髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部

文字の大きさ
100 / 169
6章 ドラマ撮影編

『生徒会長は告らせたい』の撮影 1

しおりを挟む
~立花香帆視点~

「よーい……アクションっ!」

 監督の声が響き渡り、原作第1話である黒川くんが二宮さんから告白してもらうよう暗躍する話が始まる。
 まずはナレーターの方が状況説明を含め、話し始める。
 今回は適当なスタッフがナレーターを務め、後日、しっかりとしたナレーターを用意し、収録する予定だ。

――生徒会長黒川と副会長二宮は、お互いに惹かれ合い恋人になりたいと思っているが告白する勇気がなく、生徒会室で駄弁るだけの日々を過ごしていた。そんなヘタレ2人は自分から告白するのではなく、相手から告白させようという思考回路に至り、日々相手を惚れさせ告白させるための努力していた。

『そういえば先週、デパートのくじ引きでこんな物を当てたんだ』

 そう言って会長席に座っている凛が映画のペアチケットを真奈美に見せる。

『運がいいですね、会長』

 真奈美が手にしていた書類を目の前のテーブルに置きながら淡々と返答する。

 普段は元気いっぱいで弾ける笑顔を振りまく真奈美だが、本作に登場する二宮さんはお金持ちのお嬢様でクールな女の子。
 黒川くんのことが好きだけど素直になれず、クールな態度で振る舞っている二宮さんを完璧に演じきっており、この演技を見ただけで原作を何度も読み込み、練習してきたことが分かる。

『偶々当たったんだ。でも、これの使用期限が明日の土曜日までなんだよ』
『それは急いで使わないといけませんね。せっかくのタダ券ですから』
『そうなんだけど誘った人全員から断られたんだよ。だから一緒に行ってくれる人を探していたところなんだ』

 凛がチラッと真奈美を見る。

――虚言である!この男、二宮が明日暇なことを知り、今日まで誰にも話さず隠し持っていたのだ!

『そうなのですね。それなら明日私と一緒に……っ!』

 そこまで言って自分の失言に気づいた真奈美が勢いよく口を閉ざす。
 その瞬間、凛の口角が上げる。

――異性を遊びに誘うということは相手に好意的な感情を抱いていると言っているようなもの!その好機を逃す黒川ではない!

『ん?何だ?もしかして二宮は俺と映画館に行きたかったのか?』

 真奈美から待望の返答が聞こえたため、凛がここぞとばかりに追撃する。

『そ、そんなことありません』
『ならさっきの言葉はどういった意図があったんだ?二宮が俺と映画館に行きたいと言ってるように聞こえたんだけど俺の気のせいか?』

 凛がドSイケメンのような雰囲気を醸し出しながら会長席から立ち上がり、イケメンスマイルで真奈美へ迫る。

『どうなんだ?二宮』

 至近距離で真奈美の顔を見つめ、問いかける。

『そ、それは……』

 真奈美が目を逸らしながら言い淀む。
 そんな真奈美を見て追撃の手を緩めない凛が、イケメンスマイルを崩さず問いかける。

『異性を映画館デートに誘うという行為は相手に何らかの感情を抱いていることになる。例えば好意とか』
『っ!』
『もしかして二宮は俺のことが……』

 と、凛が決定的な言葉を言おうとした時、真奈美が遮るように言葉を発する。

『な、何を言っているのか理解できませんね。私はただ、使用しなければ券が勿体ないと思っただけです』

 必死に脳内をフル回転させながら弁明する姿をしっかりと表現しつつ、反撃に移る。

『会長の方こそ、全員に断られたことを私に話さなくても良かったと思います。もしかして遊んでくれる友達がいないことをアピールしたかったのですか?』
『っ!』

 真奈美の発言に凛が息を呑む。

『あ、それとも会長は私と映画館デートしたかったから、わざわざ私の目の前で行く人がいないアピールをされたのですね』
『くっ!』

 今度は真奈美の発言に凛が慌てだす。

『となれば、会長こそ私に何らかの感情を抱いてるのではないですか?例えば好意とか?』

 形勢逆転。
 今度は真奈美がドS美女のような表情で問いかける。

 普段の真奈美からドS美女など想像できないが、これまたしっかりと演技できており、反論できない謎の雰囲気を醸し出している。

『そ、そんなわけないだろ。た、確かに二宮は可愛くて魅力的な女の子だから好意的な感情を抱いていないと言えば嘘になるが…』
『……ふぇっ!可愛くて魅力的……っ』

 真奈美が顔を赤くして嬉しそうに照れ、ドS美女の雰囲気が一瞬で霧散する。

(あ、素の反応が出ちゃってるわ)

 凛の言葉に恋する乙女のような顔となる真奈美。
 セリフだと分かっていても好きな男から言われ舞い上がっているようだ。

――人間とは動揺している時、往々にして自分の発言に客観性を失い、ぽろっと本心が出てしまう。そのため、生徒会室にカオスとなる!

『か、会長が可愛くて魅力的な女の子って……』
『ってなわけでだな、二宮が可愛いことは認めるが俺は映画デートを誘ったわけじゃなくて、くじ引きでタダ券をゲットしたことを自慢したかっただけで……』

――その後、黒川の言葉に嬉しすぎてバグる二宮と、必死になって弁明する黒川の姿が数十分ほど続き、本日も全く進展しなかった。

「カットぉぉーっ!」

 そこで森野監督の声が響き渡った。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...