髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部

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2章 芸能界デビュー編

『モリトークの撮影』という名の修羅場 2

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 懐かしい記憶を思い出していると「おはようございます」という声が聞こえてきた。

「お、愛華さんも来たようだね」

 モリタさんの発言を聞き、俺も声のした方を向く。
 そこには大人気女優の南條愛華さんがいた。

 艶のある黒髪を腰まで伸ばした美少女で、落ち着いた雰囲気と萌絵以上に大きな胸が特徴的。
 南條さんも俺と同い年で、小学5年生の時に一度だけ交流がある。

(俺は南條さんのことを覚えているが、南條さんは俺のことを覚えてるかな?)

 そんなことを思いつつ、コチラに駆け寄ってきた南條さんを見る。

「江本さん、モリタさん。今日はよろしくお願いします」

 丁寧な口調と所作で挨拶をする南條さん。
 そして隣にいる萌絵の方を向く。

「萌絵さんもお久しぶりです」
「うんっ。久しぶり!」

 どこで交流があったかは知らないが、お互い芸能生活が長く同年代ということで交流があったようだ。

「コチラの女性は……?」
「あ、私はお兄ちゃんの妹の紫乃って言います」

 そう言って紫乃が簡単な自己紹介をする。

「クロさんの妹さんですね。よろしくお願いします」
「うんっ!よろしくね、愛華ちゃん!」

 紫乃に対しても丁寧な口調と所作で挨拶をする南條さん。
 お兄ちゃんの妹と言われたところで分からない可能性もあると思ったが、南條さんは俺の妹だということを理解できたようだ。
 そして最後に俺の方を向く。

「クロさん。お久しぶりです」
「あぁ。久しぶり。俺のこと覚えてたんだ」
「当然です。私はクロさんのことを片時も忘れたことありませんから」
「そ、それはさすがに言い過ぎだろ」
「いえ、本当のことです。ずっと再会できる日を楽しみにしてました」

 そう言って柔らかい笑みを見せる。

「っ!」

 萌絵とは違った魅力を持つ南條さんの笑みに俺の心臓が“ドキッ”と跳ねる。

「むぅ」

 そんな俺たちを見て萌絵が頬を膨らませながら聞いてくる。

「クロくん、愛華ちゃんと知り合いなんだ」
「あ、あぁ。小学5年生の頃、父さんと南條さんが共演した時、一度だけ会ったことがあるんだ」
「うぅ……愛華ちゃんとは出会ってないと思ったのに。しかもさっきの発言からして絶対クロくんのこと……うぅ、強敵すぎだよ……」

 何故か萌絵が目に見えて落ち込む。

「ま、まぁ、出会ったことがあると言っても一回だけだ。萌絵の方が圧倒的に多く交流してるぞ」
「そっ、そうなんだ!」

 俺の返答が良かったのか、落ち込んでた萌絵が一気に元気になる。

「萌絵さんとクロさんは昔出会ってたんですね」

 すると今度は南條さんから同じような質問をされる。
 心なしか残念そうな声色と表情で。

「そうだな。小学生の頃に通ってたボイトレ教室が同じだったんだ。あの頃は萌絵の頑張りが俺の力になってたな」
「えへへ~」

 そう言うと萌絵が嬉しそうな顔をする。

「……これは絶対、萌絵さんもクロさんのことを……うぅ、最悪な展開です……」

 今度は南條さんがブツブツと何かを呟きながら落ち込む。

「ははっ。色男は大変だな」
「さすがお兄ちゃんだね!」
「とても楽しい収録になりそうだよ」

 そんな俺たちを見て江本さんたちが笑っていた。



 その後、この番組でディレクターを務める方が席を外している為、俺たちは収録開始まで少し談笑することとなった。

「俺の休憩室でいいのか?」
「うんっ!スタッフたちの邪魔をするわけにはいかないからね!」
「そうですね。それに何処か座れる場所で話したいので」
「私は飲み物を買ってから行くよ!」

 とのことで俺に用意された休憩室へ、飲み物を買いに行った紫乃を除いた3人で向かう。
 俺を中心に萌絵が左側を、南條さんが右側を歩いているため両手に花の状態だ。
 普通なら喜ぶ状態だが、すれ違うスタッフたちからの視線が痛い。
 なぜなら2人が俺の腕に触れそうなくらい近くにいるからだ。

「……なぁ」
「なーにー?」
「どうしましたか?」
「……近くないか?」
「うーん、そんな事ないと思うよ?」
「そうですね。誰かと歩く時はいつもこれくらいの距離感だと思います」
「………さいですか」

 2人は全く気にならないようで、俺の隣をスタスタ歩く。

(胸が当たりそうなんだけど……2人とも気づいてなさそう……)

 2人の巨乳が俺の腕に当たりそうなくらい近いので、俺は腕が胸に当たらないよう慎重に歩く。
 そんな俺たちを見たスタッフ2人の会話が耳に入る。

「萌絵ちゃんと愛華ちゃん、距離が近くね?」
「やっぱりイケメンだからだよ」
「でも以前、萌絵ちゃんがイケメン歌手と歩いてた時はここまで近くなかったぞ?」
「それを言うなら萌絵ちゃんが男と歩いてるなんて滅多にないぞ?男からの誘いを全て断ってるらしいからな」

 そんな会話をすれ違いざまに聞く。

(……俺に対して心を開いてるということにしよう。正直、今すぐ離れてほしいが)

 そんなことを思いつつ2人と共に休憩室を目指した。
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