婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒

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7、救出

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「処刑だと……?」信じられない言葉が耳に入った瞬間、私の体から血の気が引いた。

「ああ……」崩れ落ちるようにその場に膝をついた。

クリフが、あのクリフが――グレイブを処刑にすると決めたなんて。

「どうして……」

私の唇から、震える声が漏れた。グレイブは、あなたを信じていたのよ。

何度も剣を交え、あなたの盾になり、あなたの心に忠誠を誓ったのに。

クリフの目には、哀れみも後悔も浮かんでいなかった。ただ、冷たく断罪を告げた、国王としての目だった。


「それが……あなたの答えなの……?」

信じた者を切り捨てるなんて。愛した私を閉じ込め、信じてくれた彼を捨てるなんて。

私は一体、何を信じて生きていけばいいのか分からなくなっていた。

「グレイブ……ごめんなさい……私が、弱かったから……」

目の前が滲み、涙が止まらなかった。こんな結末を、誰が望んだというの――。


私は震える足で、再び宮殿を訪れた。胸の奥は張り裂けそうだった。信じたくなかった。けれど、事実は変わらない。

そこに立っていたのは、もう優しい面影を失った、冷たいクリフだった。

「どうして……どうしてグレイブを処刑に決めたの?」

必死に問いかける私に、彼はフッと鼻で笑った。

「当たり前だろう。俺のアーリンを奪った。」

その言葉に、心が凍りついた。

「……奪った?」

「そうさ。あいつは俺からお前を奪った。俺の許しもなく、自室に押し入り、お前を抱きかかえた。そんな奴を、生かしておけるはずがない。」

その瞳は狂気すら帯びていた。愛じゃない。これは執着だ。

「あなたが壊したのよ……私と、あなたと、グレイブの信頼を……!」

声を張る私を、クリフは笑いながら見下ろしていた。

「お前は、俺だけを見ていればいいんだよ、アーリン。」

心が叫んでいた。――これはもう、かつてのクリフじゃない。

「あなたの愛人になるわ。」

自分の口から出たその言葉が、まるで刃のように胸を貫いた。けれど、グレイブを救えるなら――私は、どんな嘘でもつける。

「嘘だな。」

クリフの瞳が細くなる。彼の声は冷たく、どこか私を試すようだった。

「嘘じゃない!」

震える声で叫ぶ。心の奥が軋む。私は今、自分のすべてを踏みにじろうとしている。けれど、あの人の命には代えられない。

「じゃあ、証拠を見せろ。」

クリフが挑むように言った瞬間、私はゆっくりと歩み寄った。恐怖に背を押されながら、それでも足を止めなかった。

「アーリン……」

彼が名を呼ぶ前に、私はその胸に手を置き、そっと唇を重ねた。涙が頬を伝い落ちた。温もりを感じるはずのキスなのに、胸の内は凍てついていく。

――お願い。グレイブを助けて。

心の中で、何度も何度も祈っていた。
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