31 / 108
騎士学校編
第31話 普通という名の呪い
しおりを挟む
『その……すんませんでしたッ!』
は?
何を言っているんだ、お前は。
『攻撃するつもりはコイツには全くなくて、魔眼のせいで石になっちゃっただけで』
ダークディグラーはそう言うと、まだ無傷なバジリスクの左眼に大きめの眼帯を巻きつけてみせた。脳内再生で『ほら、これなら――』とゴマをするような動きをしている。
「攻撃するつもりがなかったのなら、何故あの人たちを殺したんだ!」
『それは正当防衛……いや、些か過剰だったかもしれやせんがね。人族であれ、魔物であれ死にたくないのは同じでございますよ』
それはそうかもしれないが、この状況はどう見ても過剰も過剰。僕は奴らに「どう落とし前を着けるのか」と詰め寄ると、2体は慌てて土下座で平謝り。
『もう、人族は襲わねえと約束します。なあ、お前もだろ?』
ウンウンと頭を縦に振るバジリスク。
「分かった、それじゃあ――」
『僭越ながら! ひとつ条件というか……お願いを聞いてはくれやせんか?』
ダークディグラは土下座の状態のまま顔をゆっくりと上げると、再びゴマをするように動いた。それにしてもこんな動き、どこで覚えたのやら。
「なんだ?」
聞き返してからの間が異様に嫌な予感がする。
『オイラたちを子分にしてくだせえ!!』
いやあ、無理でしょ。
『そ、そんなあ……』
「え? もしかして心読めるの?」
『ええまあ、心で会話しているようなものですし』
その後、僕は何度もこの2体の魔物に頭を下げられ、断り続けた。そんなコントみたいなことをやっていると、戦闘の気配が無くなったことに違和感を感じたダリオンとアレクが戻ってきた。
『あっ、さっきはすいやせんでした!』
「これは一体、どういう……?」
そりゃそうなるよな。
僕は2人にここまでに起きたことを説明し、納得はされなかったものの、“そういうものだ”という感じで落とし込んでもらった。
「そうだ、子分になりたいならこの2人のどちらかでも良いんじゃないか?」
『かなり申し上げにくいのですけど……ダンナの方が強いでしょうから、その……』
「まあバルトよりは弱いね」
「悔しいけどな」
悔しくなさそうだぞ。
あ、変に見栄を張って魔物2体の面倒を見るのが嫌なんだな。
絶交します。
「それはそれとして、もうすぐ騎士団が来る。子分にするならそっちの方が被害は少なく済むんじゃないか?」
『名案ですぜ!』
「いやいやいやいや……」
騎士団との戦闘となれば死傷者が出ないわけがないし、この2体も別段“攻撃的”というわけではなさそうだ。今だってこちらをウルウルとした瞳で見つめているのだから。
「はあ、分かったよ。契約みたいなのってできるのか?」
『〈魔の契約〉がオススメですぜ。ですがダンナの今の魔力量では人間の姿になることはできませんな』
〈魔の契約〉は本来、奴隷やペットを従わせる強力な“呪い”の一種であり、主人の命令には死んでも逆らえず、死後の魂もが束縛されるという恐ろしいものだ。
ちなみに、スキルの【テイム】やバルト兄さんの【調教師】などと似ているが、この契約は魔力がある者なら誰でもでき、加えて強制力の面においてはこれらのスキルよりも遥かに上なのだ。
「お前たちはそれで良いのか? 強力な呪いなわけだし、やめておいた方が」
『いいえ! オイラたちは魔物としての生活に飽き飽きしていたんです。もっと普通の生活が送りたい、と!』
その言葉で僕は彼らと契約を交わすことに決めた。
「待たせたな!」
「アラン団長、お疲れ様です」
「えっと、もしかして終わっちゃったの?」
「ええ、万事解決です!」
『この男、なんだか胡散臭い顔をしてますな』
『私もこの男の匂いは嫌いですわ』
僕の懐では一時的に霊魂となった2体の魔物が楽しそうに話していた。
これはどう考えても普通じゃない。
は?
