15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第9章 誓いの言葉は、静かな夜に

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玲央さんの声が、まっすぐ私の胸に届く。

今まで聞いたどんな言葉よりも、優しくて、誠実で、愛に満ちていた。

私は、思わず目を丸くした。

「あの、ええっと……結婚はまだ先でもいいって……言ってたよね?」

戸惑いながらも、心臓の鼓動が高鳴るのを抑えきれなかった。

すると玲央さんは、ふっと微笑んで言った。

「うん。でも、もうこのタイミングだと思った。」

「どうして……?」

「“ひよりの人生を俺に預けて”って言ったあの日から、俺の気持ちは変わってない。夢の途中だって構わない。ふたりで一緒に、ゆっくり未来を作っていけばいい。そのために──ちゃんと形にしたかったんだ。」

優しい声。温かい眼差し。
私の手を包む彼の手は、少しだけ熱を持っていた。

涙が、自然と滲んできた。

「……はい。」

その一言を口にした瞬間、世界が少しだけ明るくなった気がした。

玲央さんの顔が、ほっと緩んで、子どもみたいに嬉しそうに笑った。

そして私は、彼に指を預けた。

リングが薬指にすっとはまる。

まるで、最初からそこにあるべきものだったように。

そして時間が過ぎ、私は玲央さんの腕の中にいた。

シーツの中、肌と肌が触れ合う距離。

静かな鼓動と、少し早い呼吸。

まるで世界からふたりだけが切り取られたような、優しい夜だった。

「ひより、今までの中で……一番綺麗だよ。」

その言葉がくすぐったくて、嬉しくて、私は思わず顔を背けてしまった。

「……もう、言わないで。」

「俺を見つめて。」

玲央さんの声が、低く優しく響く。

そっと彼の瞳を見上げたその瞬間──

ああ、変わってない。

この人の瞳に、私は惹かれてしまったんだ。

あの日、初めて出会ったあの瞬間から。

まっすぐで、温かくて、どこか寂しさを秘めた眼差し。

それが、今は私だけを映している。

「誰よりも、幸せにする。」

囁くように言って、玲央さんは私の髪にそっとキスを落とした。

それだけで、胸がいっぱいになっていく。

再び、私の中で彼の熱がふくらんでいく。

深く、優しく、愛を確かめ合うように──

吐息が、かすかに部屋の空気を震わせる。

名前を呼ばれるたび、愛されている実感が心に染み込んでくる。

「ひより……俺の、大切な人……」

その言葉に、私はたまらなくなって、玲央さんをぎゅっと抱きしめた。

「……うん。私も、玲央さんが大切。」

涙のような温かさが、静かに胸を満たしていく。

ふたりの未来が、どんな道になるか分からなくても。

この夜だけは、何よりも確かに──ふたりが繋がっているということだけを、信じた。

そして夜は静かに、更けていった。
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