家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第6部 公爵家の没落、援助の申し出

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「いえ、そうではなく、今日は――借金を止めるよう、お伝えする為に来ました。」

セドリックが静かに、だがはっきりと言った。

その言葉に、お父様の眉がピクリと動いた。

「……何だと? ルシアに、結婚をやめろとでも言うのか?」

「そうではありません。無理な縁談ではなく、ルシア自身が誰かを愛して、恋愛結婚するという道もあるのでは、と申し上げているのです。」

「馬鹿な!」

お父様の声が応接室に響いた。

「どこの馬の骨とも分からん男と恋愛などしてみろ。もしも相手が貧乏人だったらどうする? 金も地位もない男に、ルシアをやれるか!」

その頑なな物言いに、私は心が苦しくなった。

今、この家に地位も金も残っていないのに。なのにまだ、見栄と体裁にすがっている――。

セドリックの表情は変わらなかったが、そのまなざしには、諦めと悲しみがにじんでいた。

それでも彼は、ゆっくりと言葉を重ねる。

「伯爵としてではなく、一人の兄として、彼女の幸せを願っているのです。」

その言葉を待っていたかのように、今度はルシアが応接室に入って来た。

彼女の衣服は、地味なものになっていた。

「さすがは、グレイバーン伯爵。」

呆れた。

この前まで、伯爵家を馬鹿にしていたのに。

「そうだわ。いいアイデアがあるの。」

ルシアはまるでお茶会で冗談を言うかのように、楽しげに笑った。

「お姉様と伯爵が離婚して、お姉様の結婚相手を募るの。」

「……何を言っているの?」

私は、妹が狂ったように思えた。

「それで、私とグレイバーン伯爵が結婚するの。そうすればグレイバーン伯爵家とエルバリー公爵家のつながりは絶えないし、私は結婚できるし、お姉様ももっと幸せに……」

信じられないほど明るい声で、ルシアは語る。

まるで天才的な名案を思いついたかのように。

ふざけないで。

そう言おうとした、その時だった。

「ふざけるな!」

怒声が響いた。セドリックだった。

ルシアも私も驚いて、彼を見た。

あの穏やかで優しいセドリックが、顔をしかめ、怒りを露わにしていた。

「クラリスは、私の大切な妻だ。君がどう言おうと、決して手放す気はない。」

「でも、お姉様より私の方が――」

「やめろ!」

彼の怒りは、本物だった。ルシアの笑顔は凍りつき、その場に立ち尽くした。

「クラリスは、僕の最愛の妻だ。彼女を手放してまで、君と結婚する理由がどこにある?」

ルシアは信じられないといった顔で、目を大きく見開いた。

「だって……私の方が、公爵令嬢よ。お姉様よりも、ずっと……」
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