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第10章 15歳差の恋、いま永遠になる
⑨
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「さて──皆さまご注目ください。新郎新婦の年齢差は、なんと15歳。では、そんなおふたりがどのようにして出会ったのか……ご覧いただきましょう。」
その言葉と同時に、会場の照明が少し落ちる。
スクリーンに、突然見覚えのある風景が映し出された。
「……えっ?」
思わず、玲央さんと顔を見合わせる。
そこに映っていたのは──あの、交差点。
あの事故があった、雨の日の交差点だった。
画面が切り替わると──なぜか始まる、“友人たちによる再現VTR”。
「ちょっと待って……これ、誰が撮ったの⁉」
「懐かしい……」
思わず笑ってしまう。
VTRには、あの雨の日。
傘をさして、顔をうつむけて歩く“私役”の友人。
横断歩道に差しかかると、急に走り出した車。
そして、咄嗟にその“私”を庇う“玲央さん役”の友人──少し筋肉多め。
会場には、笑いと「おお~」という歓声が広がる。
「交差点での偶然の出会いが、ふたりの運命を動かしました。たった一瞬の“守りたい”が、人生を変えたのです。」
ナレーションまで入っている。
しかも、声がやけに感動的。
「これ……海くんの演出?」
「絶対そう。」
玲央さんが小さく呟いた。
弟・海くんの顔が、ちらっと遠くのゲスト席でドヤ顔しているのが見えた。
映像はやがて、ふたりが手を取り合うシーンで幕を閉じる。
「……そして今日、この瞬間が訪れました。」
会場の照明が戻る。
大きな、大きな拍手。
私は玲央さんの方をそっと見た。
彼も照れくさそうに笑っている。
でも、その目の奥には──
出会ったあの日のままの、まっすぐな想いがあった。
あの一瞬がなければ。
あの交差点がなければ。
今、こうして隣にいることはなかったかもしれない。
ふたりだけの“はじまり”が、今日この場で、皆の記憶に刻まれた。
披露宴も終盤にさしかかり、夜景が窓の向こうにきらめいていた。
グラスの氷が静かに音を立て、あたたかな余韻だけが流れている。
私はそっと玲央さんの隣に腰を寄せ、彼の耳元で囁いた。
「ねえ、玲央さん。」
「ん?」
静かに微笑む横顔が、たまらなく愛しい。
「出会ってくれて、ありがとう。」
その言葉に、玲央さんはふと目を伏せて、やがてゆっくりと私を見つめた。
「……こちらこそ。出会ってくれて、ありがとう。」
どちらからともなく、指先が絡む。
もう言葉はいらなかった。
照明がゆるやかに落ち、まるでふたりだけの世界が、会場の中にそっと浮かびあがったようだった。
その瞬間、心が確信する。
──この人となら、きっと、どんな未来も怖くない。
そっと頬を寄せると、玲央さんの温もりが私を包んだ。
この人に出会えて、本当によかった。
そして私たちの愛は、今この時から──
永遠になった。
ー End -
その言葉と同時に、会場の照明が少し落ちる。
スクリーンに、突然見覚えのある風景が映し出された。
「……えっ?」
思わず、玲央さんと顔を見合わせる。
そこに映っていたのは──あの、交差点。
あの事故があった、雨の日の交差点だった。
画面が切り替わると──なぜか始まる、“友人たちによる再現VTR”。
「ちょっと待って……これ、誰が撮ったの⁉」
「懐かしい……」
思わず笑ってしまう。
VTRには、あの雨の日。
傘をさして、顔をうつむけて歩く“私役”の友人。
横断歩道に差しかかると、急に走り出した車。
そして、咄嗟にその“私”を庇う“玲央さん役”の友人──少し筋肉多め。
会場には、笑いと「おお~」という歓声が広がる。
「交差点での偶然の出会いが、ふたりの運命を動かしました。たった一瞬の“守りたい”が、人生を変えたのです。」
ナレーションまで入っている。
しかも、声がやけに感動的。
「これ……海くんの演出?」
「絶対そう。」
玲央さんが小さく呟いた。
弟・海くんの顔が、ちらっと遠くのゲスト席でドヤ顔しているのが見えた。
映像はやがて、ふたりが手を取り合うシーンで幕を閉じる。
「……そして今日、この瞬間が訪れました。」
会場の照明が戻る。
大きな、大きな拍手。
私は玲央さんの方をそっと見た。
彼も照れくさそうに笑っている。
でも、その目の奥には──
出会ったあの日のままの、まっすぐな想いがあった。
あの一瞬がなければ。
あの交差点がなければ。
今、こうして隣にいることはなかったかもしれない。
ふたりだけの“はじまり”が、今日この場で、皆の記憶に刻まれた。
披露宴も終盤にさしかかり、夜景が窓の向こうにきらめいていた。
グラスの氷が静かに音を立て、あたたかな余韻だけが流れている。
私はそっと玲央さんの隣に腰を寄せ、彼の耳元で囁いた。
「ねえ、玲央さん。」
「ん?」
静かに微笑む横顔が、たまらなく愛しい。
「出会ってくれて、ありがとう。」
その言葉に、玲央さんはふと目を伏せて、やがてゆっくりと私を見つめた。
「……こちらこそ。出会ってくれて、ありがとう。」
どちらからともなく、指先が絡む。
もう言葉はいらなかった。
照明がゆるやかに落ち、まるでふたりだけの世界が、会場の中にそっと浮かびあがったようだった。
その瞬間、心が確信する。
──この人となら、きっと、どんな未来も怖くない。
そっと頬を寄せると、玲央さんの温もりが私を包んだ。
この人に出会えて、本当によかった。
そして私たちの愛は、今この時から──
永遠になった。
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