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南村の告白(その1)
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「ええと、つまりあなたは……」
南村は現実感を得ようとしてか、希美に確認を求めた。
「僕を条件で選んだわけですね?」
「そうよ」
「なるほど、納得しました」
だから、なんの取りえもない僕を。と、胸で呟くのが聞こえる。
希美は彼の複雑な表情を見やり、これでいいのだと思う。割り切った考え方は冷たいようだが、ここできっちり伝えるのが誠実というもの。
うまいこと言って二股かけるような、いいかげんな男どもとは違うのだ。
南村は小さく息をつくと、水の入ったグラスを取り上げひと口飲んだ。そして気を落ち着けたところで、あらためて質問を向けてくる。
「それでは、僕自身のことはよくご存じないのですね?」
口調は大真面目で、目つきも真剣である。どうやら南村もいいかげんなやり取りは嫌いな性質なのだなと、希美は推測した。
「ええ。でも、これから付き合っていけば自然に分かることよ。私の性格も、徐々に知ってもらえたらいいし、問題ないでしょ」
「あ、いえ。そうじゃなくて」
南村は首を振った。
「性格とか、人となりではなく、たとえば学生時代どんな生活をしていたとか」
「学生時代……?」
希美は首を傾げる。そんなことは調べていない。友人関係、恋人の有無などの調査も現在に限ったことで、過去のデータなど関心がなかった。
「最終学歴は確か、F大の経済学部よね」
「ええ」
「なにか、特殊な活動でもしていたの?」
ほとんど興味なく訊いてみた。もし問題のある学生ならば、入社試験や面接で弾かれているはず。ノルテフーズはその辺り、人選が厳しかった。
「いえ、普通の学生でした。ただ、貧乏だっただけで」
恥ずかしそうに頭を掻く仕草を見て、希美はなるほどと頷く。彼が気にするのは性格ではなく、経済格差だ。
確かに、彼が貧乏学生だったとは知らなかった。希美は一応、訊いてみることにする。
「それは、ご実家の事情で?」
「はい。実家は小さな食堂を営んでいたのですが、僕が大学に入って間もなく潰れてしまい、借金を抱えたんです。ですから、仕送りもあてにできなくて、アルバイトに明け暮れてました」
「そうだったの」
アルバイトに明け暮れる学生生活がどんなものか――
金銭面で苦労した経験のない希美にはぴんとこない。また、一見呑気そうな南村にそんな苦労があったとは思いも寄らなかった。
「大変だったのね。アルバイトはたくさん掛け持ちしてたの?」
「いろんなバイトをしました。主に肉体労働ですが」
「えっ?」
『にくたい』という言葉に、希美のアンテナが敏感に反応した。テーブルに身を乗り出し、興味津々の目を輝かせる。
南村は現実感を得ようとしてか、希美に確認を求めた。
「僕を条件で選んだわけですね?」
「そうよ」
「なるほど、納得しました」
だから、なんの取りえもない僕を。と、胸で呟くのが聞こえる。
希美は彼の複雑な表情を見やり、これでいいのだと思う。割り切った考え方は冷たいようだが、ここできっちり伝えるのが誠実というもの。
うまいこと言って二股かけるような、いいかげんな男どもとは違うのだ。
南村は小さく息をつくと、水の入ったグラスを取り上げひと口飲んだ。そして気を落ち着けたところで、あらためて質問を向けてくる。
「それでは、僕自身のことはよくご存じないのですね?」
口調は大真面目で、目つきも真剣である。どうやら南村もいいかげんなやり取りは嫌いな性質なのだなと、希美は推測した。
「ええ。でも、これから付き合っていけば自然に分かることよ。私の性格も、徐々に知ってもらえたらいいし、問題ないでしょ」
「あ、いえ。そうじゃなくて」
南村は首を振った。
「性格とか、人となりではなく、たとえば学生時代どんな生活をしていたとか」
「学生時代……?」
希美は首を傾げる。そんなことは調べていない。友人関係、恋人の有無などの調査も現在に限ったことで、過去のデータなど関心がなかった。
「最終学歴は確か、F大の経済学部よね」
「ええ」
「なにか、特殊な活動でもしていたの?」
ほとんど興味なく訊いてみた。もし問題のある学生ならば、入社試験や面接で弾かれているはず。ノルテフーズはその辺り、人選が厳しかった。
「いえ、普通の学生でした。ただ、貧乏だっただけで」
恥ずかしそうに頭を掻く仕草を見て、希美はなるほどと頷く。彼が気にするのは性格ではなく、経済格差だ。
確かに、彼が貧乏学生だったとは知らなかった。希美は一応、訊いてみることにする。
「それは、ご実家の事情で?」
「はい。実家は小さな食堂を営んでいたのですが、僕が大学に入って間もなく潰れてしまい、借金を抱えたんです。ですから、仕送りもあてにできなくて、アルバイトに明け暮れてました」
「そうだったの」
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