣にあるドラッグストア。

その前を通ったとき、玲央さんがふと私の手を握って、優しく言った。

「……行こっか。」

無理にとは言わなかった。でも、その一言で、私は小さくうなずいていた。

ドラッグストアの中は明るくて、人もまばらだった。

まるで何かを探すふりをして、自然を装いながら、私たちは妊娠検査薬の棚の前に立った。

パッケージがずらりと並んでいる。色とりどりの箱、説明文、価格表示。

どれがいいのかなんて分からない。目が泳ぐ。

「へえ、すごいね。スピード検査だって。」

玲央さんが、ふっと笑いながら一つの箱を手に取った。

その呑気な声に、私は思わず笑ってしまった。

「なんか……普通にお買い物してるみたいだね。」

「うん、ほんとに。」

そのやりとりが、逆に心を落ち着かせてくれる。

不安な気持ちを、少しだけやわらげてくれる空気だった。
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