夫のつとめ

藤谷 郁

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イケメンハイスペック親子

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(オマケ程度の昼食会って言ったのは誰よ。ったく、いいかげんなんだから)
 
 どうやら利希はプランを変更したらしい。
 社長として、父として、このまま負けるわけにはいかない。壮二を食事会に参加させて、一つでも失敗すれば、それを理由に追い返すつもりだ。
 しかし希美にも考えがあった。
 この状況は一見ピンチだが、実はチャンスでもある。昼食会を無事に乗り切れば父の負け。それを契機に、強引に結婚話を進めてしまえばいい。

「あの、ところで希美さん」
「何?」

 壮二がこっそり訊ねてきた。

「結局、社長に腹巻きを渡せなかったですね。お腹を壊してるのに、このまま食事をしても大丈夫でしょうか」
「あ、ああ。それは……」

 そんなこと、すっかり忘れていた。希美は笑顔を作りつつ、ひらひらと手を振る。

「社長の顔色もいいし、もう治ったんじゃないかな。うん、大丈夫よ」
「はあ。それならいいんですが」

 自分を陥れようとする人間を、本気で心配している。
 どこまでお人好しなのと説教したいが、今はそんな場合ではない。


 腹巻きから話題を逸らすため、海山商事との資本提携について説明することにした。今はこちらが重要事項である。

「……つまり、ノルテフーズと海山商事は資本交換することで、業務上の不足部分を補い合えるわけ」
「互いの得意分野を提供するんですね?」
「そう。海山商事は冷蔵事業を、ノルテは地方への販売事業を強化できる。交換比率はもちろん1対1よ。海山商事は大きな会社だけど、対等な関係を維持するのが絶対条件なの。そうでなければ、取締役会を通らない」

 今回の会合はノルテフーズが提案し、向こうの会社をもてなす形を取った。だが取引きはフィフティフィフティに行う。
 そのためには、トップ同士が親しくなるのが一番というのが利希の考え方だ。

「大事な食事会なんですねえ」

 壮二が言うと、利希がすかさず口を挿んだ。

「そうだぞ、南村。お前がヘマをして向こうを怒らせたら、この話はいっぺんにパアだからな。肝に銘じておけよ」
「はいっ、社長」

 利希のわざとらしい脅しに、希美は肩を竦める。
 ゴルフ接待で、既に先方とは打ち解けているのだろう。だからこそ公私混同ができるのだ。

「安心して、壮二。ちょっとくらいヘマしたって、私がカバーしてあげるから」
「ありがとうございます」

 壮二が素直にホッとした。こういったところが彼の長所である。

「ほら、お喋りはやめろ。おいでなすったぞ」

 廊下から足音が聞こえてきた。希美が腕時計を確かめると、約束の時間を5分過ぎている。

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