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6章 ドラマ撮影編
立花香帆との出会い 1
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真奈美と他愛のない話をしていると「おはようございます」という声が聞こえてくる。
「あ、香帆ちゃん!」
立花さんの到着に気がついた真奈美が立花さんのもとへ向かう。
立花香帆。
俺や真奈美と同い年で小学1年生の頃から子役として活動しており、現在は真奈美と同じくらい人気のある女優だ。
キリッとした目つきと薄い緑色の髪をお団子結びにしている髪型が特徴的で、真奈美ほどでないにしろ、しっかりとした膨らみのある胸を兼ね備えている。
「おはよー!香帆ちゃん!」
「おはよう、真奈美。今日はいつもより元気そうね」
「うん!久しぶりに凛くんと共演できるからね!」
真奈美が屈託のない笑顔で立花さんへ告げる。
「夏目凛ねぇ」
そう呟いた立花さんが“キッ!”と俺の方を向いて睨む。
(ひぃっ!な、なんか睨まれたんだけど!俺、立花さんに嫌われることしたかな!?)
突然の睨みにビクッとした俺を他所に、立花さんが森野監督へ挨拶をする。
そして監督との挨拶を終えた立花さんが俺のもとに来て、俺にしか聞こえない声量で話しかける。
「十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば只の人」
「……え?」
「幼い頃は並外れた才能の持ち主だと思われていた子供も、成長するにしたがって平々凡々な人になることが多いという意味よ」
「へぇー、良くそんな言葉を知ってるな」
おそらくことわざだと思うが、日常会話で使ったことのない言葉を言われ、素直に感心する。
「私は同い年である夏目凛のことを神童だと思ったわ。小5にして優秀主演男優賞を受賞したアナタのことを」
かつて小学5年生で優秀主演男優賞を受賞した俺は『神童』だの『天才』だのと呼ばれていた。
「だから私は夏目凛を目標に頑張ってきた。目に穴が開くほど夏目凛の演技を観察し、技術を盗もうとした。それくらい私は夏目凛のことを俳優として尊敬してたわ。なのにアナタは受賞した翌年に芸能界を引退した。当時の私はもう夏目凛の演技を見ることができないと知り、ショックを受けたわ」
その言葉を聞き、申し訳ないことをしてしまったと思う。
「でもショックを受けたのは一瞬だけで、徐々に怒りが湧いてきた。私みたいな凡人が一生賭けても手に入れることのできない栄誉ある賞を受賞したにも関わらず引退したアナタへ」
立花さんが怒気を孕んだ声で言う。
「アナタがどんな理由で引退したかは知らないけど、私が優秀主演女優賞を受賞したら、どんなことがあっても絶対に引退しない。受賞できたことを誇りに思い、より一層女優として頑張るわ。何故なら優秀主演女優賞を受賞することにスゴイ価値があることを理解しているから」
俺の引退した理由が母さんの死であることは世間に知られていないため、立花さんは俺が引退した理由を知らない。
「でも天才であるアナタは違うようね。受賞したくてもできなかった人たちがたくさんいる中、受賞した翌年に引退だなんて俳優業を舐めてるとしか思えないわ」
「いや、そんなこと微塵も思って……」
「そんなことないわ!」
立花さんが声をあげて否定する。
突然、大声を上げた立花さんへ周囲のスタッフや真奈美、森野監督が視線を向ける。
(この状態で立花さんと撮影はできない!)
どうやら立花さんは激怒らしいので、まずは2人きりで話す時間が欲しい。
「立花さん!こっちで話すぞ!」
俺は“パシっ!”と立花さんの手を取り、手を引いて歩き出す。
「そうね。私もアナタには言いたいことがあるわ」
この場で話すべきではないと立花さんも理解したようで、素直に俺の後を追う。
しっかりと俺の手を払いのけて。
(気の強い女子との会話なんて初めてなんだけど!どーやって接すればいいんだよ!)