何を言っているんだ、お前は。
『攻撃するつもりはコイツには全くなくて、魔眼のせいで石になっちゃっただけで』
ダークディグラーはそう言うと、まだ無傷なバジリスクの左眼に大きめの眼帯を巻きつけてみせた。脳内再生で『ほら、これなら――』とゴマをするような動きをしている。
「攻撃するつもりがなかったのなら、何故あの人たちを殺したんだ!」
『それは正当防衛……いや、些か過剰だったかもしれやせんがね。人族であれ、魔物であれ死にたくないのは同じでございますよ』
それはそうかもしれないが、この状況はどう見ても過剰も過剰。僕は奴らに「どう落とし前を着けるのか」と詰め寄ると、2体は慌てて土下座で平謝り。
『もう、人族は襲わねえと約束します。なあ、お前もだろ?』
ウンウンと頭を縦に振るバジリスク。
「分かった、それじゃあ――」
『僭越ながら! ひとつ条件というか……お願いを聞いてはくれやせんか?』
ダークディグラは土下座の状態のまま顔をゆっくりと上げると、再びゴマをするように動いた。それにしてもこんな動き、どこで覚えたのやら。
「なんだ?」
聞き返してからの間が異様に嫌な予感がする。
『オイラたちを子分にしてくだせえ!!』
いやあ、無理でしょ。
『そ、そんなあ……』
「え? もしかして心読めるの?」
『ええまあ、心で会話しているようなものですし』
その後、僕は何度もこの2体の魔物に頭を下げられ、断り続けた。そんなコントみたいなことをやっていると、戦闘の気配が無くなったことに違和感を感じたダリオンとアレクが戻ってきた。
『あっ、さっきはすいやせんでした!』
「これは一体、どういう……?」
そりゃそうなるよな。
僕は2人にここまでに起きたことを説明し、納得はされなかったものの、“そういうものだ”という感じで落とし込んでもらった。
「そうだ、子分になりたいならこの2人のどちらかでも良いんじゃないか?」
『かなり申し上げにくいのですけど……ダンナの方が強いでしょうから、その……』
「まあバルトよりは弱いね」
「悔しいけどな」
悔しくなさそうだぞ。
あ、変に見栄を張って魔物2体の面倒を見るのが嫌なんだな。
絶交します。
「それはそれとして、もうすぐ騎士団が来る。子分にするならそっちの方が被害は少なく済むんじゃないか?」
『名案ですぜ!』
「いやいやいやいや……」
騎士団との戦闘となれば死傷者が出ないわけがないし、この2体も別段“攻撃的”というわけではなさそうだ。今だってこちらをウルウルとした瞳で見つめているのだから。
「はあ、分かったよ。契約みたいなのってできるのか?」
『〈魔の契約〉がオススメですぜ。ですがダンナの今の魔力量では人間の姿になることはできませんな』
〈魔の契約〉は本来、奴隷やペットを従わせる強力な“呪い”の一種であり、主人の命令には死んでも逆らえず、死後の魂もが束縛されるという恐ろしいものだ。
ちなみに、スキルの【テイム】やバルト兄さんの【調教師】などと似ているが、この契約は魔力がある者なら誰でもでき、加えて強制力の面においてはこれらのスキルよりも遥かに上なのだ。
「お前たちはそれで良いのか? 強力な呪いなわけだし、やめておいた方が」
『いいえ! オイラたちは魔物としての生活に飽き飽きしていたんです。もっと普通の生活が送りたい、と!』
その言葉で僕は彼らと契約を交わすことに決めた。
「待たせたな!」
「アラン団長、お疲れ様です」
「えっと、もしかして終わっちゃったの?」
「ええ、万事解決です!」
『この男、なんだか胡散臭い顔をしてますな』
『私もこの男の匂いは嫌いですわ』
僕の懐では一時的に霊魂となった2体の魔物が楽しそうに話していた。
これはどう考えても普通じゃない。
82
あなたにおすすめの小説
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
『三度目の滅びを阻止せよ ―サラリーマン係長の異世界再建記―』
KAORUwithAI
ファンタジー
45歳、胃薬が手放せない大手総合商社営業部係長・佐藤悠真。
ある日、横断歩道で子供を助け、トラックに轢かれて死んでしまう。
目を覚ますと、目の前に現れたのは“おじさんっぽい神”。
「この世界を何とかしてほしい」と頼まれるが、悠真は「ただのサラリーマンに何ができる」と拒否。
しかし神は、「ならこの世界は三度目の滅びで終わりだな」と冷徹に突き放す。
結局、悠真は渋々承諾。
与えられたのは“現実知識”と“ワールドサーチ”――地球の知識すら検索できる探索魔法。
さらに肉体は20歳に若返り、滅びかけの異世界に送り込まれた。
衛生観念もなく、食糧も乏しく、二度の滅びで人々は絶望の淵にある。
だが、係長として培った経験と知識を武器に、悠真は人々をまとめ、再び世界を立て直そうと奮闘する。
――これは、“三度目の滅び”を阻止するために挑む、ひとりの中年係長の異世界再建記である。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる