80 / 169
5章 ドラマ撮影開始まで
『鷲尾の家族に乾杯』の放送 7
しおりを挟む
――夏目さんが氷鶴さんと翔太くんの実家である着付け屋を訪れてから数日後、スタッフが再訪問してみました。
そして、俺が訪れた数日後の氷鶴さんたちが放送される。
『ごめんくださーい』
『はーい!いらっしゃいませ!』
スタッフが着付け屋に入店すると、看板娘である氷鶴さんが着物姿で登場した。
前回放送時は可愛らしいピンク色の着物を着ていたが、今回は水色の着物を着ており、こちらの着物姿もとても似合っている。
『以前、この番組の収録で夏目さんが来店されましたが、その後、反響とかはありますか?』
『そうですね。リン様が来られてから、3倍近くお客様が増えましたね』
『3倍ですか!?かなりの反響をいただいてますね!』
『おかげで学校が終わったら急いで家に帰る日々を繰り返してます』
そう言って氷鶴さんが笑う。
『リン様が着物を着て街を歩いてくださったので、普段着物を着ない方々が着物を着てみたいと思うようになったらしく……』
「お兄ちゃん効果すごっ!」
「た、確かに着物を着て街を歩いたけど、宣伝なんかしてないぞ?」
着物を着て街を30分程度歩いたが、店の宣伝は一切行っていない。
ただ、この辺りの着付け屋は氷鶴さんの実家しかないため、俺の姿を見て着物に興味を持った人たちが氷鶴さんの店に駆け込んだのだろう。
「それだけお兄ちゃんの着物姿が魅力的だったってことだよ!」
「俺が着物を着たことで氷鶴さんの店が繁盛したのなら良かったよ。氷鶴さんと翔太にはお世話になったからな」
俺のおかげで繁盛しているのなら嬉しい限りなので、俺は笑みを溢す。
すると、スタッフが店の中に置かれているショーケースに視線を向ける。
その中には紺色の着物が飾られており、俺が着た紺色の着物にとても良く似ていた。
『あれ?前回夏目さんと来店した時は着物を飾っていなかったと思いますが、あの着物は珍しい着物ですか?』
『はいっ!リン様が着た着物です!』
氷鶴さんが満面の笑みで答える。
「あははっ!お兄ちゃんが着た着物、飾られてるよ!」
「そんなことしないでぇぇぇーっ!」
俺はテレビ画面に向けて叫ぶ。
しかしテレビに向けて叫んでも氷鶴さんには伝わらない。
『本当はリン様が着た着物を洗濯せずに飾りたかったのですが親に怒られたので、洗濯する前にしっかり匂いを堪能して……とかせずに丁寧に洗って飾りました』
「洗濯する前にしっかり匂いを堪能したんだね」
「匂いなんて嗅いでほしくないんだけど!」
氷鶴さんは誤魔化したようだが全く誤魔化しきれておらず、洗濯前に堪能したことが伝わってくる。
4月に収録を行ったため汗はかいてないと思うが、匂いを堪能されるのは恥ずかしい。
『ここ最近はショーケースの写真を撮る方が多く、リン様が着た着物目当てで来店される方もいらっしゃるくらいです』
「お兄ちゃんの着た着物が京都の観光名所になりそうな勢いだね」
「観光案内のパンフレットに『夏目凛が着た着物っ!』とか記載されたくないんだが……まぁ、氷鶴さんたちの店が繁盛するなら気にしないでいいか」
そんなことを話しながら氷鶴さんとスタッフの話を聞く。
『では、最後に夏目さんへ一言お願いします』
『リン様ーっ!京都に寄った時は店まで来てくださいっ!私や翔太が盛大におもてなしをしますので!』
そう言って氷鶴さんが満面の笑みを浮かべる。
「私、氷鶴さんとは仲良くなれそうだよ!氷鶴さんたちに会いに行く時は私も連れてってね!」
「そうだな。氷鶴さんと翔太にはお世話になったから、京都に行った時はお礼の品でも持って訪れるか」
そんな会話をしながらテレビを視聴した。
その後、画面が切り替わり、俺の旅が放送される。
映像は俺が氷鶴さんと翔太の2人と別れ、紺色の着物を着込んで街を歩いている映像だ。
『見て!リン様が着物を着てるよ!』
『カッコよすぎっ!めっちゃ似合ってる!』
『着物が似合う男性って素敵ー!』
『テレビや写真で見るよりもカッコいいよっ!』
そして再び、黄色い声援をたくさんもらう。
『あはは……ありがとう』
その声に苦笑いしながら鷲尾さんとの集合場所へ向かう。
「確かに氷鶴さんたちの店を宣伝してはないけど、これは歩くだけで宣伝してるようなものだよ」
「……そうだな」
歩いている俺のことをすれ違う人たちが振り返って見ている。
どれだけ注目を集めるかが宣伝効果へと直結するため、歩いているだけで注目を集めている俺は知らず知らずのうちに氷鶴さんたちの店を宣伝したようだ。
そんな会話をしていると、画面内の俺が鷲尾さんと合流する。
『お、着物を着たんだ。とても似合ってるよ』
『ありがとうございます』
鷲尾さんが再会と同時に俺の着物姿を褒めてくれる。
『京都の街はどうだった?』
『そうですね、とても面白かったです』
『うんうん、それなら良かったよ。この旅で夏目くんにどんな出会いがあったかは放送されるまで聞かないようにするから。楽しみにしてるよ』
『とても良い出会いがありましたので、楽しみにしてください!』
そんな会話をした後、鷲尾さんが締めの言葉を言う。
そしてスタジオへと画面が切り替わり、鷲尾さんが俺の旅の感想を言ってくれる。
『さすが夏目さん。女の子にモテモテだね』
『あはは……ありがとうございます』
苦笑いしながら鷲尾さんの言葉に返答する。
その後も鷲尾さんと俺が軽快なトークを繰り広げ…
『また来週もこの時間にお会いしましょう』
『ありがとうございましたー!』
『鷲尾の家族に乾杯』の放送が終了した。
【次話は寧々視点となります】
そして、俺が訪れた数日後の氷鶴さんたちが放送される。
『ごめんくださーい』
『はーい!いらっしゃいませ!』
スタッフが着付け屋に入店すると、看板娘である氷鶴さんが着物姿で登場した。
前回放送時は可愛らしいピンク色の着物を着ていたが、今回は水色の着物を着ており、こちらの着物姿もとても似合っている。
『以前、この番組の収録で夏目さんが来店されましたが、その後、反響とかはありますか?』
『そうですね。リン様が来られてから、3倍近くお客様が増えましたね』
『3倍ですか!?かなりの反響をいただいてますね!』
『おかげで学校が終わったら急いで家に帰る日々を繰り返してます』
そう言って氷鶴さんが笑う。
『リン様が着物を着て街を歩いてくださったので、普段着物を着ない方々が着物を着てみたいと思うようになったらしく……』
「お兄ちゃん効果すごっ!」
「た、確かに着物を着て街を歩いたけど、宣伝なんかしてないぞ?」
着物を着て街を30分程度歩いたが、店の宣伝は一切行っていない。
ただ、この辺りの着付け屋は氷鶴さんの実家しかないため、俺の姿を見て着物に興味を持った人たちが氷鶴さんの店に駆け込んだのだろう。
「それだけお兄ちゃんの着物姿が魅力的だったってことだよ!」
「俺が着物を着たことで氷鶴さんの店が繁盛したのなら良かったよ。氷鶴さんと翔太にはお世話になったからな」
俺のおかげで繁盛しているのなら嬉しい限りなので、俺は笑みを溢す。
すると、スタッフが店の中に置かれているショーケースに視線を向ける。
その中には紺色の着物が飾られており、俺が着た紺色の着物にとても良く似ていた。
『あれ?前回夏目さんと来店した時は着物を飾っていなかったと思いますが、あの着物は珍しい着物ですか?』
『はいっ!リン様が着た着物です!』
