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4話 ライオネル様は素晴らしすぎるのですわ②
しおりを挟むそしてランチの時間になり、わたくしは待ち合わせ場所の裏庭へ向かう。
ライオネル様はいつも先に来て待っていてくれる。こんなところもわたくしの心を掴んで離さないポイントだ。
「ライオネル様! お待たせいたしました。さあ、お昼をいただきましょう」
「ああ」
「そうですわ、今日はランチボックスにライオネル様のお好きなサーモンサンドを作ってきましたの! よろしければ召し上がりますか?」
今日は食堂ではなくこちらがいいと前日に聞いていたので、ライオネル様のお好きなサーモンサンドを用意してきたのだ。これも完璧な淑女教育の賜物で、クッキーなどの簡単なお菓子やサンドウィッチ、パンケーキなどの簡単なものなら調理できた。
三カ月前にライオネル様とピクニックに行った時に作ってあげたら、とてもお気に召したのかすべて平らげてくれた。あれはとても嬉しかったと思い出す。
「交換だ」
そう言って、わたくしとライオネル様のランチボックスを入れ替える。
ライオネル様はいつもより険しい顔で、黙々と召し上がった。
あら? サーモンサンドはお好きでなかったのかしら? 前回よりも渋いお顔になっていらっしゃるわ。
交換まで申し出てくださったのに……ああ、そうか。これも婚約者としての勤めで演出してくださっているのね。
次があったら違うものにしましょう。
失敗は次回の糧にして、わたくしもライオネル様のランチボックスをいただく。
蓋を開けてみると、なんということかわたくしの大好物ばかりが入っていた。きっとこの演出のために料理人に用意させてくれたのだろう。
こう見えてわたくしはお肉が大好きなので、ポークやチキン、ビーフのボリュームたっぷりなバケットサンドを頬張った。
わたくしもまだまだですわ。ライオネル様のお心遣いに負けないように、精進しないと!
こうして楽しいランチタイムが終わり、それぞれのクラスに戻る時間になってしまった。
「ライオネル様、今日のランチはとても素敵でしたわ! わたくしこういう恋愛小説に出てくるようなシチュエーションに憧れてましたの! 本当にありがとうございます!」
「っ!」
満面の笑みを浮かべてライオネル様にお礼を伝えると、一瞬ビクリと震えてサッと美しお顔を逸らされてしまう。
しまった、またやってしまったわ。ライオネル様はわたくしの笑顔は嫌いでしたのに、思わず気持ちがあふれて表情に出してしまったわ。
ライオネル様はわたくしが全力で笑顔を浮かべると、いつも顔を背けてしまう。きっと嫌いな女が笑ったところで、気分が悪くなるだけなのだろう。
ほんの少し微笑みを深めるくらいなら、平気らしいのでいつも本気で笑うのは控えていた。
「では」
「はい、それではまた帰りの馬車でお会いしましょう」
そうしてそれぞれの教室へと戻っていった。
教室へ戻ると、わたくしが座るはずの机と椅子が水浸しになっていた。
もしかしたら裏庭でのランチボックス交換を見られていて、わたくしがライオネル様のランチボックスを完食してしまったから、勘違いするなと忠告したかったのかもしれない。
「まあ、ちょうどよかったわ。机が汚れてきたから綺麗にしたかったの! どなたかしら? お礼を言いたいわ」
またしてもバチっとドリカさんと視線が合った。今度は真っ赤なお顔でプイッと横を向いてしまった。
あら、残念。またお話ができなかったわ。
仕方がないので風魔法で机を綺麗にして、午後からは快適に授業を受けた。
なかなか上手くいかないものである。
そうして帰りの馬車の中では、机を綺麗にしてくれた友人のお話をしたり、風魔法が上達したことをお話しして伯爵邸に戻ったのだった。
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