婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒

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6.財政悪化

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そしてまた町に戻ると、畑が枯れていた。

大地はひび割れ、かつて緑が広がっていた村には、もはや息づく命の気配すらない。

私がいない間に、土の汚染はますます進み、作物が育たなくなったという。

そして……餓死者が出たと、聞かされた。


「わたしの……せいで……」

膝が崩れ、地面に手をついた。目の前の現実が、重すぎて息もできない。

「違う。アーリンのせいじゃない。」

そっと肩に触れるグレイブの温もりに、涙が溢れた。けれど、分かってる。

私が牢に囚われていたあいだに、どれほど多くの人が苦しんだのか。


なぜ私は、あんな場所に閉じ込められなければならなかったの?

なぜクリフは、そしてミーシャは、私の力を踏みにじったの?

「……悔しい……!」

こぼれる涙を止められない。苦しむ人々の姿が脳裏に焼きついて離れない。

私はただ、誰かのために力を使いたかっただけなのに――。

グレイブの腕に縋りながら、私はこの涙を誓いに変えると決めた。

この大地を、必ず癒す。すべてを取り戻す。私自身の手で。

こんなにも多くの人が、飢えて命を落としているというのに──

なぜ何も、変わっていないの?

私は土に膝をつきながら、乾いた風に吹かれる村を見回した。子どもたちの笑顔も、母親の歌声も、そこにはない。

「どうして……」

思わず声が漏れた。


私が牢に入れられていた数週間で、状況は最悪にまで悪化していた。

それなのに、国は何の政策も打ち出していない。

クリフや……セシリーは、何をしているの?


もう我慢できなかった。

私はグレイブに制止されるのも聞かず、まっすぐに馬を駆った。向かうは、宮殿。

自分が追放された場所へ、再び足を踏み入れるのは怖い。でも──

「見過ごすわけにはいかない……!」

国が沈んでいくのを、ただ眺めているなんて、私にはできなかった。

民の命は、数字じゃない。想いも、痛みも、そこにはある。

だから私は、立ち向かう。たとえ、誰に嘲られても。

宮殿の門をくぐった瞬間、かつての日々が胸をよぎった。けれど感傷に浸っている暇などない。

私は足早に廊下を進む。

すると、前方から豪奢なドレスをまとい、絢爛な笑みを浮かべたセシリーが現れた。


「まあ、アーリン。珍しいわね。」

かつては「お姉様」と呼んでいた面影も、今はもうない。

「セシリー、クリフを呼んでちょうだい。」私は淡々と告げる。

ふと目に入ったのは、セシリーの首元や手元に光る、

いくつもの宝石。ルビー、サファイア、エメラルド……まるで宝石箱をひっくり返したよう。


「その宝石……どこで手に入れたの?」

「綺麗でしょう? 最近手に入れたの。今の私に似合うと思わない?」

自慢げに笑うその顔が、あまりに無神経で、胸が詰まった。

「信じられない……町では餓死者が出ているのよ?」

私の声は怒りで震えていた。

人が飢えて苦しんでいる中で、王妃が宝石を誇る国なんて──

どこで道を違えたの?
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