氷鶴さんが満面の笑みで答える。
「あははっ!お兄ちゃんが着た着物、飾られてるよ!」
「そんなことしないでぇぇぇーっ!」
俺はテレビ画面に向けて叫ぶ。
しかしテレビに向けて叫んでも氷鶴さんには伝わらない。
『本当はリン様が着た着物を洗濯せずに飾りたかったのですが親に怒られたので、洗濯する前にしっかり匂いを堪能して……とかせずに丁寧に洗って飾りました』
「洗濯する前にしっかり匂いを堪能したんだね」
「匂いなんて嗅いでほしくないんだけど!」
氷鶴さんは誤魔化したようだが全く誤魔化しきれておらず、洗濯前に堪能したことが伝わってくる。
4月に収録を行ったため汗はかいてないと思うが、匂いを堪能されるのは恥ずかしい。
『ここ最近はショーケースの写真を撮る方が多く、リン様が着た着物目当てで来店される方もいらっしゃるくらいです』
「お兄ちゃんの着た着物が京都の観光名所になりそうな勢いだね」
「観光案内のパンフレットに『夏目凛が着た着物っ!』とか記載されたくないんだが……まぁ、氷鶴さんたちの店が繁盛するなら気にしないでいいか」
そんなことを話しながら氷鶴さんとスタッフの話を聞く。
『では、最後に夏目さんへ一言お願いします』
『リン様ーっ!京都に寄った時は店まで来てくださいっ!私や翔太が盛大におもてなしをしますので!』
そう言って氷鶴さんが満面の笑みを浮かべる。
「私、氷鶴さんとは仲良くなれそうだよ!氷鶴さんたちに会いに行く時は私も連れてってね!」
「そうだな。氷鶴さんと翔太にはお世話になったから、京都に行った時はお礼の品でも持って訪れるか」
そんな会話をしながらテレビを視聴した。
その後、画面が切り替わり、俺の旅が放送される。
映像は俺が氷鶴さんと翔太の2人と別れ、紺色の着物を着込んで街を歩いている映像だ。
『見て!リン様が着物を着てるよ!』
『カッコよすぎっ!めっちゃ似合ってる!』
『着物が似合う男性って素敵ー!』
『テレビや写真で見るよりもカッコいいよっ!』
そして再び、黄色い声援をたくさんもらう。
『あはは……ありがとう』
その声に苦笑いしながら鷲尾さんとの集合場所へ向かう。
「確かに氷鶴さんたちの店を宣伝してはないけど、これは歩くだけで宣伝してるようなものだよ」
「……そうだな」
歩いている俺のことをすれ違う人たちが振り返って見ている。
どれだけ注目を集めるかが宣伝効果へと直結するため、歩いているだけで注目を集めている俺は知らず知らずのうちに氷鶴さんたちの店を宣伝したようだ。
そんな会話をしていると、画面内の俺が鷲尾さんと合流する。
『お、着物を着たんだ。とても似合ってるよ』
『ありがとうございます』
鷲尾さんが再会と同時に俺の着物姿を褒めてくれる。
『京都の街はどうだった?』
『そうですね、とても面白かったです』
『うんうん、それなら良かったよ。この旅で夏目くんにどんな出会いがあったかは放送されるまで聞かないようにするから。楽しみにしてるよ』
『とても良い出会いがありましたので、楽しみにしてください!』
そんな会話をした後、鷲尾さんが締めの言葉を言う。
そしてスタジオへと画面が切り替わり、鷲尾さんが俺の旅の感想を言ってくれる。
『さすが夏目さん。女の子にモテモテだね』
『あはは……ありがとうございます』
苦笑いしながら鷲尾さんの言葉に返答する。
その後も鷲尾さんと俺が軽快なトークを繰り広げ…
『また来週もこの時間にお会いしましょう』
『ありがとうございましたー!』
『鷲尾の家族に乾杯』の放送が終了した。
【次話は寧々視点となります】
22
あなたにおすすめの小説
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる