大日本帝国、アラスカを購入して無双する

【伊藤博文・勝海舟】イギリスに追いつけ、追い越せ

　伊藤博文は西郷隆盛と勝海舟の二人の将軍を一時的に帰国させていた。三人で世界地図を囲みこむ。島国である大日本帝国の発展のためには海路の確保が必須だ。いわゆる「シーパワー」というものだ。今はイギリスが制海権を持っている。我が国も追いつかなくてはならない。


「それで、次は中米がターゲットでいいか？　何か問題点は？」


「いいえ、ありません。陸軍の活躍の場がないのが残念ですが……」と西郷隆盛。


「そう落ち込むな。海軍が勝ったら、南アメリカへ進出する足がかりになる。そうなれば、今度は陸軍の番だ」


　勝海舟はそう言うものの、西郷隆盛を馬鹿にしたような口調だった。


「お前、黙っていれば――」


　西郷隆盛が拳を振り上げる。


「そこまでだ！　身内で喧嘩してどうする。勝、中米のなかでもパナマをわが領土にするのが最大の目的だ。それ以外に欲張るなよ」


「当たり前です」


　勝海舟はそう返したが、伊藤博文は不安になった。



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　勝海舟はパナマを目の前にすると、物足りなさを感じた。あまりにも敵軍が貧弱すぎる。これでは戦争とすら言えない。赤子の手をひねるようなものだ。伊藤博文からは釘を刺されたが、パナマを降伏させたら、ついでに南アメリカに寄ってみるのもいいかもしれない。上手くいけば奇襲で勝つことができる。


「勝先生、そんなこと考えちゃ駄目ですよ。目の前の戦に集中しないと」


　それは愛弟子である坂本龍馬からの言葉だった。どうやら顔に出ていたらしい。弟子からいさめられる日が来るなんて思いもしなかった。いや、弟子が成長したのだ、素直に喜ぼう。


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　伊藤博文は勝海舟からの連絡を受けてホッとした。無茶はしなかったようだ。喧嘩早い勝海舟にしては珍しい。これで、大日本帝国はパナマ海峡という要地を得た。これで、ヨーロッパへの海路を開いたのだ。これから忙しくなるぞ、伊藤博文はそう思った。