婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒

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6.財政悪化

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「セシリー、もっと国民を見なさい。」

私の声に、セシリーの眉がピクリと動く。かつてあんなにも純粋だった妹が、まるで別人のように冷たくなっていた。

「一人だけ贅沢をしている王妃など、ただのお飾りじゃないの。」

そう言った瞬間、彼女はふいと私から視線を逸らし、侮蔑するように唇を歪めた。

「黙ってて。ああ、みすぼらしい。私、そういう人大嫌いなの。」

怒りで拳が震えるのを感じる。思わず言葉が口をついた。

「セシリー、姉として……」

「私は王妃よ!」彼女の声が鋭く響き渡る。視線には威厳と傲慢が宿り、もはや姉妹としての情は見えなかった。

「誰の指図も受けないわ!」

その言葉が胸を切り裂く。間違っている、

そう思っても、彼女は今や王妃――正しさより、立場が力を持つ世界。

私はただ、唇を噛みしめるしかなかった。

国王であるクリフは、愛人になることを拒めば濡れ衣の罪で牢屋に入れ、王妃であるセシリーは宝石に心を奪われ、民の苦しみなど見向きもしない。

私は膝を抱え、静かに思い詰めていた。

この国はもう、内側からは変えられない。ならば、外から風を吹かせるしかない。

「こうなったら、あの人に頼むしかない……」

かつてグレイブとの戦で敗れはしたものの、すべてが終わったあと、私たちを憎まず、むしろ労いの言葉をかけてくれた隣国のベンジャミン王子。

正義感が強く、民を想うその姿を、私は忘れられずにいた。

私は震える手で手紙を綴った。

「どうか、この国を救ってください。あなたの力が必要です――」

一縷の望みにすがるように、私はその手紙を封じた。

未来を変えるのは、もしかしたらこの一通の手紙かもしれないと、願いを込めて。

手紙の返信は、わずか三日で私の元へ届いた。

隣国とはいえ、あまりにも早い。

私の切迫した思いを、ベンジャミン王子は感じ取ってくれたのだろう。開封する手が、自然と震える。

【親愛なる友へ
事情は理解した。
私でよければ、あなたの助けになりたい。
多くの食料をすぐに準備するのは難しいが、心を砕こう。】

その文字を読んだ瞬間、胸が詰まって息が止まりそうになった。

「親愛なる友」と――そう綴ってくれたその一文だけで、どれほど心が救われたか。

私はもう一人じゃない。

誰かが、遠く離れた場所でも私とこの国を想ってくれている。

しかも、食料まで準備しようとしてくれているなんて……ベンジャミン王子の誠実な優しさが、手紙から溢れていた。

「ベンジャミン王子……ありがとう……」

自然と頬を伝う涙を拭いながら、私は彼に深く頭を下げた。

希望の灯が、確かにともった。
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