婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒

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9、友好

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「分かった。アーリン嬢を見れば、国王がどれほど慈悲深い人であるかがよく分かるよ。」

ベンジャミン王は穏やかにうなずき、私に優しい視線を向けた。

その目に、争いを望んでいないことがはっきりと映っていた。

私は胸がいっぱいになった。

長い間、戦の影に怯えていたけれど、今はもう争いは終わるのだと信じられた。


「ベンジャミン王、これから我が宮殿にお越しください。食料調達のお礼もしたいのです。」

クリフの言葉に、クリフとベンジャミン王が穏やかに見つめ合い、互いに手を取り合った。

「了解した。」

ベンジャミン王の声に、重みと誠意が込められていた。

その瞬間、私は思わず大粒の涙をこぼした。

これほど安堵したのは初めてだった。

「よかった……本当によかった。」

心の底からそう呟いた。

これからの未来に、希望の光が差し込んだ気がした。

「本当にアーリン嬢は大したものだ。」

ベンジャミン王が私の肩をしっかりと掴んだ。

その温かさに、思わず心が震えた。

「その通りだ。」

クリフも笑みを浮かべながら、私の背中を力強く叩いた。

その二人の目には、誇りと感謝が宿っているように見えた。

「どうして私が?」

思わず問いかけると、二人は顔を見合わせて笑い合った。

「二つの国を友好に導いたのだからな。」

ベンジャミン王の言葉に、胸が熱くなった。

「さすがは私の婚約者。王妃になってもおかしくない人だ。」

クリフの優しい言葉に、私は顔を真っ赤にして照れてしまった。

二人の間にある固い絆と信頼。

それを感じながら、私はこれから先の未来に希望を抱いた。

私の存在が、国と人々の架け橋になれるのなら、それ以上の喜びはないと思った。

やがて、宮殿に二人の王が到着した。

「国王!」

無事に戻ったクリフの姿を見て、兵士たちも使用人たちも、誰もが感激に満ちた声をあげた。

彼の帰還は、まさに国の安堵そのものだった。

「ベンジャミン王……!」

年配の大臣がその姿を見て驚愕の声を上げる。

「まさか、若き隣国の王がこの宮殿にお越しくださるとは!」

「そんなに歓迎してくれるのか。来てよかったな。」

ベンジャミン王は穏やかな笑みを浮かべて答え、周囲の緊張を一気に解いた。

まるでその場の空気まで柔らかくなるような、優しい笑みだった。


その時だった――

「クリフ……」

一際震えた声が響いた。

セシリー王妃だ。

彼女は人目も憚らず、涙を溜めた目でクリフに駆け寄ってきた。

かつての誤解、傷ついた心、すれ違い――それらすべてを流すような涙だった。
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