髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部

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1章 プロローグ

プロローグ 2

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 紫乃と買い物に出かける。

 今日はハロウィンということでコスプレした格好で歩いている人もいるが大半の人は私服なので、俺たちはとても目立っている。
 そのため、遠くから俺たちを見てコソコソと話している人たちが続出していた。

「見て!あの人、超カッコいいよ!」
「ホントだ!あんなにカッコいい人、見たことないよ!」
「でも彼女持ちかぁ。彼女がいなかったら声をかけてたのに」
「仕方ないよ。あんなイケメン、世の女性が放っておかないからね。ここは遠くから眺めてイケメン成分を補充しよう」

 など女性の人たちがコソコソと話している様子や…

「見ろよ!あの魔女っ子!めっちゃ可愛いぞ!」
「ヤバっ!レベル高すぎっ!でも彼氏持ちかよ。しかもあの彼氏、超カッコいいし」
「そりゃ、カッコよくないと付き合えないて」
「仕方ない。遠くから眺めて目の保養にしよう」

 などと男性の人たちもコソコソと話していた。

「遠くから俺たちを見てコソコソと話してる人がたくさんいるんだが。あれ、絶対俺の顔見て笑ってるよな」

 そう思った俺は隣を歩く紫乃に同意を求めようとしたが、なぜか「はぁ……」とため息をつかれる。

「でたよ、お兄ちゃんの悪い癖。いつもいつも自分の事を悪く言うの良くないよ?昔は常に自信満々だったのに」
「昔は自分の能力に酔ってたからな」

 昔の俺は紫乃の言う通り自信家で俺なら何でも出来ると思っていた。

「でもそのせいで父さんは死んだ。俺はもう2度と自分の能力を過信しない」

 俺たちが小学6年生の頃、俺が自分の能力を過信したせいで父さんが死んだ。


『な、流されるっ!ゴホッ!と、父さん!助けて!』
『待ってろ!黒羽!今、助けるからっ!』

 “ザッパーン!”


「っ!」

 俺はその時の光景を思い出して泣きそうになる。

「だから俺は自己評価に磨きをかけてきた。二度と自分の能力を過信して、取り返しのつかない過ちを犯さないように」

 その日以降、俺は自分の能力を過信しないよう生きていた。
 度々、紫乃や母さんから『自己評価が低い』と言われているが、俺は間違ってないと思っている。

「ちなみに今のお兄ちゃんを自己評価したらどうなるの?」
「そりゃ勉強もスポーツも普通で容姿に至っては最低ランクだ」

 勉強とスポーツは努力で何とかなっているが容姿に至っては目つきの悪さもあり最底辺。
 美少女である紫乃と血の繋がった兄妹なのか疑いたいレベルだ。

「はぁ。そう言うと思った。本当はカッコ良くて運動神経も抜群なのに。まぁ、だから私は作戦を実行したんだけどね」
「……作戦?」

 その言葉に引っかかった俺は紫乃へ問いかけようとすると…

「あの!すみません!」

 と、1人の女性が話しかけてきた。

「少しだけお時間よろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょうか?」

 紫乃ではなく俺に声を掛けたと思った俺は、女性に返事をする。

「私、芸能プロダクション『ヒマワリ』で働いております神里かみさとアカネと申します」

 そう言って名刺を渡される。
 黒髪をポニーテールに結んだ20代後半くらいの綺麗な女性。
 スーツがとても良く似合っており、スーツの上からでも分かるほどの巨乳を兼ね備えている。

「芸能プロダクションの方が俺にどのような用件でしょうか?」
「はい。単刀直入に言います。『読者モデル』Styleスタイルの撮影に協力してください!」

 勢いよく頭を下げる神里さん。
 そして詳しく説明する。

「Styleとは私たちの事務所が発売している『読者モデル』の雑誌名です。今、コスプレされた男性を中心に『読者モデル』を作成してるのですが、モデルさんが急遽来られなくなったので、代役を探してたんです。幸い、今日はハロウィンだったので、街でコスプレをしている方から代役を探すことになりました」
「なるほど。つまり俺に代役をしてほしいということですね」
「はい。是非、お願いします!」

 神里さんが頭を下げる。

「えーっと……大変申し訳ないのですが、断らせていただきます」
「な、なぜですか!?」

 顔を上げて驚いた表情をする神里さん。

「お、俺なんかよりもカッコいい方はいらっしゃいますので」
「……え?私は君以上にコスプレの似合う男性に出会ったことないのですが」
「そんな褒められても俺は了承しませんよ」
「いえ、本心なのですが……」

 神里さんがボソッと呟く。
 そんなやり取りをしていると、隣で黙っていた紫乃が口を開く。

「私は協力してもいいと思うよ」
「え?」
「だって神里さん、本気で困ってるよ?」
「た、確かにその通りだが……」

 今にも泣きそうな顔でお願いする神里さんに心苦しい想いをしているが、『読者モデル』に載るべき容姿ではないため、心を鬼にして断っている。

「人助けと思って引き受けたら?どうせ今の格好からお兄ちゃんって気付く知り合いなんて数人くらいしかいないし。それに『何でこの顔で写真集に載ってるの?』って人はたくさんいるから、お兄ちゃんが掲載されても問題ないと思うよ」
「確かに、なぜ写真集を出してるか分からない女優やアイドルもいるからな」

 紫乃の方が可愛いにも関わらず写真集を出している女性は多い。
 それに普段の俺は今のように髪を上げておらず、目元まで髪を伸ばしているため、俺が掲載されたことに気付く人は少なくだろう。

(目つきがヤバくてヤンキーみたいな俺にお願いするってことは、かなり困ってるのだろうし)

 そう思い俺は引き受けることにする。

「わかりました。俺でよければ協力させてください。本気で困っているようなので」
「ありがとうございます!」

 パーっと嬉しそうな顔をする神里さん。

「ただし!掲載するのは1枚だけです!あと、俺のせいで売れなくなっても俺のせいにしないでくださいね!」
「そんな未来は見えませんが……わかりました!撮影場所はコチラになりますので、ついて来てください!」

 俺はその返答に満足し、神里さんについていった。
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