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1章 プロローグ
芸能界デビュー
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美容院の予約が完了しリビングでのんびり過ごしていると、母さんが帰ってきた。
「あ、おかえりー!」
「おかえり、母さん」
「えぇ。ただいま」
疲れ切った様子など見せず、仕事から帰ってきた母さん。
赤星葵。
俺たちと同じ茶髪を腰まで伸ばし、大学生の子供がいるとは思えないほど綺麗な女性。
仕事は小説家をしており、来月には母さんが書いた小説がドラマ化されるため、打ち合わせ等々で最近は忙しい日々を送っている。
「あら届いたのね。黒羽の『読モ』」
「あぁ。って俺が表紙を飾ってるところは驚かないんだな」
「えぇ。紫乃から聞いてたから。黒羽の自己評価を改善するため目立つところに掲載してもらったって」
どうやら紫乃は俺の自己評価を改善するため、山野社長へ掛け合ってくれたようだ。
「本当はお兄ちゃんのコスプレ姿を見た周囲の人たちにお兄ちゃんをチヤホヤしてもらう予定だったんだけど……何故か神里さんしか話かけられなかった……」
「そんなの当たり前よ。魔女のコスプレをした紫乃が隣にいたらカップルにしか見えないもの」
「……なるほど」
母さんの指摘に納得する紫乃。
詳しく聞くと、当初はチヤホヤされた俺がカッコいいことに気づき、自己評価の改善へと繋げる予定だったらしいが、コスプレした俺たちに話かけてきたのは神里さんだけだったので、内心焦っていたようだ。
「まぁ、無事俺が間違ってることに気づいたから結果オーライだ」
「だね」
そんな会話を3人でしていると「ピンポーン」っと玄関のチャイムが鳴る。
「俺が出てくるよ」
そう言って玄関に向かい扉を開ける。
すると、そこには神里さんがいた。
「遅くにすみません。私、芸能プロダクション『ヒマワリ』で働いております神里アカネと申します。本日は赤星黒羽さんに用事があって参りました。黒羽さんはいらっしゃいますか?」
目の前にいるにも関わらず俺の所在を確認する神里さん。
今は髪を下ろしているため、俺のことを兄弟の誰かと思ったのだろう。
「俺が黒羽ですよ」
そう言って髪をかきあげる。
「ふぁっ!く、黒羽さんだったんですね!」
どうやら俺と理解できたようで、顔を真っ赤にした神里さんが慌てて返答する。
「それでどのような要件で来られたんですか?」
「ちょ、ちょっと待ってください!黒羽さんの顔が急に目の前に現れて……!」
と言って「すーはーっ!」と何度も息を整える神里さん。
「お兄ちゃん。もしかして神里さんを口説いたの?」
「そんなことしてねぇよ!」
「うそうそ、冗談だよ」
おそらく一部始終を見てたのだろう紫乃がクスクスと笑いながら口を開く。
「とりあえず神里さんを家に招待するよ」
「わ、わかった」
紫乃の提案に乗った俺は神里さんを家の中に招き入れた。
「すみません、取り乱してしまいました」
“ペコリっ!”と頭を下げた神里さん。
「俺の方こそすみません。驚かせてしまいました」
お互い頭を下げて謝り、先ほどの件は水に流す。
そして「こほんっ!」と咳払いを挟んだ神里さんが訪ねてきた要件を話す。
「まずは先月、『読者モデル』Styleの代役を引き受けていただきありがとうございます。黒羽さんのおかげで、凄い売り上げを叩き出しました!」
パチパチと手を叩く神里さん。
「はぁ、おめでとうございます」
俺も神里さんのテンションに合わせて“パチパチ”と手を叩く。
「あれ?反応が薄いですね」
「そうですね。俺のおかげと言われましても俺なんて表紙に載ってるだけですから」
「いや、売り上げの9割くらいが黒羽さんのおかげなんですが……」
何故か呆れながら呟かれる。
「神里さん。お兄ちゃんって自分がカッコ良いことに今日気づいたんです。いずれ慣れると思いますので今日はスルーでお願いします」
「わ、分かりました」
その通りなので俺もとやかく言わない。
「では本題へ入ります。黒羽さん。我が社で芸能界デビューしてみませんか?」
「………芸能界デビューですか?」
「はい。我が社と契約し、芸能界へ足を踏み入れてみませんか?」
どうやら本気で俺をスカウトしているようだ。
「黒羽さんがどの事務所にも所属していないことは把握しております。なので私たちの事務所に所属し、デビューしてほしいです。黒羽さんなら絶対活躍できます。是非、お願いします!」
神里さんが再び頭を下げる。
俺がイケメンであることはSNSの反応で理解できたため、ある程度は活躍できると思う。
でも芸能界は厳しい世界なので俺なんかがデビューしてもすぐ埋もれてしまう。
そのため「申し訳ありませんが……」と断ろうとした時…
「お兄ちゃん!絶対デビューすべきだよ!」
と、隣に座って聞いていた紫乃が声を上げる。
「絶対お兄ちゃんなら有名になれるよ!将来、お父さんみたいに活躍できるって!」
「いや父さんみたいに活躍は無理だろ」
俺の父さんである赤星白哉は、昔歌手として活躍しており、ドラマやバラエティ番組にも引っ張りだこだった。
それこそ年末にある歌番組には10年連続で出場し、俳優業では優秀主演男優賞も受賞した。
日本国民なら誰もが知ってる有名人だ。
「お母さんもそう思うよね!?」
「そうね。黒羽ならお父さんみたいに活躍できるわ」
遠くから俺たちの話を聞いていた母さんも同意する。
「いやいや!芸能界だよ!?絶対無理だって!」
「そんなことないわ。だってお父さんと私の子よ。活躍するに決まってるわ」
まるで決定事項のように言い切る母さん。
「うんうん!だから大丈夫だよ!それに私はお兄ちゃんのこと、ずーっと応援するから!」
「私も応援するわ。だから活躍できる自信がなくて断ろうとしてるのなら神里さんの提案に乗ってデビューすべきよ」
紫乃と母さんから背中を押される。
その時、ふと忘れていた昔の夢を思い出す。
「……俺も昔は父さんみたいにテレビに出て活躍したいって思ってたんだ」
昔は父さんに憧れ、何度も撮影現場や収録現場に足を運んでいた。
そのタイミングで父さんが何度も口にしていた言葉を思い出す。
『黒羽なら俺を超える芸能人になれる。将来、2人で一緒にテレビに出ような』
『うんっ!約束だよ!』
そう父さんと約束したんだ。
(もう父さんはこの世に居ないけど、これは父さんと語った夢を叶えるチャンス。それに…)
「紫乃と母さんが応援してくれるんだ。断る理由はないな」
俺は神里さんの方を向く。
「俺の夢は芸能界で活躍することでした。父さんのような有名人になれるか分かりませんが、精一杯頑張ってみます。俺をデビューさせてください!」
「引き受けていただき、ありがとうございます!私たちと頑張りましょう!」
こうして俺は芸能界に飛び込んだ。
「あ、おかえりー!」
「おかえり、母さん」
「えぇ。ただいま」
疲れ切った様子など見せず、仕事から帰ってきた母さん。
赤星葵。
俺たちと同じ茶髪を腰まで伸ばし、大学生の子供がいるとは思えないほど綺麗な女性。
仕事は小説家をしており、来月には母さんが書いた小説がドラマ化されるため、打ち合わせ等々で最近は忙しい日々を送っている。
「あら届いたのね。黒羽の『読モ』」
「あぁ。って俺が表紙を飾ってるところは驚かないんだな」
「えぇ。紫乃から聞いてたから。黒羽の自己評価を改善するため目立つところに掲載してもらったって」
どうやら紫乃は俺の自己評価を改善するため、山野社長へ掛け合ってくれたようだ。
「本当はお兄ちゃんのコスプレ姿を見た周囲の人たちにお兄ちゃんをチヤホヤしてもらう予定だったんだけど……何故か神里さんしか話かけられなかった……」
「そんなの当たり前よ。魔女のコスプレをした紫乃が隣にいたらカップルにしか見えないもの」
「……なるほど」
母さんの指摘に納得する紫乃。
詳しく聞くと、当初はチヤホヤされた俺がカッコいいことに気づき、自己評価の改善へと繋げる予定だったらしいが、コスプレした俺たちに話かけてきたのは神里さんだけだったので、内心焦っていたようだ。
「まぁ、無事俺が間違ってることに気づいたから結果オーライだ」
「だね」
そんな会話を3人でしていると「ピンポーン」っと玄関のチャイムが鳴る。
「俺が出てくるよ」
そう言って玄関に向かい扉を開ける。
すると、そこには神里さんがいた。
「遅くにすみません。私、芸能プロダクション『ヒマワリ』で働いております神里アカネと申します。本日は赤星黒羽さんに用事があって参りました。黒羽さんはいらっしゃいますか?」
目の前にいるにも関わらず俺の所在を確認する神里さん。
今は髪を下ろしているため、俺のことを兄弟の誰かと思ったのだろう。
「俺が黒羽ですよ」
そう言って髪をかきあげる。
「ふぁっ!く、黒羽さんだったんですね!」
どうやら俺と理解できたようで、顔を真っ赤にした神里さんが慌てて返答する。
「それでどのような要件で来られたんですか?」
「ちょ、ちょっと待ってください!黒羽さんの顔が急に目の前に現れて……!」
と言って「すーはーっ!」と何度も息を整える神里さん。
「お兄ちゃん。もしかして神里さんを口説いたの?」
「そんなことしてねぇよ!」
「うそうそ、冗談だよ」
おそらく一部始終を見てたのだろう紫乃がクスクスと笑いながら口を開く。
「とりあえず神里さんを家に招待するよ」
「わ、わかった」
紫乃の提案に乗った俺は神里さんを家の中に招き入れた。
「すみません、取り乱してしまいました」
“ペコリっ!”と頭を下げた神里さん。
「俺の方こそすみません。驚かせてしまいました」
お互い頭を下げて謝り、先ほどの件は水に流す。
そして「こほんっ!」と咳払いを挟んだ神里さんが訪ねてきた要件を話す。
「まずは先月、『読者モデル』Styleの代役を引き受けていただきありがとうございます。黒羽さんのおかげで、凄い売り上げを叩き出しました!」
パチパチと手を叩く神里さん。
「はぁ、おめでとうございます」
俺も神里さんのテンションに合わせて“パチパチ”と手を叩く。
「あれ?反応が薄いですね」
「そうですね。俺のおかげと言われましても俺なんて表紙に載ってるだけですから」
「いや、売り上げの9割くらいが黒羽さんのおかげなんですが……」
何故か呆れながら呟かれる。
「神里さん。お兄ちゃんって自分がカッコ良いことに今日気づいたんです。いずれ慣れると思いますので今日はスルーでお願いします」
「わ、分かりました」
その通りなので俺もとやかく言わない。
「では本題へ入ります。黒羽さん。我が社で芸能界デビューしてみませんか?」
「………芸能界デビューですか?」
「はい。我が社と契約し、芸能界へ足を踏み入れてみませんか?」
どうやら本気で俺をスカウトしているようだ。
「黒羽さんがどの事務所にも所属していないことは把握しております。なので私たちの事務所に所属し、デビューしてほしいです。黒羽さんなら絶対活躍できます。是非、お願いします!」
神里さんが再び頭を下げる。
俺がイケメンであることはSNSの反応で理解できたため、ある程度は活躍できると思う。
でも芸能界は厳しい世界なので俺なんかがデビューしてもすぐ埋もれてしまう。
そのため「申し訳ありませんが……」と断ろうとした時…
「お兄ちゃん!絶対デビューすべきだよ!」
と、隣に座って聞いていた紫乃が声を上げる。
「絶対お兄ちゃんなら有名になれるよ!将来、お父さんみたいに活躍できるって!」
「いや父さんみたいに活躍は無理だろ」
俺の父さんである赤星白哉は、昔歌手として活躍しており、ドラマやバラエティ番組にも引っ張りだこだった。
それこそ年末にある歌番組には10年連続で出場し、俳優業では優秀主演男優賞も受賞した。
日本国民なら誰もが知ってる有名人だ。
「お母さんもそう思うよね!?」
「そうね。黒羽ならお父さんみたいに活躍できるわ」
遠くから俺たちの話を聞いていた母さんも同意する。
「いやいや!芸能界だよ!?絶対無理だって!」
「そんなことないわ。だってお父さんと私の子よ。活躍するに決まってるわ」
まるで決定事項のように言い切る母さん。
「うんうん!だから大丈夫だよ!それに私はお兄ちゃんのこと、ずーっと応援するから!」
「私も応援するわ。だから活躍できる自信がなくて断ろうとしてるのなら神里さんの提案に乗ってデビューすべきよ」
紫乃と母さんから背中を押される。
その時、ふと忘れていた昔の夢を思い出す。
「……俺も昔は父さんみたいにテレビに出て活躍したいって思ってたんだ」
昔は父さんに憧れ、何度も撮影現場や収録現場に足を運んでいた。
そのタイミングで父さんが何度も口にしていた言葉を思い出す。
『黒羽なら俺を超える芸能人になれる。将来、2人で一緒にテレビに出ような』
『うんっ!約束だよ!』
そう父さんと約束したんだ。
(もう父さんはこの世に居ないけど、これは父さんと語った夢を叶えるチャンス。それに…)
「紫乃と母さんが応援してくれるんだ。断る理由はないな」
俺は神里さんの方を向く。
「俺の夢は芸能界で活躍することでした。父さんのような有名人になれるか分かりませんが、精一杯頑張ってみます。俺をデビューさせてください!」
「引き受けていただき、ありがとうございます!私たちと頑張りましょう!」
こうして俺は芸能界に飛び込んだ。
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