25 / 179
リードするのは私
3
しおりを挟む
――僕は、あなたのことがずっと好きでした。結婚してください!
(好きだった……私を、ずっと?)
彼は希美の見込んだとおり、地味で平凡、決して目立たぬ年下男。才色兼備の希美に憧れの気持ちを抱いたとて不思議ではない。
好きと言われても、ああそうなの? で、済む話だ。
しかし、妙な現象が起きている。
上手いこと彼に結婚を決意させて、ベッドまで連れてきて、あとはやるだけの順調な運びであるのに……
(なんで私、緊張してんの!?)
初めは、壮二を裸にできる高揚感によるものと思った。それから、童貞クンをモノにするという、かつて経験のない行為に対する意気込み。
だけど、それならばもっと希美の身体は燃えて、熱くなっているはずだ。ところが、白い指先が青ざめるほど冷たくなっている。
これは、心身ともにかなり緊張している証。
緊張状態を引き起こした原因は、壮二のプロポーズにほかならない。
「違うわよ! 指の色なんて、部屋のライトが青いせいなんだから」
「指がどうかしましたか?」
いつの間にかシャワーを済ませた壮二が、真後ろに立っていた。
希美は声にならない叫びを上げ、くるりと身体を返す。
「あ、あら……いいお湯だったかしら?」
そんなことを口にしつつ、温泉じゃあるまいしと自分にツッコミを入れる。認めたくないが、やはり緊張しているようだ。
「はは……そうですね。ポートビューって言うのかな? 夜景を楽しみながらシャワーするのって気持ちいいですね」
朗らかに笑うこの男からは、緊張のかけらも感じられない。
希美はなんだか腹が立ってきた。
(夜景を楽しむ? 気持ちいい? ずいぶん余裕じゃないの)
童貞だと告白した時の、首筋まで真っ赤に染めていた男はどこに行ったのか。ここまできて開き直ったのか、それとも持ち前の鈍感がリラックスさせているのか。
希美は息を吸い込むと、自分を落ち着かせる。そして、あらためて壮二を見回した。淡い光に立つシルエットは大きい。いつもより逞しく感じるのは、紺のスーツではなく白いバスローブを纏っているからか、それとも――
「脱いで」
希美は唇を開き、唐突に命令した。
壮二は何を言われたのかピンとこないようで、ぼけっと突っ立っている。
「聞こえなかった? バスローブを脱ぎなさい、壮二」
「あ、もう……ですか?」
そこで初めて動揺らしきものが見えたが、それもすぐに収まる。覚悟を決めたように真剣な顔つきになると、彼は帯の結び目に指をかけた。
(好きだった……私を、ずっと?)
彼は希美の見込んだとおり、地味で平凡、決して目立たぬ年下男。才色兼備の希美に憧れの気持ちを抱いたとて不思議ではない。
好きと言われても、ああそうなの? で、済む話だ。
しかし、妙な現象が起きている。
上手いこと彼に結婚を決意させて、ベッドまで連れてきて、あとはやるだけの順調な運びであるのに……
(なんで私、緊張してんの!?)
初めは、壮二を裸にできる高揚感によるものと思った。それから、童貞クンをモノにするという、かつて経験のない行為に対する意気込み。
だけど、それならばもっと希美の身体は燃えて、熱くなっているはずだ。ところが、白い指先が青ざめるほど冷たくなっている。
これは、心身ともにかなり緊張している証。
緊張状態を引き起こした原因は、壮二のプロポーズにほかならない。
「違うわよ! 指の色なんて、部屋のライトが青いせいなんだから」
「指がどうかしましたか?」
いつの間にかシャワーを済ませた壮二が、真後ろに立っていた。
希美は声にならない叫びを上げ、くるりと身体を返す。
「あ、あら……いいお湯だったかしら?」
そんなことを口にしつつ、温泉じゃあるまいしと自分にツッコミを入れる。認めたくないが、やはり緊張しているようだ。
「はは……そうですね。ポートビューって言うのかな? 夜景を楽しみながらシャワーするのって気持ちいいですね」
朗らかに笑うこの男からは、緊張のかけらも感じられない。
希美はなんだか腹が立ってきた。
(夜景を楽しむ? 気持ちいい? ずいぶん余裕じゃないの)
童貞だと告白した時の、首筋まで真っ赤に染めていた男はどこに行ったのか。ここまできて開き直ったのか、それとも持ち前の鈍感がリラックスさせているのか。
希美は息を吸い込むと、自分を落ち着かせる。そして、あらためて壮二を見回した。淡い光に立つシルエットは大きい。いつもより逞しく感じるのは、紺のスーツではなく白いバスローブを纏っているからか、それとも――
「脱いで」
希美は唇を開き、唐突に命令した。
壮二は何を言われたのかピンとこないようで、ぼけっと突っ立っている。
「聞こえなかった? バスローブを脱ぎなさい、壮二」
「あ、もう……ですか?」
そこで初めて動揺らしきものが見えたが、それもすぐに収まる。覚悟を決めたように真剣な顔つきになると、彼は帯の結び目に指をかけた。
0
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる