15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒

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第10章 15歳差の恋、いま永遠になる

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「さて──皆さまご注目ください。新郎新婦の年齢差は、なんと15歳。では、そんなおふたりがどのようにして出会ったのか……ご覧いただきましょう。」

その言葉と同時に、会場の照明が少し落ちる。

スクリーンに、突然見覚えのある風景が映し出された。

「……えっ?」

思わず、玲央さんと顔を見合わせる。

そこに映っていたのは──あの、交差点。

あの事故があった、雨の日の交差点だった。

画面が切り替わると──なぜか始まる、“友人たちによる再現VTR”。

「ちょっと待って……これ、誰が撮ったの⁉」

「懐かしい……」

思わず笑ってしまう。

VTRには、あの雨の日。

傘をさして、顔をうつむけて歩く“私役”の友人。

横断歩道に差しかかると、急に走り出した車。

そして、咄嗟にその“私”を庇う“玲央さん役”の友人──少し筋肉多め。

会場には、笑いと「おお~」という歓声が広がる。

「交差点での偶然の出会いが、ふたりの運命を動かしました。たった一瞬の“守りたい”が、人生を変えたのです。」

ナレーションまで入っている。

しかも、声がやけに感動的。

「これ……海くんの演出?」

「絶対そう。」

玲央さんが小さく呟いた。

弟・海くんの顔が、ちらっと遠くのゲスト席でドヤ顔しているのが見えた。

映像はやがて、ふたりが手を取り合うシーンで幕を閉じる。

「……そして今日、この瞬間が訪れました。」

会場の照明が戻る。

大きな、大きな拍手。

私は玲央さんの方をそっと見た。

彼も照れくさそうに笑っている。

でも、その目の奥には──

出会ったあの日のままの、まっすぐな想いがあった。

あの一瞬がなければ。

あの交差点がなければ。

今、こうして隣にいることはなかったかもしれない。

ふたりだけの“はじまり”が、今日この場で、皆の記憶に刻まれた。

披露宴も終盤にさしかかり、夜景が窓の向こうにきらめいていた。

グラスの氷が静かに音を立て、あたたかな余韻だけが流れている。

私はそっと玲央さんの隣に腰を寄せ、彼の耳元で囁いた。

「ねえ、玲央さん。」

「ん?」

静かに微笑む横顔が、たまらなく愛しい。

「出会ってくれて、ありがとう。」

その言葉に、玲央さんはふと目を伏せて、やがてゆっくりと私を見つめた。

「……こちらこそ。出会ってくれて、ありがとう。」

どちらからともなく、指先が絡む。

もう言葉はいらなかった。

照明がゆるやかに落ち、まるでふたりだけの世界が、会場の中にそっと浮かびあがったようだった。

その瞬間、心が確信する。

──この人となら、きっと、どんな未来も怖くない。

そっと頬を寄せると、玲央さんの温もりが私を包んだ。

この人に出会えて、本当によかった。

そして私たちの愛は、今この時から──
永遠になった。


ー End -
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