髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

5章 ドラマ撮影開始まで

『鷲尾の家族に乾杯』の放送 1

【5章開始】

　婆ちゃんから指導を受け、桃ちゃんの家に招待された数日後。

　『鷲尾の家族に乾杯』の放送日となる。

「お兄ちゃんの旅番組かぁー！どんな内容なんだろー！」
「あまり期待はしないでくれ……」

　ワクワクといった感じで寧々が言うため、俺は寧々に期待しないよう伝える。

　『鷲尾の家族に乾杯』という番組は、旅先で撮影した映像を編集し、編集した内容をテレビ局に戻って振り返るという構成だ。

　そのため放送前に編集された内容を鷲尾さんとテレビ局で確認したが、俺が女の子と触れ合ってるだけで、なかなかヒドい内容だった。

　鷲尾さんやスタッフたちからは大絶賛されたが。

「そう言われると余計楽しみだよ！」
「なんでだよ……」

　期待するなと言ったのに何故か余計楽しみになる寧々。

「まぁ俺の旅はひどかったが映像にはない裏話とかも織り交ぜてあるから、そっちは期待していいぞ」

　俺や鷲尾さんが撮影した映像とは別に、俺たちが出会った方へスタッフが再訪問し、感想や後日談、出演者へのメッセージを取材している。

　そして、それらを織り込んだ内容が放送されることになっているため、スタジオで編集された映像を見た時はとても楽しく見ることができた。

「そういえばSNSでの反応はどうだ？」

　俺は今日放送される『鷲尾の家族に乾杯』に出演していることを事前にSNSで告知しており、反応を寧々に聞いてみる。

「うん！視聴する人は多いみたいだよ！」

　そう言って寧々がスマホを見せてくる。

　そこには…

〈鷲尾の家族に乾杯、久々に見る！〉
〈めっちゃ楽しみ！〉
〈リン様にはどんな出会いがあったんだろ？〉
〈絶対、街ゆく女たちをメロメロにしてるよ！〉
〈〈〈〈だよねっ！〉〉〉〉

　等々、楽しみにしてる発言やリアルタイムで見るとのコメントが多くみられた。

「楽しみにしてくれてる人が多いって嬉しいな」
「うんうん！」

　俺が嬉しそうに言うと、寧々も嬉しそうに頷いてくれる。

「あ、始まったよ！」

　俺は寧々の声を聞き、テレビに視線を向ける。

『この番組は鷲尾さんとゲストがステキな家族を求めて日本中をめぐる、ぶっつけ本番の旅番組です』

　毎回恒例となるオープニングが始まり、いよいよ鷲尾の家族に乾杯が始まる。

『始まりました。鷲尾の家族に乾杯。今日は京都の街を旅しようと思います』

　鷲尾さんがテレビ画面に映り、話し始める。

　そして色々と鷲尾さんが話した後、ゲストの紹介へと移る。

『そして今日、一緒に旅をされるゲストは6年前まで天才子役として活躍された夏目凛さんです』
『よろしくお願いしまーす！』

　俺が手を振りながらテレビに映る。

「あ、お兄ちゃんだ！」

　俺の登場に寧々が声をあげる。

『今日は京都の街での収録となりますが、夏目くんは京都に来たことありますか？』
『そうですね。ドラマの撮影で何度も来たことはあります。ですが観光はしたことないんですよ』
『なるほど。なら、今日は京都の街を楽しみながら色んな方たちと触れ合ってくださいね』
『はいっ！』

「そっか。お兄ちゃん、京都を観光したことがないんだ」
「あぁ。だから何処を旅したいか番組スタッフから聞かれた時、京都って答えたんだ」

　等々、テレビで俺と鷲尾さんが話している間、俺も寧々と会話をする。

『じゃあ、良い旅を』
『はいっ！楽しんできます！』

　画面内の俺が鷲尾さんと別れ、数人のスタッフと街へ歩き出した。