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母の元カレ?
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友光の質問はまだ続いた。ヒット商品の売上について具体的な数字を知りたいとのことで、希美はタブレットを使って説明した。
「椀麺シリーズは冷凍食品の中では安定した売れ行きを維持しています。こちらがグラフです」
昭和から令和にかけて、グラフはおおむねなだらかな線を描いている。
「おや? 平成13年から14年の、ここだけ売上げが上下しているね。これはどういうことですかな」
友光が指摘すると、利希が横から答えた。
「ああ、その頃はマンネリを打破しようと、新しい味を開発して売り出したんです。世界の味と銘打って、まずはエスニックスープを取り入れたのですが、発売して間もなく飽きられましてね。それ以来、珍味は開発費がかさむばかりで利益にならんと判断し、椀麺シリーズはスタンダードな味に落ち着きました」
「なるほど。何事もタイミングですな」
利希の説明を聞きながら、希美は思い出した。
それは、小学生の頃大好きだったタイ風ラーメンである。いながらにして世界の味を楽しめる商品を作りたい。あのラーメンを食べて、子ども心に理想を描いたことも。
「それに、エスニック味は癖が強くて、日本人にはどうも合わなかったようです」
利希が言い訳じみたことを口にすると、友光は首を横に振った。
「しかし北城さん。食品会社大手のグラットンが、エスニック調味料を大きく売り出していますよ。日本人の味覚に合うよう工夫すれば、何とかなるんじゃないかね」
「ああ、ヒット商品をいくつも抱える会社ですな。何とかエスニックシリーズ……だったかな」
自信なさげな利希を、希美がフォローする。
「『たちまちエスニックシリーズ』です。ちなみに、同社新発売の調味料『南国ナンプラー』は品切れ店続出の人気だそうで……」
急いで業界のデータベースを調べた。
「年間売上120億を見込んでいます」
「それは大したものだ」
社長二人は驚きの声を上げた。
「そうだ北城さん。おたくも食品会社の大手ですし、グラットンの社長とは面識があるのでは?」
「いや、会合で行き合うことはあったでしょうが、特には……ん?」
利希が急に目を輝かせて壮二に見向いた。
「グラットンの社長は確か、南村……そうだ、『南村壮太』という名前だったぞ」
希美はハッとする。隣を見ると、壮二が気まずそうにうつむいている。グラットンの話題が出た時点で気づくべきだった。
「大企業のトップと一字違いじゃないか。どうりでお前の名前、聞いたことがあると思ったんだ。壮太と壮二。へええ~」
ここぞとばかりに利希が食い付いた。いじめっ子のような態度に、希美は秘書としても娘としても情けなくなる。
(意地悪な先輩と同じレベルとは……はああ……)
一字違いで随分な差だなと、利希は言いたいのだ。希美は何とかして話題を変えようとして身を乗り出す。
しかしその瞬間、壮二は顔を上げ、ぐいと胸を張った。
「はい、グラットンの社長と私は名前が似ています。とても縁起が良いし、光栄なことですね」
堂々とした態度と迷いのない口調。
思わぬ言葉が返ってきて、利希がぽかんとしている。希美もぼうっとしたが、友光の笑い声で我に返った。
「はっははは……社長を前にして堂々たるもの。見かけによらず豪胆な男ですな」
楽しげな様子で手を叩く。
利希はばつが悪そうにするが、
「縁起が良くて光栄ときたか。ふん……生意気なやつめ」
それ以上からかうことはなかった。男は生意気なくらいがいいと、ふだんからよく言っている。
「椀麺シリーズは冷凍食品の中では安定した売れ行きを維持しています。こちらがグラフです」
昭和から令和にかけて、グラフはおおむねなだらかな線を描いている。
「おや? 平成13年から14年の、ここだけ売上げが上下しているね。これはどういうことですかな」
友光が指摘すると、利希が横から答えた。
「ああ、その頃はマンネリを打破しようと、新しい味を開発して売り出したんです。世界の味と銘打って、まずはエスニックスープを取り入れたのですが、発売して間もなく飽きられましてね。それ以来、珍味は開発費がかさむばかりで利益にならんと判断し、椀麺シリーズはスタンダードな味に落ち着きました」
「なるほど。何事もタイミングですな」
利希の説明を聞きながら、希美は思い出した。
それは、小学生の頃大好きだったタイ風ラーメンである。いながらにして世界の味を楽しめる商品を作りたい。あのラーメンを食べて、子ども心に理想を描いたことも。
「それに、エスニック味は癖が強くて、日本人にはどうも合わなかったようです」
利希が言い訳じみたことを口にすると、友光は首を横に振った。
「しかし北城さん。食品会社大手のグラットンが、エスニック調味料を大きく売り出していますよ。日本人の味覚に合うよう工夫すれば、何とかなるんじゃないかね」
「ああ、ヒット商品をいくつも抱える会社ですな。何とかエスニックシリーズ……だったかな」
自信なさげな利希を、希美がフォローする。
「『たちまちエスニックシリーズ』です。ちなみに、同社新発売の調味料『南国ナンプラー』は品切れ店続出の人気だそうで……」
急いで業界のデータベースを調べた。
「年間売上120億を見込んでいます」
「それは大したものだ」
社長二人は驚きの声を上げた。
「そうだ北城さん。おたくも食品会社の大手ですし、グラットンの社長とは面識があるのでは?」
「いや、会合で行き合うことはあったでしょうが、特には……ん?」
利希が急に目を輝かせて壮二に見向いた。
「グラットンの社長は確か、南村……そうだ、『南村壮太』という名前だったぞ」
希美はハッとする。隣を見ると、壮二が気まずそうにうつむいている。グラットンの話題が出た時点で気づくべきだった。
「大企業のトップと一字違いじゃないか。どうりでお前の名前、聞いたことがあると思ったんだ。壮太と壮二。へええ~」
ここぞとばかりに利希が食い付いた。いじめっ子のような態度に、希美は秘書としても娘としても情けなくなる。
(意地悪な先輩と同じレベルとは……はああ……)
一字違いで随分な差だなと、利希は言いたいのだ。希美は何とかして話題を変えようとして身を乗り出す。
しかしその瞬間、壮二は顔を上げ、ぐいと胸を張った。
「はい、グラットンの社長と私は名前が似ています。とても縁起が良いし、光栄なことですね」
堂々とした態度と迷いのない口調。
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