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第1章 オームの大災害
第16話 破綻
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「ヤバいぞ、挟み撃ちにされている!」
模擬戦が始まってわずか5分。僕たちAチームは最大のピンチを迎えていた。
Bチームは半分が囮役、もう半分が背後から奇襲を仕掛けてきた。その作戦にいの一番にハマったのは熱血系の青年。彼は無謀――いや、勇敢にも逃げる囮役の尻を追いかけ、残りの僕たちも同じように追いかけた。そして小高い丘を背にして左右から挟み込まれたのだった。
相手に傷のひとつも付けられていないこの状況で負けたとなれば、Aチームに合格者は出ないだろう。今はまだお互いに睨み合っているだけが、いつ襲われても不思議ではない。
「僕がこちらの5人を引き止めます。その間に丘を登って反対側に脱出してください」
「おめえ1人で何ができるって言うんだよ」
5人相手に時間を稼げるかは正直言って不安だ。見る限りほとんどの受験生は戦いに慣れている様子だし。でもここであっさり負けてしまっては、これまで応援してくれた人たちに面目が立たない。
「このまま全員不合格になるのは嫌でしょう? 今はこれしか手はありません」
「分かったよ。悪いな」
「逃げられると思うなよ!」
僕以外の全員を丘の上に逃し、魔法を発動させようと杖を振り上げたBチームの女性の前に立ちはだかる。彼女は怪訝そうにこちらを睨み付けると、躊躇することなく火炎魔法をぶち込んできた。
「スキルさん、なんとかしてえええ!!」
神にも祈る勢いで叫んだその瞬間、何かが体内を巡る不思議な感覚を覚え、黒という言葉では生ぬるいほど漆黒の煙が僕の前に現れた。その煙は放たれた火炎魔法をまるで掃除機のように吸収すると、何事もなかったかのように消えて無くなった。
「チッ、闇魔法ね。あたしとじゃ相性が悪いわ」
何が起きたのか分からず唖然とする僕に対して、彼らは至って冷静だった。
「私がやります」
次に出てきたのは修道女のような格好の女性。原型は留めているものの、前世での記憶とは少々違い派手である。その風貌から彼女が光魔法使いであることが窺える。
「サンライト……」
そう呟くと目が眩むほどの光が僕を包んだ。次の瞬間には短剣を持った男が背後から現れ、刺されそうになるところをギリギリで躱す。男はかなり驚いていたようだがその手を止めることなく攻撃を続けた。
「近接戦において大切なのは反応速度もそうだが、1番は柔軟性だ。固定概念に囚われ過ぎていると相手が何をしてくるか予測ができなくなる。それに、手持ちの武器だけでなく周囲の環境を利用することもできるからな」
隊長に教わったCQCの極意。これは対人戦において最も効果的な戦闘手段であり、魔法使いや聖騎士が相手でもこれさえ覚えておけば死ぬことはない――と隊長は言っていた。
「はあ、はあ、はあ……お前、ナニモンだよ」
やがてサンライトの効果が薄れ視界が鮮明に見え始めたころ、僕は目の前の光景に落胆した。そこにいたのは無傷のBチームと、コテンパンにやられたであろうAチームの面々が〈死亡判定〉の札を首に下げ倒れていた。
「これでAチームの負けは確定ね。降参するなら痛い思いはしないで済むけど」
「そんな……ん? 君、どこかで――」
「アンタのことなんか知らないわ」
間違いない。神託の儀の際に見た竜人族の女の子だ。ここにいるってことは彼女も騎士学校の試験を?
