19 / 179
南村の告白(その2)
2
しおりを挟む
「さあ、返事を聞かせてちょうだい。私と結婚してくれるわね?」
「はあ……」
「私のこと、嫌いではないでしょ?」
「それは、もちろん!」
「私だって、あなたを嫌いじゃないし」
「そっ、そうなんですか?」
南村は目を輝かせた。希美のような美女に言い寄られて悪い気はしないだろうし、好意を少しでも見せられたら舞い上がる。
地味男のサガを突き、一気に口説くのだ。
「好ましく思ってるわ。食事する間にも、あなたのいいところをたくさん見つけてる」
「あ……ありがとうございます。嬉しいです……」
自信がないのは欠点だが、美点は欠点の裏返しでもある。こんなふうに、自己評価の低さを謙虚と受け取れば『いいところ』といえなくもない。
ある意味、南村壮二という男は育てがいのある婿となるだろう。
「なにも心配しないで、私の夫になりなさい。一生大事にするし、不自由もさせないわよ?」
腕を伸ばし、テーブルの上で組まれた彼の手を柔らかく包んだ。関節の太い、男くささを感じさせる理想的な手であることに気付く。
こんな手で愛撫されたら――と、あらぬ妄想が湧き上がり、希美をますます興奮させた。
「あ、ありがとうございます。ここに来るまで、どうしても信じられなかったけれど、北城さんが本気だというのは、よく分かりました」
「そう、よかったわ。で、返事は?」
鼻息が荒くなってしまう。あと少しで理想の夫が手に入るのだ。
(ていうか、この男を抱ける。さっさと陥落しなさい!)
握った手に力を込めると南村はビクッとして、弱々しく言葉を発した。
「でも、僕はその……もう一つ気になることがあって」
「なに? このさいだからなんでも言っちゃって」
「……はあ」
俯いてもじもじする彼の仕草が女のようで、希美は変な具合になる。
うぶなOLを口説くスケベ上司といった構図だが、実際そうなのだから仕方ない。このまま一気に口説き落とし、ベッドに押し倒そうとしている。
南村の手指は小刻みに震えている。そっと上げた顔は真っ赤で、頬も耳も、首筋までもが鮮やかに染まっていた。
「どうしたの? 早く言って」
焦れた希美がせっつくと、思い切ったように口を開いた。
「僕は、女性経験がありません。それでも大丈夫ですか? 夫婦になるということは、その辺りかなり重要だと思うんですが」
「……は?」
どういう意味なのか、考えを巡らせる。
女性経験がない――というのは、要するに?
「あなたは、僕では満足できないかもしれない」
「……」
「だから、いいのかなと」
「……」
「……あの」
意味が分からないという顔の希美に、南村はもう一度告白した。
「女の人を抱いたことがありません。童貞なんです」
「はあ……」
「私のこと、嫌いではないでしょ?」
「それは、もちろん!」
「私だって、あなたを嫌いじゃないし」
「そっ、そうなんですか?」
南村は目を輝かせた。希美のような美女に言い寄られて悪い気はしないだろうし、好意を少しでも見せられたら舞い上がる。
地味男のサガを突き、一気に口説くのだ。
「好ましく思ってるわ。食事する間にも、あなたのいいところをたくさん見つけてる」
「あ……ありがとうございます。嬉しいです……」
自信がないのは欠点だが、美点は欠点の裏返しでもある。こんなふうに、自己評価の低さを謙虚と受け取れば『いいところ』といえなくもない。
ある意味、南村壮二という男は育てがいのある婿となるだろう。
「なにも心配しないで、私の夫になりなさい。一生大事にするし、不自由もさせないわよ?」
腕を伸ばし、テーブルの上で組まれた彼の手を柔らかく包んだ。関節の太い、男くささを感じさせる理想的な手であることに気付く。
こんな手で愛撫されたら――と、あらぬ妄想が湧き上がり、希美をますます興奮させた。
「あ、ありがとうございます。ここに来るまで、どうしても信じられなかったけれど、北城さんが本気だというのは、よく分かりました」
「そう、よかったわ。で、返事は?」
鼻息が荒くなってしまう。あと少しで理想の夫が手に入るのだ。
(ていうか、この男を抱ける。さっさと陥落しなさい!)
握った手に力を込めると南村はビクッとして、弱々しく言葉を発した。
「でも、僕はその……もう一つ気になることがあって」
「なに? このさいだからなんでも言っちゃって」
「……はあ」
俯いてもじもじする彼の仕草が女のようで、希美は変な具合になる。
うぶなOLを口説くスケベ上司といった構図だが、実際そうなのだから仕方ない。このまま一気に口説き落とし、ベッドに押し倒そうとしている。
南村の手指は小刻みに震えている。そっと上げた顔は真っ赤で、頬も耳も、首筋までもが鮮やかに染まっていた。
「どうしたの? 早く言って」
焦れた希美がせっつくと、思い切ったように口を開いた。
「僕は、女性経験がありません。それでも大丈夫ですか? 夫婦になるということは、その辺りかなり重要だと思うんですが」
「……は?」
どういう意味なのか、考えを巡らせる。
女性経験がない――というのは、要するに?
「あなたは、僕では満足できないかもしれない」
「……」
「だから、いいのかなと」
「……」
「……あの」
意味が分からないという顔の希美に、南村はもう一度告白した。
「女の人を抱いたことがありません。童貞なんです」
0
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる