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プロローグ(4)
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お互いの息遣いが徐々におさまってくると、優しく腕枕をされた。コロンと汗の匂いが鼻腔をつく。
「感度がいいね。とても気持ちがよかったよ。イク時の膣の締まりに感動した」
ああ、残念だ。こんなピロートークは期待していない。口がへの字になる。
「あれ、キミはよくなかった。そんなはずないよな。あんなに感じてたのに。ぐちゃぐちゃに濡れてたのは、演技?ホントは物足りなかった?」
モンモンとする。優しく髪をなで、可愛いとか、好きとかいうのが王道でしょう?
やった後悔はない。だけど。
まあ、こんな奴とはわかっていた。1回やられて終わり。片思いがこんなカタチで終わるなんて。嘘でもいいから、今は恋人同士のような囁きが欲しかった。
「少し休んだら2回戦行こうか。今度は満足させるから、機嫌直して」
狙っているのか、はずしているのか、額にキスをしながらのたまう。あいてる方の手は胸をなでまわしている。
ああ、唇も手もこんなに優しいのに。黙ってれば最高なのになぁ。人間としては尊敬できるのに、男としてはクズ!!一夜の恋の余韻くらい与えてくれてもいいんじゃない。
「先生はどうして私を抱いたの」
どうせ、抱きたかったから、とか言うんだろうな。今夜はやりたかったからとか。
嫌われてはいないと思う。だからといって特別というわけではないだろう。
いいとこ、セフレどまりかな。どうしよう。セフレで我慢する?
わたしって、ただのバカなの。
「キミもありきたりの質問をするねぇ。その手の質問てさあ、『私と仕事と、どっちが大事なの』みたいだよね。意味がわかんない。そういうこと聞く人多いけどさ」
そりゃ先生に一度抱かれたら、聞いてみたくもなるだろう。真面目な女子大生や結婚適齢期の女性だったら、先のことを確認したくもなるよ。
「ふたりはセックスしたくなったからした!それじゃ、だめなの?」
最低!このクズ!クズ男とわかっているのにセフレでもいいかな。と思っちゃう。
「だって、わたしの一方通行の片思いだと思うと悲しくて」
涙があふれてきた。もう、2回戦なんか無理!おうちに帰ろうかな。終電はまだ間に合うだろうし。
まぶたにキスをされ、涙を丁寧に舌ですくいとられた。
「何で泣くの。俺、傷つけた?」
「先生のバカ、バカ」涙がジワッとまたあふれた。「でももっとバカはわたし!」
胸をグーでポコポコ叩くと手首をつかまえられた。
「バカじゃないよ」
伸は抱きしめながら、優しく髪にキスをした。
「どうしてバカだと思うんだ」
「だって、先生にとってはワンナイトラブ。今夜の相手がたまたまわたしだっただけ」
「こんなに大事にしているのに、そう思うんだ。心も身体もキミを向いているんだけどね。どうしてワンナイトって思うんだろう」
甘くてとろけそうなキスの雨が降ってきた。満たされる。さっきまでの悲しみは簡単に消え、暖かい気分でいっぱいになる。
「伝わった?表情が柔らかくなったよ。キミはまだ若いし、魅力的だから身体だけのセックスの経験はないだろう」
えっ?
「興味のない相手とのセックスは、マスターベーションと同じ。余韻も何もない。お互いにね。俺といてそう感じる?」
全身で愛を感じたのは事実だ。熱っぽい視線に探るような指先。どれもこれも愛の行為にふさわしい。
先生の特別な誰かになれる?
「じゃあ、またデートしてくれるんですか」
「キミさえ良かったらね」
「セフレですか?」
「セックス以外の時間も共有したいと思ってるよ」
うん?つきあうってこと?
「彼氏になってくれるんですか?」
「う~ん、たぶんならない」
玉砕した。ツーンと鼻の奥が痛くなり、風邪をひいたような声になってきた。
「彼女になりたいの?」
セフレより特別感はあるけど、ポリアモリー?ハーレムの中のone of them?混乱してくる。
どうしたらいいの?わたしはどうしたいの?
「俺は現代の男女におけるステディの関係はのぞまない。欺瞞だらけの、幸せ芝居だらけの、本能と進化を無視した現代のシステムにおける男女関係にまったく興味がない」
菜穂はわからない。先生は何をいいたいんだろう。男と女は好き合ってセックスして結婚して子供ができて、一緒に老いていくんじゃないの?かけがえのない家族は人生の喜びなんでしょう?うちの両親だってなんだかんだで幸せそうだし。
「先生は自由でいたいんですね。一人の人に縛られたくない。自分が一番かわいいんですね」
「何いってるの?みんな適当にごまかしているけど、それが人間の本質なんじゃないのか。どこもかしこもパワーバランスがいびつで、誰かがどこかで合わせている。我慢している。得する人間、損する人間。支配する者。搾取される者。愛という宗教にまるめこまれてるだけだ」
先生は深いため息をついて、「引き返すなら今だよ。キミの考える普通の恋愛に俺は向かない。キミしだいで、ワンナイトラブに終わる」
なんかよくわからないけど、引導を渡された。選択権は自分にあるような、ないような。
『愛という宗教』。ひっかかる。誰かを好きになるのは自然の摂理。ふとしたはずみで心が揺れ、気がつくと夢中でその人を想う。そこを起点に人間の闇が次々とあぶりだされる。聖人にも悪魔にもなってしまう、愛とは何だろう。
恋バナには事欠かないし、いろんな情報は洪水のように押し寄せる。メンヘラ、ヤンデレ、ストーカー、ロミオメール、親ガチャ、毒親。始まりは確かに愛だったのに。
「先生、それ、いったん保留にしといてもらえる?」
「先送りときたか。いいさ。べつに急いでないし。明日は授業があるのか?」
「最後の授業があるけど、午後から。先生は」
「俺は昼前までに行けばいいだけ。一限の授業は講師も生徒もつらいよな」
はあ、こっちは4月から毎日1限なんですけど。
あっというまの学生生活だったなぁ。おばあちゃんが、人生なんてあっという間よ、なんて言ってたけど、きっとそうなんだろう。これからどんな人生が待っているんだろう。まだいっぱい時間は残っているんだろうけど、どうやって生きていくんだろう。ちゃんと生きていけるかなぁ。
好きな人ができて結婚して子供をつくって家を買って定年後に旅行に行く。
ずっと独身で趣味を満喫しつつ、定年後に静かに暮らす。
要約するとヒトの一生なんてそんなもんなんだろうな。その中にいっぱいドラマがあるんだけど。
どんな老後が待っているんだろう。ちょっと早いけど。
「なあ、そろそろ2回戦いかないか?」
「感度がいいね。とても気持ちがよかったよ。イク時の膣の締まりに感動した」
ああ、残念だ。こんなピロートークは期待していない。口がへの字になる。
「あれ、キミはよくなかった。そんなはずないよな。あんなに感じてたのに。ぐちゃぐちゃに濡れてたのは、演技?ホントは物足りなかった?」
モンモンとする。優しく髪をなで、可愛いとか、好きとかいうのが王道でしょう?
やった後悔はない。だけど。
まあ、こんな奴とはわかっていた。1回やられて終わり。片思いがこんなカタチで終わるなんて。嘘でもいいから、今は恋人同士のような囁きが欲しかった。
「少し休んだら2回戦行こうか。今度は満足させるから、機嫌直して」
狙っているのか、はずしているのか、額にキスをしながらのたまう。あいてる方の手は胸をなでまわしている。
ああ、唇も手もこんなに優しいのに。黙ってれば最高なのになぁ。人間としては尊敬できるのに、男としてはクズ!!一夜の恋の余韻くらい与えてくれてもいいんじゃない。
「先生はどうして私を抱いたの」
どうせ、抱きたかったから、とか言うんだろうな。今夜はやりたかったからとか。
嫌われてはいないと思う。だからといって特別というわけではないだろう。
いいとこ、セフレどまりかな。どうしよう。セフレで我慢する?
わたしって、ただのバカなの。
「キミもありきたりの質問をするねぇ。その手の質問てさあ、『私と仕事と、どっちが大事なの』みたいだよね。意味がわかんない。そういうこと聞く人多いけどさ」
そりゃ先生に一度抱かれたら、聞いてみたくもなるだろう。真面目な女子大生や結婚適齢期の女性だったら、先のことを確認したくもなるよ。
「ふたりはセックスしたくなったからした!それじゃ、だめなの?」
最低!このクズ!クズ男とわかっているのにセフレでもいいかな。と思っちゃう。
「だって、わたしの一方通行の片思いだと思うと悲しくて」
涙があふれてきた。もう、2回戦なんか無理!おうちに帰ろうかな。終電はまだ間に合うだろうし。
まぶたにキスをされ、涙を丁寧に舌ですくいとられた。
「何で泣くの。俺、傷つけた?」
「先生のバカ、バカ」涙がジワッとまたあふれた。「でももっとバカはわたし!」
胸をグーでポコポコ叩くと手首をつかまえられた。
「バカじゃないよ」
伸は抱きしめながら、優しく髪にキスをした。
「どうしてバカだと思うんだ」
「だって、先生にとってはワンナイトラブ。今夜の相手がたまたまわたしだっただけ」
「こんなに大事にしているのに、そう思うんだ。心も身体もキミを向いているんだけどね。どうしてワンナイトって思うんだろう」
甘くてとろけそうなキスの雨が降ってきた。満たされる。さっきまでの悲しみは簡単に消え、暖かい気分でいっぱいになる。
「伝わった?表情が柔らかくなったよ。キミはまだ若いし、魅力的だから身体だけのセックスの経験はないだろう」
えっ?
「興味のない相手とのセックスは、マスターベーションと同じ。余韻も何もない。お互いにね。俺といてそう感じる?」
全身で愛を感じたのは事実だ。熱っぽい視線に探るような指先。どれもこれも愛の行為にふさわしい。
先生の特別な誰かになれる?
「じゃあ、またデートしてくれるんですか」
「キミさえ良かったらね」
「セフレですか?」
「セックス以外の時間も共有したいと思ってるよ」
うん?つきあうってこと?
「彼氏になってくれるんですか?」
「う~ん、たぶんならない」
玉砕した。ツーンと鼻の奥が痛くなり、風邪をひいたような声になってきた。
「彼女になりたいの?」
セフレより特別感はあるけど、ポリアモリー?ハーレムの中のone of them?混乱してくる。
どうしたらいいの?わたしはどうしたいの?
「俺は現代の男女におけるステディの関係はのぞまない。欺瞞だらけの、幸せ芝居だらけの、本能と進化を無視した現代のシステムにおける男女関係にまったく興味がない」
菜穂はわからない。先生は何をいいたいんだろう。男と女は好き合ってセックスして結婚して子供ができて、一緒に老いていくんじゃないの?かけがえのない家族は人生の喜びなんでしょう?うちの両親だってなんだかんだで幸せそうだし。
「先生は自由でいたいんですね。一人の人に縛られたくない。自分が一番かわいいんですね」
「何いってるの?みんな適当にごまかしているけど、それが人間の本質なんじゃないのか。どこもかしこもパワーバランスがいびつで、誰かがどこかで合わせている。我慢している。得する人間、損する人間。支配する者。搾取される者。愛という宗教にまるめこまれてるだけだ」
先生は深いため息をついて、「引き返すなら今だよ。キミの考える普通の恋愛に俺は向かない。キミしだいで、ワンナイトラブに終わる」
なんかよくわからないけど、引導を渡された。選択権は自分にあるような、ないような。
『愛という宗教』。ひっかかる。誰かを好きになるのは自然の摂理。ふとしたはずみで心が揺れ、気がつくと夢中でその人を想う。そこを起点に人間の闇が次々とあぶりだされる。聖人にも悪魔にもなってしまう、愛とは何だろう。
恋バナには事欠かないし、いろんな情報は洪水のように押し寄せる。メンヘラ、ヤンデレ、ストーカー、ロミオメール、親ガチャ、毒親。始まりは確かに愛だったのに。
「先生、それ、いったん保留にしといてもらえる?」
「先送りときたか。いいさ。べつに急いでないし。明日は授業があるのか?」
「最後の授業があるけど、午後から。先生は」
「俺は昼前までに行けばいいだけ。一限の授業は講師も生徒もつらいよな」
はあ、こっちは4月から毎日1限なんですけど。
あっというまの学生生活だったなぁ。おばあちゃんが、人生なんてあっという間よ、なんて言ってたけど、きっとそうなんだろう。これからどんな人生が待っているんだろう。まだいっぱい時間は残っているんだろうけど、どうやって生きていくんだろう。ちゃんと生きていけるかなぁ。
好きな人ができて結婚して子供をつくって家を買って定年後に旅行に行く。
ずっと独身で趣味を満喫しつつ、定年後に静かに暮らす。
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