でも、さっきまでは居なかったはずなのに一体どこから……
「で、どうするの? 降参し――」
「しない! 制限時間いっぱいまで抵抗してやる!」
「そう、残念ね。この試験は死亡判定が出されたら失格扱いになるのよ。騎士団に死ぬ兵士なんて要らないから」
「なら生き残ればいい話じゃないか」
僕が“つい”言い放ったこの言葉が、どうしてか彼女の闘争心に火を付けてしまった。
模擬戦が始まってわずか5分。僕たちAチームは最大のピンチを迎えていた。
Bチームは半分が囮役、もう半分が背後から奇襲を仕掛けてきた。その作戦にいの一番にハマったのは熱血系の青年。彼は無謀――いや、勇敢にも逃げる囮役の尻を追いかけ、残りの僕たちも同じように追いかけた。そして小高い丘を背にして左右から挟み込まれたのだった。
相手に傷のひとつも付けられていないこの状況で負けたとなれば、Aチームに合格者は出ないだろう。今はまだお互いに睨み合っているだけが、いつ襲われても不思議ではない。
「僕がこちらの5人を引き止めます。その間に丘を登って反対側に脱出してください」
「おめえ1人で何ができるって言うんだよ」
5人相手に時間を稼げるかは正直言って不安だ。見る限りほとんどの受験生は戦いに慣れている様子だし。でもここであっさり負けてしまっては、これまで応援してくれた人たちに面目が立たない。
「このまま全員不合格になるのは嫌でしょう? 今はこれしか手はありません」
「分かったよ。悪いな」
「逃げられると思うなよ!」
僕以外の全員を丘の上に逃し、魔法を発動させようと杖を振り上げたBチームの女性の前に立ちはだかる。彼女は怪訝そうにこちらを睨み付けると、躊躇することなく火炎魔法をぶち込んできた。
「スキルさん、なんとかしてえええ!!」
神にも祈る勢いで叫んだその瞬間、何かが体内を巡る不思議な感覚を覚え、黒という言葉では生ぬるいほど漆黒の煙が僕の前に現れた。その煙は放たれた火炎魔法をまるで掃除機のように吸収すると、何事もなかったかのように消えて無くなった。
「チッ、闇魔法ね。あたしとじゃ相性が悪いわ」
何が起きたのか分からず唖然とする僕に対して、彼らは至って冷静だった。
「私がやります」
次に出てきたのは修道女のような格好の女性。原型は留めているものの、前世での記憶とは少々違い派手である。その風貌から彼女が光魔法使いであることが窺える。
「サンライト……」
そう呟くと目が眩むほどの光が僕を包んだ。次の瞬間には短剣を持った男が背後から現れ、刺されそうになるところをギリギリで躱す。男はかなり驚いていたようだがその手を止めることなく攻撃を続けた。
「近接戦において大切なのは反応速度もそうだが、1番は柔軟性だ。固定概念に囚われ過ぎていると相手が何をしてくるか予測ができなくなる。それに、手持ちの武器だけでなく周囲の環境を利用することもできるからな」
隊長に教わったCQCの極意。これは対人戦において最も効果的な戦闘手段であり、魔法使いや聖騎士が相手でもこれさえ覚えておけば死ぬことはない――と隊長は言っていた。
「はあ、はあ、はあ……お前、ナニモンだよ」
やがてサンライトの効果が薄れ視界が鮮明に見え始めたころ、僕は目の前の光景に落胆した。そこにいたのは無傷のBチームと、コテンパンにやられたであろうAチームの面々が〈死亡判定〉の札を首に下げ倒れていた。
「これでAチームの負けは確定ね。降参するなら痛い思いはしないで済むけど」
「そんな……ん? 君、どこかで――」
「アンタのことなんか知らないわ」
間違いない。神託の儀の際に見た竜人族の女の子だ。ここにいるってことは彼女も騎士学校の試験を?
でも、さっきまでは居なかったはずなのに一体どこから……
「で、どうするの? 降参し――」
「しない! 制限時間いっぱいまで抵抗してやる!」
「そう、残念ね。この試験は死亡判定が出されたら失格扱いになるのよ。騎士団に死ぬ兵士なんて要らないから」
「なら生き残ればいい話じゃないか」
僕が“つい”言い放ったこの言葉が、どうしてか彼女の闘争心に火を付けてしまった。
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