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第5章
第220話 トイレに行きたい悪役令息※
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※トイレの表現を含みますので、お食事中の方はご注意ください。
憂鬱だったテアの挨拶も終わり、安心した僕は搾りたてのオレンジジュースを頂いていた。
(ごくごくごく、ふぅ~冷たいジュース、おいしっ。)
緊張のせいでやたら喉が渇いて、このパーティーの間に三杯も飲んでしまった。やばい、できるだけトイレには行きたくないし、飲み物を飲むのはもぅやめとこう。
クライスの華麗な挨拶を眺めながら、僕は大変だったこの一週間のことを思い出していた。
この一週間、クライスはもう言葉通り、僕の側から片時も離れなかった。
剣術の授業はもちろん、魔法生物学の時間も、魔法薬学の時間も、魔法基礎学の時間もずうっと隣にいた。授業だけじゃない。ご飯や大浴場や寝る時…はいつものことだけど、まさかのトイレまで!
「ちょっと、僕、トイレに行きたいんだってばぁ!! ついてこないで!」
「嫌だ。俺も行く」
「んはぁ、も、漏れるっ!! んじゃ、個室の前までねっ」
と言っても、「個室の中で不審人物が待ち構えているかもしれない」と譲らない。(ちなみにこの世界には洋式トイレしかないらしいので全部個室になっている)
言い合いをしているうちに僕の膀胱は限界を迎えようとしていた。
(やばい。この歳でおもらしなんてっ!)
「はぁ、も…ぉ、無理。うぅっ、わかった、一緒に入っていい…から、目をつぶっといてよ」
バタバタとトイレに行き、なんとか僕の名誉は守られた。
そして、そこからはもう当然のように彼も個室に入ってくるようになってしまい、トイレに行くたびに僕は死ぬほど恥ずかしい思いをする羽目に……。ジョロロロロという音を聞きながら赤面する僕、の前に目を瞑って立っている彼。(朝の排便時だけは許してもらえた。)
(なんなのこの状況……。)
そんな生活も今日で終わりだと思うと、なんだか感慨深い。あとは、誕生日プレゼントをどうするか、だけなのだけど……。
「これで一通り挨拶が済んだ。菓子を食べに行こう、休憩だ」
「やったぁ、僕、ロイヤルクッキーが食べたい!」
「こっちだ」
(考えるのは、もちょっと後にしよう。今はお菓子が食べたいの。)
お菓子コーナーには色とりどりのお菓子、その中にロイヤルクッキーもあった。サクサクした食感にフルーティーな香りのするロイヤルクッキーを一口食べれば、緊張も疲れもこの一週間のことも、全部吹き飛んだ。
「おいしっ! これすごいよ。クッキーの上に星屑のジャムが塗ってある。光ってて綺麗」
「ああ、本当だな。……キルナ、口にジャムがついてる」
「んぇ? どこ?」
「ここだ」
ポケットからハンカチを出そうとしていると、上唇に柔らかく湿ったものが触れる。彼がペロッとそれを舐め取ったのだ。
「ふぇ? 今…クライス、僕の唇舐めた?」
「ああ、甘くておいしそうで、つい……すまない」
にやっと笑うクライスは、絶対に悪いと思っていない。僕にはわかる。
んっなぁあああ、なんてこと! こんなところで何してるの!? 僕の顔は真っ赤なりんごみたいな色になっちゃってる。周囲の人たちも、ほら、赤くなっちゃって……。
と思ったら、今度はキス。ちゅっと音をさせて離れた彼は、悪戯っぽく笑った。「やっぱり甘い」とかなんとか言いながら……。
「「「嫌ぁああああ!!!!」」」
彼を目当てに集まっていたご子息ご令嬢たちの甲高い声が、お菓子コーナーに響き渡った。
憂鬱だったテアの挨拶も終わり、安心した僕は搾りたてのオレンジジュースを頂いていた。
(ごくごくごく、ふぅ~冷たいジュース、おいしっ。)
緊張のせいでやたら喉が渇いて、このパーティーの間に三杯も飲んでしまった。やばい、できるだけトイレには行きたくないし、飲み物を飲むのはもぅやめとこう。
クライスの華麗な挨拶を眺めながら、僕は大変だったこの一週間のことを思い出していた。
この一週間、クライスはもう言葉通り、僕の側から片時も離れなかった。
剣術の授業はもちろん、魔法生物学の時間も、魔法薬学の時間も、魔法基礎学の時間もずうっと隣にいた。授業だけじゃない。ご飯や大浴場や寝る時…はいつものことだけど、まさかのトイレまで!
「ちょっと、僕、トイレに行きたいんだってばぁ!! ついてこないで!」
「嫌だ。俺も行く」
「んはぁ、も、漏れるっ!! んじゃ、個室の前までねっ」
と言っても、「個室の中で不審人物が待ち構えているかもしれない」と譲らない。(ちなみにこの世界には洋式トイレしかないらしいので全部個室になっている)
言い合いをしているうちに僕の膀胱は限界を迎えようとしていた。
(やばい。この歳でおもらしなんてっ!)
「はぁ、も…ぉ、無理。うぅっ、わかった、一緒に入っていい…から、目をつぶっといてよ」
バタバタとトイレに行き、なんとか僕の名誉は守られた。
そして、そこからはもう当然のように彼も個室に入ってくるようになってしまい、トイレに行くたびに僕は死ぬほど恥ずかしい思いをする羽目に……。ジョロロロロという音を聞きながら赤面する僕、の前に目を瞑って立っている彼。(朝の排便時だけは許してもらえた。)
(なんなのこの状況……。)
そんな生活も今日で終わりだと思うと、なんだか感慨深い。あとは、誕生日プレゼントをどうするか、だけなのだけど……。
「これで一通り挨拶が済んだ。菓子を食べに行こう、休憩だ」
「やったぁ、僕、ロイヤルクッキーが食べたい!」
「こっちだ」
(考えるのは、もちょっと後にしよう。今はお菓子が食べたいの。)
お菓子コーナーには色とりどりのお菓子、その中にロイヤルクッキーもあった。サクサクした食感にフルーティーな香りのするロイヤルクッキーを一口食べれば、緊張も疲れもこの一週間のことも、全部吹き飛んだ。
「おいしっ! これすごいよ。クッキーの上に星屑のジャムが塗ってある。光ってて綺麗」
「ああ、本当だな。……キルナ、口にジャムがついてる」
「んぇ? どこ?」
「ここだ」
ポケットからハンカチを出そうとしていると、上唇に柔らかく湿ったものが触れる。彼がペロッとそれを舐め取ったのだ。
「ふぇ? 今…クライス、僕の唇舐めた?」
「ああ、甘くておいしそうで、つい……すまない」
にやっと笑うクライスは、絶対に悪いと思っていない。僕にはわかる。
んっなぁあああ、なんてこと! こんなところで何してるの!? 僕の顔は真っ赤なりんごみたいな色になっちゃってる。周囲の人たちも、ほら、赤くなっちゃって……。
と思ったら、今度はキス。ちゅっと音をさせて離れた彼は、悪戯っぽく笑った。「やっぱり甘い」とかなんとか言いながら……。
「「「嫌ぁああああ!!!!」」」
彼を目当てに集まっていたご子息ご令嬢たちの甲高い声が、お菓子コーナーに響き渡った。
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