15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第9章 誓いの言葉は、静かな夜に

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奥のロビーで、玲央さんがスーツ姿で立っていた。

その姿が、あまりにも“仕事モード”ではなく“男の顔”だったことに、私は一瞬、息を呑んだ。

「よく来てくれたね。」

私が近づくと、玲央さんは優しく笑いかけてくれた。

だけどその声は、いつもより少し低くて、何かを決意したような響きがあった。

「ん……?」

笑顔を返しながらも、胸の奥に不思議な緊張が走る。

「今日は、特別な夜にしよう。」

「……はいっ!」

反射的に答えたけれど、自分の声が少しだけ上ずっていたことに気づく。

そして次の瞬間、玲央さんはスッと手を挙げて、フロントから受け取った部屋のキーを見せた。

そのまま、私の手を引いて、エレベーターへと向かう。

無言のまま、二人で8階へ。

静かに上昇するエレベーターの中、私は無意識に手のひらを握りしめていた。

「……緊張してる?」

玲央さんが笑いながら私を見つめる。

「ううん、ちょっとだけ。」

扉が開くと、そこには落ち着いた絨毯の廊下。

部屋のドアを開けた瞬間、目の前に広がったのは──

大きな窓から見える夜景。

きらめく街の灯りが、水面のようにゆらゆらと広がっている。

「すごい……」

思わず、声が漏れた。

「気に入った?」

「うん……夢みたい。」

玲央さんは私の後ろからそっと抱きしめてくれた。

彼の腕の中で感じる体温。

それだけで、胸がいっぱいになっていく。

「ひより、こっち。」

手招きされた先に目をやると、部屋の奥──大きな窓際に、白いクロスのかかったダイニングテーブルが用意されていた。

「……ここ、ホテルの部屋だよね?」

思わず声が漏れた。

ベッドのあるスイートルームの一角に、まるでレストランのような食卓が整っているなんて、想像すらしていなかった。

「今日はここで、ディナーを過ごそう。」

玲央さんが微笑みながら言った。

その瞬間、タイミングを見計らったようにホテルスタッフが入ってきて、次々と手際よくセッティングを始める。

ナプキンが折られ、ワイングラスが並び、ひんやりとした前菜のプレートが運ばれてくる。

どれもが洗練されていて、美しく、少しだけ背筋が伸びる。

「初めてもよろしいでしょうか?」

そう尋ねたウェイターに、玲央さんが落ち着いた声で答えた。

「お願いします。」

その言葉と同時に、ゆったりとしたコース料理が始まった。

白いお皿に並んだ前菜は、サーモンのカルパッチョと季節の彩り野菜。

ソースが芸術的にかかっていて、食べるのがもったいないくらい。

「すごい……こんなの、食べたことない。」

フォークを手に取りながらも、私はまだ信じられない気持ちだった。

「今日は、ちゃんとしたいと思って。」

玲央さんはそう言って、優しく笑う。

ワイングラス越しに見えるその微笑みに、胸の奥がじんとあたたかくなった。
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