そんなことを思いながら俺は立花さんを引き連れてその場から離れる。
「凛くんと香帆ちゃんの間に何かあったのかな?」
その様子を真奈美が心配そうに見つめていたことに俺は気づかなかった。
「あ、香帆ちゃん!」
立花さんの到着に気がついた真奈美が立花さんのもとへ向かう。
立花香帆。
俺や真奈美と同い年で小学1年生の頃から子役として活動しており、現在は真奈美と同じくらい人気のある女優だ。
キリッとした目つきと薄い緑色の髪をお団子結びにしている髪型が特徴的で、真奈美ほどでないにしろ、しっかりとした膨らみのある胸を兼ね備えている。
「おはよー!香帆ちゃん!」
「おはよう、真奈美。今日はいつもより元気そうね」
「うん!久しぶりに凛くんと共演できるからね!」
真奈美が屈託のない笑顔で立花さんへ告げる。
「夏目凛ねぇ」
そう呟いた立花さんが“キッ!”と俺の方を向いて睨む。
(ひぃっ!な、なんか睨まれたんだけど!俺、立花さんに嫌われることしたかな!?)
突然の睨みにビクッとした俺を他所に、立花さんが森野監督へ挨拶をする。
そして監督との挨拶を終えた立花さんが俺のもとに来て、俺にしか聞こえない声量で話しかける。
「十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば只の人」
「……え?」
「幼い頃は並外れた才能の持ち主だと思われていた子供も、成長するにしたがって平々凡々な人になることが多いという意味よ」
「へぇー、良くそんな言葉を知ってるな」
おそらくことわざだと思うが、日常会話で使ったことのない言葉を言われ、素直に感心する。
「私は同い年である夏目凛のことを神童だと思ったわ。小5にして優秀主演男優賞を受賞したアナタのことを」
かつて小学5年生で優秀主演男優賞を受賞した俺は『神童』だの『天才』だのと呼ばれていた。
「だから私は夏目凛を目標に頑張ってきた。目に穴が開くほど夏目凛の演技を観察し、技術を盗もうとした。それくらい私は夏目凛のことを俳優として尊敬してたわ。なのにアナタは受賞した翌年に芸能界を引退した。当時の私はもう夏目凛の演技を見ることができないと知り、ショックを受けたわ」
その言葉を聞き、申し訳ないことをしてしまったと思う。
「でもショックを受けたのは一瞬だけで、徐々に怒りが湧いてきた。私みたいな凡人が一生賭けても手に入れることのできない栄誉ある賞を受賞したにも関わらず引退したアナタへ」
立花さんが怒気を孕んだ声で言う。
「アナタがどんな理由で引退したかは知らないけど、私が優秀主演女優賞を受賞したら、どんなことがあっても絶対に引退しない。受賞できたことを誇りに思い、より一層女優として頑張るわ。何故なら優秀主演女優賞を受賞することにスゴイ価値があることを理解しているから」
俺の引退した理由が母さんの死であることは世間に知られていないため、立花さんは俺が引退した理由を知らない。
「でも天才であるアナタは違うようね。受賞したくてもできなかった人たちがたくさんいる中、受賞した翌年に引退だなんて俳優業を舐めてるとしか思えないわ」
「いや、そんなこと微塵も思って……」
「そんなことないわ!」
立花さんが声をあげて否定する。
突然、大声を上げた立花さんへ周囲のスタッフや真奈美、森野監督が視線を向ける。
(この状態で立花さんと撮影はできない!)
どうやら立花さんは激怒らしいので、まずは2人きりで話す時間が欲しい。
「立花さん!こっちで話すぞ!」
俺は“パシっ!”と立花さんの手を取り、手を引いて歩き出す。
「そうね。私もアナタには言いたいことがあるわ」
この場で話すべきではないと立花さんも理解したようで、素直に俺の後を追う。
しっかりと俺の手を払いのけて。
(気の強い女子との会話なんて初めてなんだけど!どーやって接すればいいんだよ!)
そんなことを思いながら俺は立花さんを引き連れてその場から離れる。
「凛くんと香帆ちゃんの間に何かあったのかな?」
その様子を真奈美が心配そうに見つめていたことに俺は気づかなかった。
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